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2008/03/20 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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20日は、春分の日。昼と夜の長さが同じになり、この日を境に昼の時間が長くなっていく。
この春分を目安に、草花は芽吹き、作物の植え付けが始まる。太古から、春分、秋分、夏至、冬至といった日は、農業の目安となり、 様々な方法で、その日を人々は知ろうとした。
そんな名残が、じつは、巨大なスケールで残っている。
千葉県外房の上総一ノ宮にある玉前神社では、真東を向いた参道から登った太陽の光が参道と一の鳥居二の鳥居を突き抜けて、 西へ向かっていく。その光は、東京湾を渡り、寒川神社へ達する、さらにその先、富士山頂、日蓮宗の聖山である七面山、 琵琶湖竹生島の弁財天社、大江元伊勢のご神体山である日室岳、中国地方の名山大山の大神神社、そして、出雲大社と本州を横断していく。
これは、「御来光の道」と呼ばれるもので、じつは同じような聖地を貫く光の道を各地に見ることができる。
今回は、その御来光の道の西側の部分を辿ってみた。
**御来光の道の西端に位置する出雲大社。南を向いた参道の真横から、 春分の太陽が昇ってくる**
2008/03/19 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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北海道というと、どうしてもその雄大な自然のスケールにばかり目が行ってしまいがちだが、 この土地ならではの自然の機微やら文化やらも、じつは数多い。
観光ガイドに記されていて、だれでも知っている北海道だけではなく、北海道の人が誇れる自然や文化を公募して、 1万を越える応募の中から選ばれたのが「北海道遺産」だ。52項目選定された北海道遺産の中には、開拓時代を彷彿とさせる建築物から、 祭りや食べ物、アイヌ語地名など、多彩な物件が盛り込まれている。
それらを巡るだけでも、今まで知らなかった北海道の姿が浮かび上がってきそうだが、さらに、この夏には、各自治体を中心に、 その地域が誇る自然を舞台にアクティビティはもちろん、農業体験などもできる『ほっかいどう ムラの宝探しプロジェクト』も計画されている。
個人的には、釧路湿原近くの町に滞在し、カヤッキングやMTBを楽しみ、地元の人が「世界一の光のイリュージョン」 と豪語する湿原のホタル乱舞をこの夏は体感してみようと思っている。
**北海道遺産の一つ『北海道大学 札幌農学校第二農場』。
開拓時代の北海道にそのままワープしてしまったような空間**
**洞爺湖サミットもある今年は、道内各所で、様々な催しが繰り広げられる**
2008/03/15 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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今回の北海道取材は、「ツーリングマップルマガジン」 の取材がメインだったが、いろいろと北海道のアウトドア情報も仕入れることができて、有意義だった。
今年は、7月に洞爺湖でサミットが開かれることもあって、 北海道の豊かな自然を世界中に紹介しようという運動が道内各地で行われている。と同時に、これを契機に、今までの観光のありかたから、 少しシフトして、北海道の自然を満喫して、そこからアースコンシャスなライフスタイルを学んでもらおうといった、 滞在型のエコツーリズムやグリーンツーリズムのツアーもたくさん企画されている。
そんなツアーも、これから実地に取材して紹介していこうと思っている。
**札幌郊外の羊ヶ丘では、定番のジンギスカンとアイスクリームに舌鼓**
**今回の取材のメインテーマは、温泉教授・松田忠徳さんと、
300日3000湯を昨年成し遂げた賀曽利隆さんとの対談。この模様は、5月1日発売の「ツーリングマップルマガジン」
で**
2008/03/14 カテゴリー: 06.ツーリズム, 11.人 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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二日目の午後は大雪原へ。
日本海に近く、豪雪地帯にも数えられる白馬は、広い公園や田畑がそのまま大雪原になる。一日で80cmも積もったおかげで、 フカフカのパウダースノーを蹴立てて、好きな方向へ進んでいける。
遠くに目標を設定して、目を瞑って真っ直ぐ行くと、自分では真っ直ぐ歩いているつもりが、ほぼ全員、 どちらかへ曲がって行ってしまう。
吹雪いてホワイトアウトした広い尾根では、リングワンデリングといって、先へ進んでいるつもりが、 気がつくと元の場所に戻ってきてしまっていることがある。
そんなことを安全にシミュレーションできるのが面白い。もっとも、最近はGPSを持っていくことが多いので、 完全にホワイトアウトしても、ナビゲーションに頼って進むことが出来るが……。
雪原の端にある吹き溜まりの斜面では、雪屁が張り出していて、これも安全に雪屁を踏み抜いたときの感覚を味わうことができる。 しまいには、ダイビング大会になってしまったが(笑)
**自由に雪原を進んでいく感覚は、 夏場に楽しんでいるシーカヤックの自由さにそっくりだ**
★OBTツリーイングプログラムがスタートしました★
体験会 、ワークショップ、資格認定講習、各種研修など対応いたします。
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2008/03/08 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (2) | トラックバック (0)
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スノーシューの楽しみは、スキーのような長板では不自由な樹林帯の中を自在に歩けること。 その樹林帯ならではのアニマルトラッキングやネイチャーディテクティヴも面白いのだが、ツリーイングを楽しむようになってからは、 雪化粧した木に登って、雪原を鳥の目線から見たくなった。
今回は、ツリーマスターアカデミー北関東支部の梅木氏に協力してもらって、 ツリーイングギアを人数分用意してスノーツリーイングを実践してみることにした。
ほんとうは、見晴らしのいい斜面を登って、雄大な景色を眺めたいところだったが、二日目の午前中も時々強い吹雪となり、 セッティングも大変なので、ペンション・ミーティアの裏山で手ごろな木を選んで登るとにした。
**一本の木の違う枝に登り、みんなで上へ。今度は、ツリーモックを張って、木の上でティータイムでも。
しかし、目線が少し上になるだけで、景色が広がり、気持ちがいい!!**
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2008/03/04 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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先週末、ちょうど、日本海で発生した低気圧が凄い勢いで発達しながら東へ進んできて、海、山は大荒れが予想された、 ちょうどそのとき、恒例のスノーシューツアーがかち合ってしまった。
東日本全域で強風が吹いて、大きな被害が出ている頃、ぼくたちは、白馬の里山で雪まみれになってはしゃいでいた。
土曜日の早朝に東京を出発して、白馬には10時近くに着いた。すでにだいぶ強く雪が降り始めていて、 北アルプスは雲にどっぷりと飲み込まれて見えない。
ぼくたちは、スキー場が乱立する北アルプスの斜面ではなく、姫川を挟んだ反対側の東山の里山に踏み込んでいった。
前日までは春のような陽気が続いていたとのことで、アプローチの道にはまだ雪はさほどなく、 街道筋の家々も屋根には雪がなかったのに、あっという間に吹き降りが激しくなって、銀世界に……。
**晴れていたら、北アルプスの眺めが素晴らしい『野平』の集落から、
東山にアプローチしていく**
**白馬の定宿『ミーティア』オーナーの福島さんが、仲間に加わり、ネイチャーガイドしてくださった。
右上は鬼グルミの落葉痕で、ヒツジもしくはカモシカの顔に見える。樹皮が胃の薬になるキハダ**
**今回、プライベートで参加しながら、写真を撮ってくれた盛長カメラマンも、
カメラを構えたまま真っ白に**
**新雪ごと急斜面をシリセードで下る。浮遊感がたまらない!!**
(撮影: 盛長幸夫)
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2008/03/01 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (2) | トラックバック (0)
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午前中、イベントワークのセッティングをなんとか制限時間内に終え、確保体制でも合格点をもらった我々。午後は、 具体的なレスキューの講習に入った。
十分に安全を確保して行っているツリーイングでは、過去にシリアスな事故は一件も起きていない。でも、 落ちたら危険な高所に達するわけだから、安心することはできない。
樹上で事故が起きたという事例はないが、イベント時に、気軽に登って、下を見たら怖くなって動けなくなってしまったといったことは、 けっこうあるという。SRTの講習では、樹高35mあまりのセコイアに登ったが、これは、たしかに怖かった。下を見ると、 足の震えがおさまらなかった記憶がある。ロープの途中ですくんでしまった人をレスキューするのも、 インストラクターの重要な仕事というわけだ。
DRTでは、ロッククライミングで確保に使うフルージックというロープワークを変形したブレイクスというノットを制動に使う。
ぶら下がった要救護者の側まで上り、体を確保した上で、自分のブレイクスと要救護者のブレイクスの両方を握って、下降する。 あるいは、相手のブレイクスの上にカラビナを掛けて、こちらのハーネスとスリングで結んで降ろす方法などを、 タイムを計りながら実践していく。
最後に、要救護者のハーネスをこちらのハーネスにドッキングさせた上で、向こうのロープを切断して、 要救護者を回収する方法を試した。
これは、ぼくが遭難者役となったのだが、脱力してロープにぶら下がっていて、それを切断されると、 わずか数十センチの落下にもかかわらず、激しいショックが加わって、とくに首への負担が大きく、寝違えたようになってしまった。
こうしたアクティビティは、危険も十分に自覚した上で、安全の上にも安全を重ねて行わなければならないと、 自覚させられた瞬間だった。
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2008/02/15 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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昨年の春に初めて「ツリーイング」に出会ってから1年、基本的なクライミング方法であるDRT(ダブルロープテクニック)から、 クライミングギアを駆使して登降するSRT(シングルロープテクニック)と、順調に講習を重ねて、インストラクター講習までたどり着いた。
ツリーマスターアカデミーが認定するインストラクターの資格を取れば、アカデミーからギアのレンタルを受けて、 独自にツリーイング体験会などのイベントを開催できるようになる。
誰でも気軽に木の上に登って景色が楽しめ、また、前にも書いたけれど、木に触れて、体をゆだねることで、 樹木の種類や性質が良くわかり、気持ちも安らげられるツリーイングは、自然に触れ合うことの少ない子どもたちにぜひ体験してもらいたいし、 親子で楽しむアウトドアアクティビティとしてお勧めで、これを昭文社主催のイベントとして定着させたいという想いがある。
そのために、まずは、自分が率先してインストラクターの資格をとろうと思い立ったわけだ。
インストラクター講習は全部で三回。マネジメント、イベントワーク、リスクマネジメントなどがテーマとなる。
今回は、イベントを開催して運営管理するイベントワークを学んだ。
**今回、ぼくたちがお世話になる立派な楠の下で、まずは座学。
講師はいつものチーフインストラクター梅木氏、今回は、すでにイベントワークに数多く参加されているFさん、
教師でネイチャーゲームガイドの資格も持つSさん、そしてぼくの三人が受講した**
**さっそく実習開始。イベント用のロープのセッティングとツリーボートの設置。
イベント参加者のケアやレスキューを考慮した効率的な配置とともに、迅速な設置が要求される**
2008/02/14 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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立春を過ぎて、東京は雪に見舞われたが、目鼻が敏感に「春」を感知して、若干、憂鬱な気分が頭をもたげている。
でも、この季節は、一つ、大きな楽しみがある。
それは、スノーシューイング。
毎年、四国のアウトフィッター「野遊び屋」とぼくが運営するOutdoor Basioc Technicが合同で開催するスノーシューツアーだ。
今年は、野遊び屋のスケジューリングの問題で、当初開いていたぼくのサイトのオフ会といった形になりそうで、 場所も例年の八ヶ岳から白馬・栂池になりそうだが、いつもどおり、雪まみれになって雪原を駆け回ることを想像すると、 今からワクワクしてくる。
スノーシューイングは、誰でも気軽に、スノーシューを履いたその瞬間から楽しめる。スキーやスノーボードは、 楽しめるようになるまでは、それなりの練習をしてスキルを積まなければならないし、雪山登山は大きなリスクがともなう。
アウトドアは好きだけれど、冬の間は家に籠もるといった人も、スノーフィールドの敷居の高さに尻込みしている人が、 けっこう多いのではないかと思うが、そんな人は、ぜひとも、スノーシューイングを体験してみて欲しい。きっと、 ぼくのように病みつきになるはずだ。
最近は、スノーリゾートなら、だいたいスノーシューのレンタルが用意されているし、ツアーも開催されているので、 それに参加するのもいい。
ちなみに、ぼくは、今月と来月の末に楽しんでくる予定だ。
2008/02/06 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (2) | トラックバック (0)
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**雪原を突っ切って、小さな丘を回りこむと、そこはまぎれもないバックカントリー。 こうしたところを自由に進む快感は、ゲレンデでは味わえないだろう**
今回の白馬では、バックカントリースキー修行の第一弾として、クラシカルスタイルのテレマークスキーに挑戦したわけだけれど、 これが、じつはなかなか思うように操れない。
自分のイメージ通りにまったく動かせないという経験は、もう30年以上も前に初めてバイクでオフロードを走り始めたとき以来で、 苦痛というよりも、「まだまだこの世には、初歩から覚えていかなければいけないものがたくさんある」とうれしくなった。
前回は、クロスカントリーコースで、クラシカルテレマークを初体験したわけだが、それから二日おいて、今度は、 白馬で何度もお世話になっている北野建設白馬支店の下川さんに、貴重な休日の時間を削っていただいて、 バックカントリーでコーチしてもらった。
じつは、バックカントリーといっても、国道沿いにある下川さんの奥さんが経営されている喫茶店「ぷぅ」 の目の前の雪原(春から夏の間は畑)から、裏山にかけての「里山」ともいえるところ。
でも、一歩踏み込めば、アニマルトラッキング(動物の足跡)が雪の上に残り、カモシカにも出会える、 まぎれもないバックカントリーとなる。
わざわざ東京から何時間もかけて雪山にやってきた身としては、 自宅からスキーを履いてそのままバックカントリーに踏み込んでいける環境というのは、まさに羨望で、「はやく内田さんも、白馬に移住して、 この生活を楽しみましょうよ」と下川さんに誘われると、明日にでも荷物をまとめてやってきたくなる。
子どもの頃から冬はスキーを履いて、通学の足代わりにもしてきた下川さんは、クロスカントリー用のエッジのない細い板で、 何の苦もなく滑って行ってしまうのだが、ぼくは、難渋してようやくついていく。
それでも、4kmほどのコースをアニマルトラッキングを追いかけたり、 夏場には下川さんがテンカラ釣りを楽しむ沢に沿って滑ったりしているうちに、だいぶコツがつかめて、楽に進めるようになってきた。
「スタート時点とは、見違えるほどに慣れて、自然になりましたよ。この感覚を忘れないように、間をおかずに練習しましょう!!」
そう、励まされて、さて、次は来週にでも時間を作って、また白馬に行かなければと、算段している。
**春から秋にかけては畑が広がるこの場所が、冬場は大雪原に**
**白馬でいつもお世話になる下川さん。 子どもの頃からスキーを履いてきた下川さんのように滑れるようにはなれるはずもないが、この冬は、白馬に通いつめて、 なんとか形になるようにしたいと思う**
2008/01/18 カテゴリー: 01.アウトドアライフ, 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (2) | トラックバック (0)
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この時期、平日の白馬は、海外のスキーリゾートかと錯覚するほど「外人率」が高くなる。そのほとんどは、 オーストラリアとニュージーランドからの客で、通りを歩いていても、居酒屋へ行っても、共通語は英語というくらい密度が濃い。
ぼくがお世話になっているペンション 「ミーティア」でも、オーストラリアからの家族連れが賑やかに団らんしていたり、 ニュージーランド人のスキーとスノーボードのガイドがお客さんとツアーの打ち合わせをしている光景が、当たり前の日常のようになっている。
海外客の多いスキーリゾートといえば、ニセコが思い浮かぶが、ニセコは香港資本が入り、その主導で開発が動き出したために、 南半球の客をたくさん送り込んでいたカンタス航空の直行便がなくなり、成田から便利な送迎タクシーが使えたり、新幹線で長野まできて、 そこから30分あまりの白馬へとシフトしてきたのだという。
もっとも、最大の魅力は、ダイナミックな3000m峰をバックにした多彩なゲレンデと、高度によって変わる雪質で、それは、 海外のスキーリゾートでも他に類をみないもので、それに気づいたスキーファンの間で、評判が広がっているというのが実情のようだ。
わざわざ海外のスキーリゾートに行かなくても、白馬へ行けばそんなリゾート気分が味わえるというのは、ちょっとお得な感じだ(笑)。
2008/01/15 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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白馬といえば、八方尾根や五竜遠見といった大規模スキー場を擁する二本でも屈指のスキーリゾートのイメージがある。でも、今は、 スキー人口そのものがかつてに比べて激減し、一頃の賑わいはない。
今は、白馬といえば、オーストラリアやニュージーランドからのスキー客のほうが多いような現状で、実際、ホテルやペンションも、 さらに飲食店でも、街角でも、外国人客が目に付く。
ぼくは、高校時代から登山は楽しんできたが、どうもスキーには縁がなく、 ゲレンデスキーを楽しむために白馬を訪れるといった発想はもともとなかった。
それが、数年前からスノーシューで雪山を巡るようになって、もっと冬のバックカントリーを楽しみたいと思うようになった。 そんなところへ、白馬と不思議な縁ができて、地元のペンション「ミーティア」にご厄介になり、 オーナーの福島氏にテレマークの教えを請うこととなった。
今回は、まず「クラシカル」と呼ばれる細い板と革のブーツの組み合わせで、足慣らしをすることに。 10年前の長野オリンピックのクロスカントリーコースとして使われて、今は一般に開放されている「スノーハープ」で、 基礎から教えてもらった。
さらに、その後、スノーシューに履き替えて、GPSを片手に雪原、樹林を縦横無尽に縫っていくコースを設定。
テレマークは、今後、白馬に通いつめて、しっかりバックカントリーを滑れるようになりたいと思っている。
また、スノーシューは、昨年から取り組んできた「ツリーイング」と合わせて、雪山で木に登り、 スノーキャンプを楽しみたいと思っている。
**はじめは、クラシカルテレマークで歩くスキーを楽しむ。序盤はわりと快調だったのに、
緩い斜面でコントロール効かず、転倒を繰り返す(笑)。写真は、マンツーマンでコーチしてくれたペンション「ミーティア」
のオーナー福島さん**
2008/01/13 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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東国三社のうちでも、他の二社に比べて地味な存在なのが、息栖神社だ。鹿島と香取に祭られる二神が、 武神でありその神剣であるのに対して、息栖神社は、武神の乗り物であった「天鳥舟」という地味な存在の神が祭られているせいかもしれない。
しかし、個人的には、鹿島と香取の両神宮が、豪壮ともいえる派手で大掛かりな作りなのに対して、息栖神社は、いかにも「鎮守様」 といった風情のこじんまりとして、地元に根付いた雰囲気に好感が持てる。
鹿島、香取両神宮は、ともに要石と呼ばれる、古代の巨石信仰を今に伝えるご神体が崇められているが、この息栖神社では、 井戸がご神体とされている。
神社が向くその先には、利根川の支流の辺に立てられた大きな鳥居があり、その支柱の両側に、小さな鳥居が立てられている。 その鳥居の下に、泉が湧いている。
利根川河口に近いこのあたりは、海水と淡水が交じり合う汽水域となっているが、この井戸は、 その汽水の中に湧き出す非常に珍しいもので、 「忍潮井(忍塩井)=おしおい」 と呼ばれ、伊勢の明星井、伏見の直井とともに日本三霊水に数えられている。
左右の泉は、 それぞれに女瓶、男瓶と呼ばれる瓶が据えられていて、その中から湧き出しているという。男瓶は銚子の形をしていて、 女瓶は土器の形をしている。
その瓶は、 とびきり天気のいい水の澄んだ日にしか姿を現さず、その姿が見られると幸運が舞い込んでくるといわれている。訪ねた日は、 身を切るような北風が湖水を海のように波立たせていたが、空は晴れ渡り、泉は澄んで、はっきりと、その瓶を確認することができた。
2008年は、 きっといいことが待ち受けているのだろう(笑)
**利根川の支流に面した霊泉「忍潮井」。この日は、幸運にも、 泉の中に据えられた瓶を目撃することが出来た**
**境内には、祭礼の際に若者たちが力比べをしたと伝えられる「力石」がある。これも、 古代の巨石信仰の名残だろうか? 樹齢1000年を越えるといわれる夫婦杉。こうした貴重な巨木が残されているのも、 日本人の魂の奥底に自然信仰がいまだに息づいていることの一つの証明だろう**
**水郷地帯に点在する東国三社をめぐり終え、香取神宮の一の鳥居まで戻ると、見事な満月が登った。この鳥居は、鹿島神宮を向き、 12年に一度の神迎祭の際に、鹿島から神を載せた使者が湖を渡ってやってきて、ここから上陸する**
■レイラインハンティング■
鹿島トライアングル ―東国三社と巨石信仰の謎―
2008/01/07 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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剣道や柔道の道場には神棚があって、「鹿島大明神」、「香取大明神」などと墨書された軸が掛けられていることが多い。それは、 先に紹介した「国譲り神話」で、オオクニヌシの次男であるタテミナカタを打ち破って、 天津神の地上支配の礎を築いた鹿島神宮の祭神であるタケミカヅチと、それが手にした刀の神である香取神宮のフツヌシにあやかったものだ。 ちなみに、三社のもう一つ息栖神社は二神が乗った舟の神アメノトリフネ(天鳥舟)として知られる。
じつは、このように、記紀神話に基づいた神を祭り、しかも記紀神話に語られる物語を大地に配置した神社というのは数多い。
神社単体として見たら、「古くさい信仰」のような気がするが、ぼくがレイラインハンティングで実践しているGPSを使った神社巡りをすると、 古代の人たちが恐ろしく正確に神社や遺跡を配置して、太陽や星の運行を観測したり、 聖地どうしを有機的に結びつけていたことがわかって面白い。
本当は、今回は自転車にGPSを装備して三社を回るつもりだったのが、準備不足ためにかなわなかった。もう少し暖かくなったら、 三社とともに、三社が位置する風光明媚な水郷地帯をサイクリングして巡ってみたいと思っている。
さて、今回は、東国三社も二つめ、香取神宮を紹介してみよう。
**千葉県の佐原市にある香取神宮。ここも広大な鎮守の森に囲まれている。 佐原は日本で初めて正確な地図を作った伊能忠敬の生地でもあり、街の中心部に記念館がある**
**取材したときは、もう年の瀬だというのに紅葉の絨毯で、晩秋の趣。冬至の日差しも春のような温もり。 しかし、これは、麗らかに感じることはできない。自然のバランスが狂ってきていることの証だからだ**
**境内には、年末らしく、大祓のための茅の輪が据えられていた。国津神=出雲系の神社は茅の輪を潜ったら、 まず右方向に回って八の字を書くが、天津神=伊勢系の神社では左回りから始める。香取神宮は天津神なので左周り。 このあたりにも、日本神話の面影が残っていて面白い**
2008/01/05 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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未だに2007年の元旦の記憶が鮮明に残っているというのに、気がつけば2008年が明けてしまった。……まったく、毎年毎年、 時間の流れがどんどん加速していくように感じてしまうのは、やはり歳を取ったということだろうか。
それはともかく、明けましておめでとうございます!!
年が明けて、さっそく初詣を済ませた人も多いとは思うが、今回は、『東国三社』 と呼ばれる千葉県と茨城県に点在する三つの神社を紹介してみたいと思う。初詣がまだという方は、ぜひ、候補に!!
さて、本題に入る前に、まず一言。アウトドアのblogで神社を取り上げるというのも、おかしなことに思えるかもしれないが、 ぼくは、昔から、アウトドアのフィールドとしての神社の森と、そこに古来から伝わる自然信仰は、日本人の感性のコアにある「自然と共生する」 という感覚を端的に示すもので、まさに「日本的アウトドア」の原点ではないかと思っている。
神聖であり不可侵である神社の森には、人を癒し、元気を取り戻させてくれる精気が満ちている。そして、 太陽の運行に沿った折節の祭りは、人が自然のリズムの中で生きていくことこそ、健康で幸せな生き方であることを思い出させてくれる。
そんなわけで、ぼくは、日本的アウトドアの代表的なフィールドの一つとして神社を位置づけているのだ。
さて、東国三社だが、これは記紀神話の中で語られる「国譲り神話」にちなんだものだ。
太古、神々は、天に住む『天津神』の一族と、地に住む『国津神』の一族に別れていた(もっとも、神道では、 それを峻別しているわけではなく、間を繋ぐ神々や、どちらにも属さない神々もあるとしているのだが)。
天を統べるアマテラスは、国津神の支配する地上をも統一しようと、その頂点にいたオオクニヌシの元に、「国を譲れ」 と迫る使者を送る。その使者が、タケミカヅチ、フツヌシ、アメノトリフネの三神だった。この三神を祀っているのが東国三社だ。
タケミカヅチを祀る鹿島神宮、フツヌシを祀る香取神宮、そしてアメノトリフネを祀る息栖神社が、東国三社と呼ばれて、 東関東の一角に大きな二等辺三角形を描くように配置されている。
この天からの使者である三神を迎えたオオクニヌシは、国譲りを了承する。しかし、 それに反対する次男のタテミナカタがこれに抵抗して戦いとなる。
武神の頂点にあった鹿島神宮の祭神であるタケミカヅチとタテミナカタは壮絶な戦いを繰り広げた後、タテミナカタは敗走して、 今の諏訪地方にたどり着く。そこまで追撃したタケミカヅチは、タテミナカタが諏訪の地に永遠に留まるのなら許しを与えると約束する。
そして、天と地は統一され、アマテラスがその頂点に立った。
鹿島神宮は、堂々とした鳥居と山門を構え、それが不思議なことに西を向いている。ほとんどの神社は、 鳥居と本殿の向きは南を向いている。ごくまれに参道が東を向く神社もあるが、西を向いているというのは、鹿島神宮以外にほとんど例がない。
じつは、この鹿島神宮の鳥居が向いている遙か先にはタテミナカタを祀る諏訪大社がある。鹿島神宮は、今でも、諏訪大社を睨み据えて、 牽制しているというわけだ。
それ以外にも、鹿島神宮にまつわる面白い逸話はたくさんあるのだが、 それは神話学の話やレイラインと呼ばれる古代の工学の話になってしまうので、ここでは触れずにおこう(詳しく知りたい方は、レイラインハンティングへ)。
**本殿は北を向いている。これも他に例を見ない配置で、鹿島神宮が朝廷の東国支配の拠点であり、 ここより北に住む「エゾ」をにらみ据えていたことを物語る**
**奈良の春日大社は、鹿島神宮を勧請したもので、神の使いとされる鹿は、ここから連れて行かれた。 奈良公園の鹿は、元々、ここの鹿の地殻引いている**
**2000年以上守られてきた広大な鎮守の森は、精気に溢れ、 心身とも癒してくれる**
**鹿島七不思議の一つ「要石」は、この土地の地下に棲む大ナマズの頭を押さえていると伝えられている。 水戸黄門は、この石を掘り起こそうとたくさんの人足を使ったが、七日七晩かけても、ついに掘り起こせなかったという。 巨石信仰という一つの原始自然信仰の名残りを伝えるものでもある**
**鹿島神宮の本来の参道は北から始まっていた。その起点にある御手洗池。ここも鹿島七不思議の一つで、 大人が入っても子供が入っても、その深さは乳の高さで一定していると伝えられる**
**散策の仕上げは、御手洗池の畔にある茶屋で、名物の甘酒と団子を**
その2へ続く
2008/01/03 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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**地上25m、9階から10階建てのビルの高さに相当する。この高度感に慣れるまで、
さすがに少々怖かった**
ツリーイングは、本来、力に頼らず、楽に登降が可能なのが特徴なのだが、まだ体の使い方が慣れていないせいか、一夜明けると、 腕がパンパンに張っていた。知らず知らずのうちに、ロープを握りしめたりもしていたようで、箸を持つにも手が震えるほど、 握力もなくなっていた(笑)
今日は、朝、現場の雑木林に集合。昨日に引き続き、小春日和のような陽気でね冬枯れの林は、柔らかい陽光が射し込んで爽やかだ。
今日の最初の講習は、「ビッグショット」と呼ばれる巨大パチンコで、ラインを結びつけたパウチ(錘)を狙いの枝まで飛ばす練習。 これが、アメリカのマッチョな樵向けに作られた代物なものだから、恐ろしく力がいる。狙いの枝にラインを掛けるまで、二、三度引いただけで、 すでに筋肉痛の腕がプルプルと痙攣してしまう。
その後、シングルロープを木の根回りに結びつけてアンカーをとるためのロープワークを練習して、いよいよ、 自分で全てをセッティングして、昨日より高い位置までSRTで登る。
樹上で、腰に吊したデイジーロープを外し、それを投げ縄の要領で、さらに上の枝に掛け、DRTシステムを組んで、 上に掛けたロープに乗り移る。ここで、もし、ロープワークに間違いがあったら、ロープを移った途端に転落することになる。
ハーネスをSRTシステムからDRTシステムに掛け替えるときは、さすがに緊張する。ぼくが使ったデイジーロープは、 そこまで登ってきたシングルロープに比べて伸び率が大きいので、テンションをかけてしっかりフリクションが効いていることを確かめても、 ぶら下がった途端に30cmくらいストンと落ちるので、毎回、肝が冷やされる。
何度も何度も、理屈で考えずに、体が自然に動くまで登り降りを繰り返し、午前中の講習は終了。
昼食を挟んで、午後は、セミナーハウスの正面に聳えるセコイアの木に全員で取りつく。
二班に分かれて、違う枝にロープを掛け、一人が登って、上で自分のデイジーロープを別の枝に掛けてそちらに乗り移ったら、 次の人間がメインロープを伝って登り、デイジーに移るということを繰り返して、一本のセコイアのてっぺん近くに、 インストラクター二人と受講生6人の8人が集結した。
インストラクターから、お菓子が振る舞われ、その場で講評。今回の参加者は、フィールドワークのプロばかりだったので、そつがなく、 安全管理なども完璧で、非常に成績優秀と褒められた。
「ただし、どんなことでもそうですけれど、慣れてきたときがいちばん危ないということを肝に銘じておいてください。これから、 アクティビティとしても、また仕事に生かすにしても、ツリーイングに慣れて、油断したときが危険ですから、常に緊張感を持って、be safety ということを忘れずに、楽しんでください」
西陽を受ける樹上で8人が固まって、それぞれ今回の講習の感想など話していると、8人と、ぼくたちを受け入れて、 ゆったりと風にしなっているセコイアとの、なんともいえない一体感が生まれてくる。
木の特性を理解して、木に触れ合いながら、そして、仲間と力を合わせながら、樹上に達し、日差しや風を共に感じていると、 大袈裟でなく、自分たちが地球という一つの生命を構成している細胞なんだなという気がしてくる……ツリーイングの世界は、 まだまだ奧が深そうだ。
今後、ツリーイングのインストラクターの資格をとるまで、このレポートを続けていくので、お楽しみに!!
また、インストラクター資格を取ったら、このコーナー主催で、ツリーイングの体験会も実施する予定です!!
**シングルロープのベースアンカーをとるための舫結びを練習する。これが、命を左右する部分だけに、皆、
真剣だ**
**午後の課題となったセコイアの大木。この木に、次々に登っていく**
**樹上に集結。じつは、この課題そのものが、SRTの検定だった**
**検定終了後の講評。そして、SRTクライマーの認定証を受ける**
**今回の受講者は、林業関係者、アウトドアガイド、学校の先生と、
みんなフィールドワークの専門家ともいえる人たちだった。また、一緒に木に登りましょう!!
皆さん!!**
■ツリーマスタークライミングアカデミー■
http://treemaster.jp/
2007/12/21 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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**今回の講習の舞台となったのは、八王子セミナーハウスの明るい雑木林。
冬枯れで見通しのきく林は気持ちいい**
10月にロープを使った木登り 「ツリーイング」の最初の講習を受けて、今回は、その続きの講習を八王子セミナーハウスの会場で受講してきた。
前回は、ダブル・ロープ・テクニック(DRT)と呼ばれる、特殊なギアを使わないシンプルな方法で、 単純に木を上り下りする方法を学んだが、今回は、ロッククライミングでよく使用するアセンダー、ディセンダーという登降具を使って、 より高い場所に登るシングル・ロープ・テクニック(SRT)をメインに、到達した場所からさらに高いところへロープを掛けて登ったり、 二本のロープを使って樹間を移動するといった応用技術を学ぶ。
体験会やDRTまでは、レクリエーション的な意味合いが強いが、今回の講習は、樹上で枝打ちや鳥類観察、 設置作業等を行うことができる実践的な意味合いが濃く、参加者は林業関係者やアウトドアガイド、学校の先生など、 ツリーイングを自分の仕事に生かそうとする人が集まった。
朝早くセミナーハウスに集合し、SRT技術と安全についての座学。そして、明るい雑木林に移動して、さっそく実技講習が始まった。
**まずは、装備一式を点検して身につける。二人一組となって、バディが、
ハーネスの具合などをチェック**
**DRT技術の復習と、
樹上で他の枝にロープを掛けて乗り換えるためのモンキースローの練習をする**
**枝の先端へ移動していくリムウォークを地上で練習する。ロープに引っ張られているので、
これがなかなか難しい**
冬枯れの杜に木枯らしが吹くと、枯葉が光りを帯びて舞い落ちる幻想的な風景の中、黙々と、課題に取り組んでいく。
前回のDRTでは、高さ10m程度まで登って降りるだけだったが、今回は20~30mの高さにまで登り、 さらに樹上でロープを掛け替えたり、アセンダーからディセンダーに掛け替えるというかなり危険な作業があるので、みんな緊張の面持ちで、 真剣に取り組んでいる。
今、様々なアウトドアアクティビティが、道具の進歩もあって、誰でもすぐに本格的に楽しめるようになってきたが、そこには、 命を落とすリスクも確実に存在していることをあらためて痛感した。
2007/12/18 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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2007/12/07 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (3) | トラックバック (0)
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先週末は、うららかな日和の中、葉山でシーカヤックを楽しんだが、この週末は所用で田舎に帰ったついでに、 近くの鹿島灘に足を伸ばして、ビーチコーミングをしてみた。
明るく凪いだ葉山の海とは対照的に、外海らしく大きな波が立って、自然の力をまざまざと見せつけてくる。海といえば、 どうしても思い浮かべるのは故郷のこの海で、今でこそ、サーフィンのスポットとなっているが、「遊ぶ」 場所としてのイメージはほとんどなかった。
葉山の磯には命が溢れていたが、冬の鹿島灘には、命の賑やかさはあまり感じられない。
この日は、満ち潮で海岸線が狭かったせいか、打ち上げられたものも少なく、、医療廃棄物のようなものが目についた。
だが、ぼくは、冬の海が好きだ。
波の砕ける音が腹の底を打ち、冷たい潮風が体の芯まで染み込んでくる。そして、圧倒的に広い太平洋と対峙していると、 人間がちっぽけな存在だということが身に染みると同時に、ちっぽけだけれど、自分もこの自然の一部なんだという思いがわきあがって、 そこにいるだけで深いメディテーションを味わっているような気分になってくる。
時には、こうして一人で広大な風景と向き合ってみるのもいいものだ。
**いい波が立っているのに、海にいるサーファーはたった一人**
2007/12/03 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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シーカヤックで海に漕ぎ出して、いつも新鮮に感じるのは、馴染みのある陸上風景が海から見るとまったく違った場所に見えることだ。
鄙びた日本の漁村も、どこか南仏あたりのリゾートに見えたり、南海の島にいるように思える。とくに、 ドライブやツーリングでよく訪れる伊豆や、今回の三浦半島などでは、陸上のイメージがごったがえす観光客やら渋滞する道なので、 このギャップがことさら大きい。
そして、いつもは海の綺麗さなど気にかけないのに、澄んだ水と魚影の多さ、磯の生物の多様さなどに驚かされる。
単にボートを漕いで気晴らしするのではなく、大自然の中に身を置いて、 その息吹を全身で味わえるのがシーカヤックというアクティビティの素晴らしいところでもある。
ぼくたちは、まるで天に祝福されているかのような小春日和で凪いだ海をのんびりと漕ぎ進んでいく。
葉山御用邸横の海水浴場を出発して、まずは西に向かう。
この日は釣り船に、ヨット、ぼくたちと同じシーカヤックも多く、やや気を使いながら進んでいく。それでも、 陸上の混み具合とはまったく違い、それぞれの「領分」が十分に確保できているので安心だ。こんなところも、広い「海」 というフィールドのいいところ。マリンスポーツを楽しむ人は、大らかな人が多いが、 それはこうした茫洋とした環境にいつもいるからかもしれない。
小さな岬の突端に 差し掛かると、浅瀬で波が立っている。先導する木下氏は、岩と岩との間の波が高いところをわざと越えていく。 こちらも、それに続いて、波に正対するように方向を定めて、岩の間を抜けていく。
べつにたいした大きさの波ではないが、全長5mのタンデム艇がいとも簡単に持ち上げられてしまうその力に、自然の威力が垣間見える。 これが少しでもうねりが入ったりすると、「なかなかスリリング」などと軽口など叩いていられなくなってくる。
小一時間漕いで、岬を越えた先の森戸海岸に上がり、トイレ休憩。そして、すぐに艇に乗って、 江ノ島のほうを向いた赤い鳥居が印象的な沖の菜島に上陸した。ここでランチタイム。
木下氏たちがランチの準備をしている間、Oさんとぼくは水が引いてできたあちこちの磯だまりを覗いて歩いた。どこも 「ヤドカリの楽園」といえるほど、ゴソゴソと彼らが動いている。ぼくたちが近づいて行くと、はじめのうちはどいつも必死で「貝」 を装っているのだが、一匹がついに我慢できなくなって逃げ出すと、それがパニックを呼び起こして、 一気にすべてのヤドカリがコケつまろびつしながら逃げていく。中には、ひっくり返しになって身動き取れなくなり、また慌てて「貝」 のふりに戻るやつもいて、笑わせてくれる。
他にも小魚や透明の海老の幼生など、よく見ると、小さな磯に命が溢れかえっている。
今日のメニューはハムとキノコのパスタ。アルマイトの大なべ一杯のボリュームを四人でいとも簡単に平らげてしまった。最後に、 「もったいない、もったいない」と言い訳のような独り言を呟きつつ、なべがピカピカになるまで平らげたのは、 見かけによらない大食漢のOさんだった。
ゆっくりとランチを楽しんだ後は、再び海へ。
菜島に上陸するときは潮が引いていたので楽に上陸できたが、1時間ほどの間にだいぶ満ちてきて、上艇するのに、 半身を海に浸かった木下氏と楠氏に艇を支えてもらわなければならなかった。引き潮のときには陸続きで、 満ちてくると島になるようなところがけっこうあるが、こんな短時間で潮が満ちたら、取り残される人も出てしまうだろう。その点、 シーカヤックは自由が利いて安心だ。
午後は、午前中よりもさらに凪いで、まるで鏡の上を漕いでいるようだ。南の島で漕いでいると、何十mも下の海底まで見通せて、 ふいに高所恐怖症に襲われることもあるそうだ。いちど、そんな海にも浮かんでみたいものだ。
いったん出艇した葉山海岸を左に見送り、長者ガ崎の東に浮かぶ尾島を回り込む。このあたりは、ウニやアワビ、サザエの宝庫で、 偏光グラスで海を覗き込むと、白い海底にびっしりとウニが張りついているのが見える。
「むこうの岸辺の山並みから長者ガ崎にかけて、竜の背中のように見えるでしょ。長者ガ崎のあたりが尻尾で、その大半は海の中にあって、 先っぽが出ている。竜の尾の先だから尾島って呼ばれるんですよ」
そんなふうに地名の由来を教えてもらうと、風景が俄然躍動したものに見えてくる。ナンバリングされた道を辿って、 仰々しい看板ばかり見せられ、さらには人工物の林立する観光地では、土地にまつわる物語も埋没してしまう。
だけど、こうして、全身で自然に触れ合って、土地に向かい合うと、昔の人たちの生き生きとした想像力と、 それを喚起する自然がそのままに残されていたことが羨ましくなってくる。
ぼくが生まれ育った田舎もそうだが、かつては「白砂青松」と歌われ、遠浅の海岸線がどこまでも続いていた風景が、今は、 浜はやせ細ってみる影もなくなってしまっている。この葉山も、木下氏が子どもの頃は、ずっと白い砂浜がバンドになっていて、 裸足で歩いていけたのだという。そんな頃に、こうしてゆったりと沖に浮かんで浜を眺めることができたなら、どんなに素晴らしかっただろう…… 。
ときに、三艇をくっつけて、そんな話をしながら過ごしているうちに、秋の短い陽は、だいぶ傾いてきてしまった。
海に浮かぶ心地よさに名残を感じつつ、舳先を長者ガ崎から葉山海岸に向けて、無事上陸。
浜に近い民宿「大海荘」で風呂を借り、塩を洗い流して浜に戻ってみると、 ちょうど大きな太陽が伊豆半島の向こうに沈んでいくところだった。
■問い合わせ先■
「オーシャンズ」では、シーカヤックのツアーやスクールを随時受け付けています。詳細は、直接お問い合わせを。
神奈川県三浦郡葉山町一色1821-2
tel&fax : 046-876-3401
blog : http://blog.ocean-s.jp/
mail : [email protected]
2007/11/28 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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シーカヤックとの出会いは、かれこれ6年以上前になる。
日本ではじめて全国的にシーカヤッカーが集結した「シーカヤックミーティング in 牛窓」 に縁あって参加し、広い海原に漕ぎ出して、自由に進むその開放感に感動して、以後、ワンシーズンに二、三回、四国や若狭、 西伊豆などで漕いできた。
ぼくは、10代の頃からオフロードバイクに乗り、道無き道を走るツーリングやデザートレースを楽しんできた。 シーカヤックに初めて乗ったとき、まず、オフロードバイクに感覚が近いと思った。自由にフィールドを走り回り、 体重移動でターンしていくその運動感覚……そんなところが、ずっと馴染んできたオフロードバイクにそっくりで、じつに取っつきやすかった。
そして、シーカヤックのほうは、遮るものが何もない海原だけに、オフロードバイクよりもさらに世界は広く、 エンジンに頼らず人力で進むナチュラルさや、デッキに荷物がたくさん積めて、無人島へ渡ってキャンプするツーリングなどでは、 贅沢に食材や酒を用意して、オートキャンプ並みに贅沢な夜が過ごせるのも魅力的だった。
ぼくは、茨城県の鹿島灘沿いの小さな町で生まれ育ったが、海が近くにはあっても、荒れた外海のため、泳ぐこともできず、 「海は怖いもの」という先入観から、マリンスポーツは敬遠気味だった。
それが、シーカヤックのおかげで、海がとても身近なものになった。
先週末、よくアウトドアで一緒にアクティビティを楽しむOさんが、今年から葉山で独立してシーカヤックツアーのアウトフィッター「オーシャンズ」 を立ち上げた木下剛さんのところを訪ねてシーカヤックに乗るというので、ぼくも便乗して、初冬の一日を海で過ごすことにした。
じつを言えば、一昨年の夏に西伊豆で漕いで以来、二年ぶりのシーカヤックだった。
当日は、三浦半島の葉山町にある公園の駐車場に集合。
オーシャンズのツアーでは、艇も装備も全てレンタルで揃い、行動中の食事も用意されているので、身一つで出かけていけばOKだ。 まったくの初心者でも、簡単な講習の後、海へ漕ぎ出し、本格的なツアー開始となる。それだけ、シーカヤックという乗りものは、 敷居が低くて馴染みやすく、しかも、大海原を自分で航海しているという満足感が味わえる。
艇は基本的にシングル艇とタンデム艇があって、初心者は安定感のあるタンデム艇に乗ることになる。 Oさんもぼくもシングル艇で漕いだ経験も何度もあるが、久しぶりということもあって、今日は二人でタンデム艇に乗ることにした。
タンデム艇の場合、前に乗る人がナビゲーター役となり、後はラダー(舵)を操って、艇の方向を定めていく役となる。
準備が整ったところで、艇を浜へ下ろし、Oさんが前に、ぼくが後に乗り込んだ。
**葉山公園駐車場に集合。タンデム艇1、
シングル艇2のこじんまりしたツアーになった**
**11月下旬としては異例の暖かさで、他にもここを出発するツアーがあった**
**本日のぼくのいでたちは、陸上でも着るベースレイヤーの上に夏場のシーカヤックスタイルを纏って、
さらにトレッキング用のソフトシェルジャケットという軽装。木下氏は寒さに備えてドライスーツを用意してくれていたが、
この格好で十分だった**
ツアーの詳細は、次回お伝えします。
■オーシャンズ■
http://blog.ocean-s.jp/
2007/11/27 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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野平の桂の木を後にして、白馬からR148を北へ10kmほど、山間の秘湯奉納(ぶのう)温泉へと向かう道に入ってしばらく行くと、 見るからに堂々とした杉の巨木が沿道でこちらを見下ろしている。
巨木の根元には「白山社」という小さな社がある。その社の前に立つと、この木の根元が巨大な洞になっていることに気づく。 高さ42m、目通り幹囲が12mのまさに「そびえ立つ」大杉。人が楽に通り抜けられる洞の大きさも桁違いだ。
洞の中はまんべんなく焦がされていて、内側から腐るのを押さえられている。そのせいか、こんな洞を持ちながら、 枯れ枝も苔がついた弱った枝もなく、健康的で清々しい立ち姿をしている。
地元の年寄りたちは、子供の頃、みんなこの洞の中で遊んだという。時には、この中で眠ったりもしただろう。こうした、巨きく、 人の命の長さなど一瞬に思えるほどの時間を生きた生命に見守られ、それと触れあって育った子供は、どんな心を持つだろう?
自然環境を守る、持続可能な社会、そんな言葉だけでは言い表せない、自然との共生をどうしたら取り戻せるのか、 それをぼくたちは真剣に考えなければいけないのかもしれない。
**白山社の周囲にはイチョウの木がたくさんあり、足元を見ると銀杏が。福島さんは、
これをビニール袋にたくさん収穫していた。これも貴重な自然の恵み**
白山社の大杉からさらに奉納温泉への道を辿り、途中から狭い道へ分け入っていく。車一台がやっと通れるその道の行き詰まりに、 ひっそりと社がある。背後に杉の大木が生い茂るその社にお参りし、本殿の裏の斜面を登ると、巨木たちの中心に、 ひときわ高く抜きん出た木がある。
縄文土器の火炎模様を思い出させる太い枝が何本も腕を突き上げるように伸び、見上げた先でそれが密集して、 テラスのようになっている。これを地元では「神の腰掛け杉」と呼んでいるというが、たしかに、そこには神か天狗か、 人智を遙かに超えた存在がどっかりと腰を下ろして、下界を睥睨してそうだ。
古来、日本ではこうした巨木や岩に神が降臨するとされ、そんな事物を「依代(よりしろ)」と呼んできた……岩の場合は 「盤座(いわくら)」とも呼ばれるが……それは、こうした巨木や岩そのものが、 その存在が人智を越えた大きな意志が働いてできた奇蹟のように見えたせいでもあるだろう。
巨木は、生物として人より遙かに長く生き、巨大に成長した姿が人を畏怖させる。岩はそれ自体は生物ではないが、地球が「ガイア」 という一つの生命であり、そのガイアが息づいていることの証である。そして、 岩に秘められた悠久の年月もまた人をして畏怖の気持ちをいだかせる。
巨木や巨石に出会っていつも思うのは、ぼくたち人間が、こうしたものたちのスケールで世界をイメージできたら、 どれほど世界が平和になるかということだ。逆をいえば、人の一生が儚いが故に、人は生き急いで、 無益な戦いや競争に駆り立てられてしまうのだろうか……。
**白馬周辺の巨木巡りは、この冬、スノーシューと組み合わせたイベントとして実施する予定です。また、詳細が決まり次第、 ご紹介したいと思います**
2007/11/23 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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**今回を含めて、白馬の巨木たちはGPSに位置をインプット。これで、 わかりづらい場所にある木にも会いに行けるし、GPSで巨木を巡るツアーも実現できる**
先週後半、信州の白馬で、巨木巡りツアーのための下見をしてきた。
昨年、白馬に伝わる「風切地蔵」の取材をして、その過程で、ここにたくさんの巨木があることを知って、 それを結ぶGPSのツアーを行ったら面白いのではないかと考えたのだ。
今回は、昨年巡った候補地に加えて新たに個性的な巨木がいくつかあるということで、 ペンションミーティアのオーナー福島さんに案内していただいて、それらを巡ってきた。
まずは、姫川を挟んで、白馬三山と対峙する絶好のロケーションにある野平の集落へ向かう。ここは、古い善光寺街道が通り、 その鬼無里との境に位置する柄山峠に風切地蔵があって、地元の人たちが、街道を復活させようと道を整備し、地蔵も大切にしている。
**姫川を挟んで、正面に白馬三山を拝む野平集落。晴れた日の景色は素晴らしい**
そもそも白馬の風切地蔵のことをこのコラムに書いて、それをたまたま読んでくださった、 ここ野平の下川さんから連絡をいただいたことが、ぼくが白馬と深く繋がることになったきっかけだった。今回の巨木の情報は、もちろん、 その下川さんからもいただいた。
野平の集落の中を「権現水」という湧水が流れている。集落の北縁、背後の山の斜面から流れ落ちる水は、冷たく、すっきりとしていて、 飲料水にも、野菜を洗ったりするのにも使われている。
まずは、この水を手に掬っていただいて、山へ入っていく。
**集落の外れに湧き出す「権現水」。夏は冷たく、 冬場はほのかに温かみが感じられる柔らかい湧水**
野平の集落を見守る神明社の脇を通り、杉林に分け入っていくと、足元はぬかるんで、 福島さんに用意してもらった長靴が足首のあたりまで泥に潜ってしまう。
このあたりは窪地になっていて、水はけが悪いため、湿地のような状態になっているのだが、桂の木は水気が好きなため、 こんなところに生育するのだという。
鬱蒼とした杉林は、一昨年の豪雪の際に倒された木がそのままにされていたりして、殺伐とした雰囲気に包まれている。
そんな中に、同じ場所で新生を繰り返して、ミズナラのように幹が密生した桂があった。
樹齢800年を越えるといわれるこの桂の木は、薄暗い中、あまり手入れもされていないため、どこか荒んで見えてしまう。 そんな様子を見て、福島さんは、幹にかかった枯れ枝などを取り払いはじめた。
この桂と杉林は、近く、地元の人たちが手入れする予定だという。
桂の木の周りを一巡してみると、地盤は軟弱で、泥に深々と足をとられてしまう。根回りで10mくらい、 いちばん高い幹で30mは越えていそうな木が、いくら根を張っているとはいえ、こんな軟弱な場所に立っていられるのは不思議な感じだ。
この木の傍らに立ち、じっと耳を澄ますと、どこからか微かな水音が聴こえてくる。足元に耳を持っていくと、その音が大きくなる。
ちょうど、この桂の木の根元に水が湧き出し、それが権現水の源になっているのだという。
明確な流れがあるわけではなく、ここから窪地の杉林の地面を湿らせ、その湿地から神明社の下の権現水に、 搾り出されるようにして水が湧き出しているようだ。滞留しているかに見える湿地の水が、地面に濾過されて湧き出すときには、 森の滋味あふれる澄明な水に生まれ変わっているのだから……自然のメカニズムは巧妙であり、不思議だ。
この林が再び手入れをされて、桂の木ももっと健康になれば、そこから生み出される水ももっと澄んで、集落の人たちの体も心も、 もっともっと健康的に潤してくれるだろう。
写真を撮り忘れてしまったが、桂の木を訪ねる途中で、福島さんが斜面に掘られた穴を指して、「この穴は、 集落で消費するための雑木の炭を焼いた跡なんですよ」と教えてくれた。
そう言われなければ、生木が倒れた根の痕跡と思うようなものだが、よく見れば、穴の側面は煤で黒くなっていて、 簡単な窯の跡だとわかる。
間伐したり、大風が吹いて倒れた木などを、日常使う炭にするために、集落に近いこの場所に簡単な窯を作って焼いたのだという。 貴重な現金収入となる「商品」の炭は、もっと山奥で、良木を見つけ、しっかりした窯で焼かれた。
自然の生態と、自分たちのニーズをうまく合わせて、合理的に暮らしていた昔の人たちは、 ほんとうに無駄なく暮らしていたのだとわかる。
ほんの些細なことだが、こうした昔の人たちの生活のスタイルや智慧をもう一度学びなおすことが、 今のぼくたちには切実に求められているような気がする。
2007/11/21 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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昨夜、ニュージーランドから来日している日本人シーカヤックガイドのRyu Takahashi氏と、 ツリーイングインストラクターの梅木智則氏、それから、アウトドアツアーに積極的に参加しているO嬢と四人で楽しい酒を飲んだ。
もともと、二年ぶりに来日したRyu氏と「久しぶりに飲もう」と約束していて、先日のツリーイング講習会に参加したときに、 梅木氏にそんな話をすると、「本場のガイディングについてぜひ知りたいので、ぜひ一緒に」となり、 いつもはお客さんの立場のO嬢に声を掛けると、「みんなと楽しく酒が飲みたい」と合流したというわけ。
日本でもアウトドアアクティビティは多彩で、盛んになってきているけれど、 ガイドしたりインストラクションしたりといったことを生業としている人は少ない。しかも、今のところ、 山岳ガイドのように資格認定機関が認める資格というのはほとんどなく、「正式なアウトドアガイド」となると、もっと少なくなってしまう。
Ryu氏は10年前にニュージーランドに渡って、現地のアウトフィッターに就職し、その後、 現地の試験を受けて正式なシーカヤックガイドとなった。梅木氏はアウトドアアクティビティ全般を教える「アウトワードバウンド」のプログラムを終了した後、 様々な遠征をこなして、アウトドアガイド・インストラクターとなった。二人とも、その道の「プロ」と呼べる数少ない人材だ。
ツリーイングもシーカヤックも、アウトドアアクティビティの中でも、とくに敷居が低くて、誰でもすぐに楽しめるものだが、 だからこそ、奥行きが深いともいえる。
さほどテクニックが必要でない分(もっとも、突き詰めていけば、どちらも「エクストリーム」 と呼べるほど高度な技術を要するものもあるのだけれど)、楽しみをどこに見出せばいいのかということが課題になる。
ただ漫然と技術を教えただけでは、ユーザーはすぐに飽きてしまう。普段とはまったく違う視点から世界を見るといっても、 ただそれだけでは、興味は急速に薄れる。問題は、シーカヤックやツリーイングそれ自体を目的とするのではなく、それを手段として、 何を体験するか。ガイドは、どういった充実した体験をユーザーに提供していくか、そこに傾注しなければならない。
日本では、まだ今のところ、ガイドとインストラクターとの区分けが曖昧だし、 インストラクションとは違うガイディングの技術であるホスピタリティやエンタテイメント性といったところまで備えているガイドやアウトフィッターも少ない。
Ryu氏は、自らの経験を生かして、時々来日してはシーカヤックガイド向けのプロガイドワークショップを開催して、 観光産業の本場である、ニュージーランドのノウハウと、自分が積み上げてきたガイドとしてのスキルを伝授している。
そんな彼のプロガイドとしての知識やスキルはシーカヤックの世界だけでなく、あらゆるアウトドアアクティビティに通用するはずで、 まずは、梅木氏のツリーイングの世界を発展させる契機として導入しようといった話になった。
また、単一のアクティビティだけでなく、いくつのアクティビティを組み合わせることで、 フィールドを楽しむ視点がより広く立体的になり、フィールドや自然に対する理解も深まるだろうと、 シーカヤックの上からツリーイングにエントリーするようなツアーもどんどん実施していこうと盛り上がった。
そんなアウトドアプロパーな三人の話を楽しそうに聞いていたO嬢は、じつは保育園に勤める看護士さんで、 O歳児のクラスを受け持っている。じつは、究極のお客さんを相手にしている彼女が、 ガイディングということに関してはいちばんのプロではないかと、最後に、アウトドアプロパー3人は思い至った(笑)
2007/11/01 カテゴリー: 06.ツーリズム, 11.人 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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今回のツリーイング「DRT(ダブルロープテクニック)」を伝授してくれたインストラクターは、ツリー・マスター・ アカデミー北関東支部の梅木氏。じつは、彼とは昔からの友人で、 一緒に北八ヶ岳のスノーシューツアーなども企画したことがあるアウトドア仲間でもある。
カヌー、登山、テレマーク……と本格的なアウトドアアクティビティを数多くこなし、アウトドアガイドとしても活躍していた彼が、 あるときからツリーイング一本槍となり、そのインストラクターとツリーイング技術を用いた林業とを職業するまでになっていた。 いろいろな楽しみを知る彼がそれだけに打ち込むのだからよほど魅力があるのだろうと、3月に体験会に参加して、 ぼくもツリーイングの世界に見事にはまって、講習に参加するということになったわけ。
登降の技術は、昔とった杵柄とでもいうか、大昔にかじっていたロッククライミングの技術と大差なく、一部、 ロープワークが思い出せないところがあった程度で、問題なくマスターできた。スキルに関しては、 基本的なロープワークを二つ三つ覚えれば済むことなので、別にロッククライミングの経験などなくても、すぐに覚えられる。といっても、 高いところに登るわけだから、常に転落のリスクはいるわけで、安全確保やレスキューといった技術と意識は必須で、 けして安易に考えてはいけない。
今回、この講習を受けてとても興味を持ったのは、木を相手とするために、樹木の特性や枯れ方、 木の病気などにとても敏感になることだった。
梅木氏は、樹木医のサポートもしながら、自分も同様の技術と意識を磨いている。登山では、安全に楽しく山に登ろうと思ったら、 必然的に地理気象についての知識に興味を持ち、実践を通じてそれを学んでいく。シーカヤックなら、必然的に海の生理に興味を持つ。 アウトドアアクティビティは、その対象とするフィールドについての知識を深めていくことが大きな楽しみの一つだ。だから、 ツリーイングをきっかけにして、梅木氏が林業や樹木医に興味を持ったのもよくわかる。
ぼくは、山に登っていて、木について知りたいと思いながらも、なかなか種類を見分けることができなかった。ところが、今回、 座学で木の種類と特性や病気などについて学び、自分がいろいろな木に触れてみると、自然にその違いや種類がわかるようになってきた。
これから、幾度かインストラクターの資格を取るまで講習に通いつつ、木について学ぶためにも、プライベートでいろいろな木に登り、 触れてみたいと思っている。
**一日目の夜は、木の種類や病気、
危険な枝などについて標本をもとにじっくり学ぶ**
**翌日は、前夜の座学を踏まえて、木の選び方を実践。さらに技術トレーニングの後に検定を受け、
「ツリーイングクライマー」に。これで、一応、一人でもツリーイングが楽しめるようになった**
2007/10/24 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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2007/10/21 カテゴリー: 06.ツーリズム, 08.スーパーネイチャー, 09.生命 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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先週末 、ツリーイングの講習会に参加したことは、すでにお伝えしたが、その内容について、少し紹介してみたいと思う。
そもそもツリーイングとは、アメリカで考案された木にダメージを与えない、安全な木登りの方法で、 専用のロープとギアを使って登るのが特徴だ。
3月に初めて体験会に参加して公園のなんでもない木の天辺近くまで登ったときに、 いつも自分の背丈で目にしているのとまったく違う世界が開けることに感動して、ぜひ、 自力でセッティングして登れるようになりたいと思ったのだった。
ちょうど、シーカヤックを初めて体験したときに、今まで想像もしていなかった面の広がりを持つ「海」 がフィールドになることに感動して、その世界に足を踏み込んだのだけれど、ちょうどそれと同じ感覚だ。
今回ぼくが参加したのは、「ツリー・マスター・クライミングアカデミー」が開催するDRT(ダブル・ロープ・ テクニック)という初級講座。初級ではあるけれど、この技術をマスターすれば、自分でツリークライミングが楽しめるようになる。
体験会では、すでにセッティングされているロープに登るだけだったが、DRTでは、 まず登れる木の選別とどの枝を選べばいいのかといった理論から始まって、実際にロープを目標の枝に掛ける技術、 さらにそこにロープをセッティングする技術、そして登降と、回収までの一連の技術を伝授される。
今回は、群馬県の赤城山頂にある大沼の辺で、紅葉に囲まれて木に登るという最高のシチュエーションに恵まれた。
この講座は初めてのぼくと、8月に受講して、今回は技術のブラッシュアップのために参加された地元群馬のOさんとMさん、 生徒三人だけのこじんまりとしたスクールになった。
**まずは簡単な座学から。ツリーイング装備の使い方、木の選び方などを学ぶ**
**まずは、ロープを掛けるためのスローラインの投げ方から**
**あとは、スルスルと登っていくだけ。一見簡単そうだが、じつは、やっぱりとても簡単(笑)。
このとっつきやすさがツリーイングの最大の魅力。ただし、じつは、安全確保やレスキューなど、この先に、
奥深い世界が待っている**
その2に続く
2007/10/18 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (2) | トラックバック (0)
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先 週末、以前 キャンプしたカヤノ平へ、今度は紅葉を愛でに出かけた。
しかし、例年ならこのあたりでは、10月上旬にはピークを迎えているはずだが、山には、点々とナナカマドの朱が目につくだけで、 他の木は、ようやく色づき始めたといった程度。
今年は、残暑が長く続いたのと、秋になってからの冷え込みがまだ本格的でないため、全国的に紅葉が遅れているようだ。
それでも、秋の気配もまだ薄い東京からやってくると、抜けるような青空にナナカマドの朱が映えて、十分、 秋の気分に浸ることができる。
前回は白樺林の中にテントを張ったが、今回は牧場に面した草原にサイトを占める。他にも、同じようなオートキャンパーが、 タープとテントを張って、ゆったりと草原のフリーサイトの雰囲気を楽しんでいる。
日が暮れると急に冷え込みが厳しくなり、明日の紅葉を期待させる。夜空には、 もう都会ではまったく見られなくなってしまった天の川がくっきりと浮かび、寒さを忘れさせてくれる。
夜半から、少し気温が上がったと思ったら、雨になった。前回も夜半から明け方にかけて小雨が降ったので、すぐに止むと思ったが、 雨脚も風も強くなって、そのまま夜明けを迎えてしまった。
予定では、紅葉を満喫しながら、ブナの森と湿原を散策して一日過ごそうと思っていたのだが、吹き降りの雨では、 停滞しているしかない。ソフトハウス=テントに叩きつける雨音はうるさいけれど、ぼんやりと何もしない時間を過ごしていると、 いつも何かに追われている都会の時間が嘘のように思えてくる。たとえ、半日でも、こうした時間を過ごすと、 驚くほどリフレッシュできるのがよくわかる。
降り止まない雨の中でタープやテントを撤収し、麓の木島平へ。
街道に、「ソバあります」の看板を見つけて、クルマを止める。そこは、ごく普通の民家で、仏壇が据えられた居間に通される。 しばらく待つと、新ソバが運ばれてきた。このあたりでは、昔からソバを自家栽培して、一般的な家庭料理として食べられてきたそうで、 その手作りの味を提供することにしたのだという。
自分の畑で取れたソバを100%使った新ソバは、一日限定、わずか10食。 すべて自家製の野菜を使った漬け物にふろふき大根がついて、薫り高いソバは大盛り。最近、ソバが高級食と化して、 有名店でほんの少しの量を高い値段で出しているが、 この限定の今まで食べた中でいちばん美味しいソバが1200円というのはリーズナブルだった。
紅葉を逃したものの、このソバと出会ったおかげで、とても得した気分に浸れた気がした。
木島平からは、志賀草津道路を通って草津へ。途中の白根山付近はだいぶ紅葉も進んでいた。
草津で、村営の「大滝の湯」に浸かり、帰路についた。
2007/10/11 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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以前、体験記として紹介した「ツリーイング」。ロープ一本で手軽に木に登ることができるこのアクティビティに、 半日体験ですっかり魅了されたが、その基本技術が学べて、一人で登れるようになる「ダブルロープテクニック講習会」が、来週末の13、 14日、群馬県の赤城大沼で開催される。
普段、べつに気にとめることなく散策している公園の立木に登って見下ろしてみると、真慣れた場所がまったく違った風景に見え、 鳥の囀りや虫の声も立体的に聞こえ、さらには、吹き渡る風をダイレクトに感じられる。
この新鮮な体験に感動して、自力でロープセッティングからクライミング、 そしてレスキューまでのテクニックが学べる講座を心待ちにしていたが、それがついに開催されるとあって、さっそく、 二日間の講座に申し込んだ。
ツリーイングの体験がない人でも講座の受講は可能なので、興味のある方は、ぜひ!!
詳細は、「ツリーマスタークライミング・アカデミー北関東支部」まで。
2007/10/06 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (3) | トラックバック (0)
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「自然が子供たちを成長させる」をモットーに、様々な子供や家族向けアウトドアイベントを手掛けるコールマンが、登山家、 戸高雅史氏が主催する「野外学校 FOS」の「野外学校 Feel Our Soul 秋の冒険キャンプ」 に小学生(高学年対象)を15人招待する。
山梨県忍野村の入会の森キャンプ場で、一泊二日のテント泊キャンプを行いながら、ベース作り、森の探検、登山、 野外パーティなどのメニューをこなす。
プログラムの最後には、子供たち一人ひとりが、体験を通して感じたことや学んだことを発表する「ふりかえり」の場も用意される。
応募締め切りは10月1日。
**申し込み者の中から抽選で50名には、 キッズ用デイパック"MINI Ⅱ"をプレゼント
【詳細・申し込み】
野外学校FOSホームページ http://www.feel-our-soul.com/
2007/09/20 カテゴリー: 01.アウトドアライフ, 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (2) | トラックバック (0)
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カヤノ平の巨木の森からそのまま高度を上げていくと、開けた草原の峠に出る。ここは拓かれた牧場になっていて、 その傍らの白樺林の中がキャンプサイトとなっている。
今宵は、ここで一泊。
受付で手続きをしてから、ビジターセンターを覗いてみる。すると、 フロアの奥で一心不乱に顕微鏡を覗くインタープリターの男性の横に、獲れたてのキノコが並んでいる。
「もうこんなに生えているんですか?」
「えぇ、このあたりでは、9月に入れば、キノコの本格シーズンなんですよ」
舞茸やナメタケ、シメジといった見慣れたものから、はじめて見る珍しい種類まで、広げた新聞紙に整然と並べられて、 ネームタグが付けられている。
その中に、「ドクツルタケ」と名前の書かれた菌を見つけた。タマゴタケという美味しいキノコがあるが、傘を閉じた状態だと、 それに良く似ていて間違いやすい。
このドクツルタケは、毒キノコのなかでももっとも恐ろしいものの一つで、一本食べただけで、助からない。 コレラに似た激しい嘔吐と下痢の後で、肝臓や腎臓がスポンジ状に破壊されてしまう。欧米では「死の天使」と呼ばれていることからも、 こいつの恐ろしさが知れる。
「キノコは、同定するのが難しいんですよね。私もこうやって顕微鏡を使ってますけど、それでも、 地域の環境の差によって形が変わったりして難しい」
「毒キノコほど、美味しそうに見えますしね」
「そう、美味しい食用キノコにとてもよく似ていたりするんです」
アイヌは、キノコや山菜の毒性を試験するために、毒見したいものの切片を笹の葉に包んで、舌の裏側に入れ、 舌の痺れ具合で計ったという。
そんなことを言うと、かのインタープリター氏は、試してみたい誘惑に駆られたようで、ドクツルタケを真剣に眺めはじめた……ぼくも、 若干、心が動かないではなかったが(笑)。
これから、地方に行くと、沿道で地物のキノコを売っている屋台をよく見かけるようになる。 そんなところで買ったキノコで中毒を起こしたというニュースが時々流れるが、それが凄惨な結果を招いていることまでは報道されない。
ドクツルタケは内臓が侵されて、のた打ち回った末に死に至り、ドクササゴは、滅多に死に至ることはないものの、手足の末端が腫れて、 針を突き刺されるような激烈な痛みが一ヶ月以上も続くという。他にも、その症状が、「地獄」としか表現できない菌がたくさんある。
沿道の獲れたてキノコを買うなら、自分でも良く知っている種類のものにするのが無難だ。
珍しいキノコを見つけて、思わずキノコ談義になってしまったが、そのインタープリター氏も17時の定時で山を降り、 その後は広い草原に独りきりになった。
日が暮れると、草原を薄い霧が覆った。
テントは白樺林の外れに一本だけあったブナの木の袂に張ったが、夜の間、まるで小雨が降り続いているかのように、 木の枝から水滴が滴り落ちていた。
ブナの林は、森の貯水池と形容されるが、うっすらと掛かったガスを、その可愛らしい形の葉で捕らえ、 葉脈に沿って雫となった水を枝へ導き、それを根回りへと滴らす。それが、やわらかい土に染み込み、しっかりと張った根から吸い上げられる。
ブナの幹に耳を当てると、根が水を吸い上げる音が聴こえるが、そうして、空中を漂っている水分をたくみに集めて、 太い幹と枝に行き渡らせて蓄えるわけだ。もちろん、森に降り注いだ雨も、ブナの巨大な貯水力によって、膨大な量が蓄えられる。
ブナの森にいると、不思議に気分も落ち着くのは、そこに漲る潤いのせいなのかもしれない。
夜半、急に冷え込んできたので表に出てみると、ガスはいつの間にか晴れて、天の川もくっきりと見える満天の星空が広がっていた。
キャンプサイト脇のパーキングに仰向けに寝転んで空を見上げると、まるで天空がそのまま降ってくるような感覚に囚われる。 この時期にこんな天の川を見たのなんて、たぶん30年振りくらいだろう。
翌朝は、夜明けの寸前に目が覚めた。
草原には、低層に圧縮されたガスが漂い、ポツンポツンと立つブナが、まさに巨人のように見えた。そこに、 後光のように朝日が差し込んで、それは、とてもこの世の風景には思えなかった。
**カヤノ平を彩る山の幸。左下の白い優美な形の菌が、「死の天使」 ドクツルタケ**
**キャンプサイトの朝。たなびく霧の中にブナの立つ幻想的な風景。朝食を済ませ、 そのまま奥志賀林道を北へ、野沢を見下ろす峠は、すっかり秋の装いだった**
2007/09/17 カテゴリー: 01.アウトドアライフ, 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (2) | トラックバック (0)
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先週、台風9号が関東に上陸して本州を縦断していったその翌日、信州の木島平村にあるカヤノ平まで出かけた。
多摩川が危うく決壊というところまで増水し、西湘バイパスは道が崩壊していまだに復旧せず、高速も軒並み通行止めと、 各地で大きな被害をもたらした台風の直後で、途中の道が通行止めになっていることも予想したが、 信州の北部のほうは台風の目の北側に位置していたため、雨も風もさほどひどくはなく、山道を辿っても、木の梢すら落ちていなかった。
カヤノ平は、長野市の北東、志賀高原と野沢温泉のちょうど中間点に位置する高原で、標高1400mあまり、秘境秋山郷にも近く、 首都圏からはアプローチも長く、あまり観光客も入らない静かな高原。
この場所は、ぼくにとっては「エスケープ」の場所で、たまに、一人で静かに過ごしたいときに出かけていく。
長野道の信州中野ICを降りて、国道403号を北上、渋湯田中温泉への道を東に分けて、そのまましばらく進み、 県道から道標にしたがって清水平林道に入る。
つづら折れの林道を30分ほど、どんどん高度を上げていくと、ブナの巨木が迎えてくれる。その名も「大ブナ郷土の森」 と呼ばれるこの森は、日本一のブナ林とも称されている。
林道横に、森への入り口があり、そこから一歩踏み込むと、 まるで巨人の森の衛兵のような三叉に幹が分かれて天に伸び上がる大ブナが待ち受けている。
その大ブナのたもとには小さな社があって、お神酒が捧げられている。この「森の主」のような大ブナに挨拶して、森の中へ。
ちょうど霧がかかって幻想的な雰囲気の森は、他に人もおらず、 本来は人が立ち入ることのできない妖精たちの世界に迷い込んでしまったような錯覚を起こす。
この森の中には歩きやすいトレースがあって、ゆっくりと歩いて一時間あまり、様々な表情の巨木と対面することができる。
静謐な巨木の森は、都会で溜め込んだストレスをすっきりと吸い出してくれる。
2007/09/13 カテゴリー: 01.アウトドアライフ, 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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**9月3日に刊行された「まっぷる選書」の三冊。それぞれ、 普通のガイドブックには記載されない面白いエピソード満載で、 すぐにでもその場所に出かけたくなってしまう**
9月3日に刊行された「まっぷる選書」その第一弾ともなる三冊がとても面白い。
誰でもよく知っている観光地に秘められた悲惨な過去や逸話、日本全国で見られる珍しい自然現象、そして、 自然災害や戦災などで失われてしまった全国の都市や城の遺構。それらを実地に旅した歯切れのいいレポートが掲載されている。
東京都民のオアシスともいえる奥多摩の「おいらん淵」は、戦国時代に武田家が金山開発をしたところで、 そこで働く工夫を癒すために連れてこられた花魁たちが、秘密を守るために淵に渡された宴席ごと落とされたことでその名がついた。
北海道の原始の自然の象徴でもある野付半島には、じつはかつて漁師の集まる街があって、娼館が並んでいた。
一夜にして山崩れで埋まってしまった帰雲(かえりくも)城の黄金伝説。津波に飲まれた日本のポンペイ、「瓜生島」。
さらに蜃気楼が現れる原理や面白い虹、低緯度地帯で見られるオーロラ等々。
開いてみると、次から次へと面白いエピソードが出てきて飽きさせない。
普通のガイドブックには載せられていない、そんなエピソード満載のこのシリーズは、読み物としても面白いが、こいつを持って、 取材陣と同じようにその現場を訪ねてみたいという気にさせる。
私事になるが、ぼくはもう10年以上前から、聖地が直線上に連なったり、大地の上に星空を象るように聖地が配置される「レイライン」 というものを追っている。
GPSを片手に、聖地どうしの位置関係や聖地の中に配置された文物の位置関係を検証していくと、じつに興味深いものが見えてくる。
そのレイラインを検証するツアーなども行っているのだが、毎回、何人もの人が参加してくれる。
そろそろ、お仕着せの観光旅行も飽きて、自分なりのテーマを決めて旅をして、 その土地に秘められた様々なものを感じ取ってみたいと思う人が着実に増えている。
そんな人には、まさに打ってつけのシリーズだろう。
2007/09/05 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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先日、以前から気になっていた「インカ・マヤ・アステカ」展を覗いてきた。
アンデスの山やパタゴニアの平原に昔から憧れがあって、 いつかアウトドアフィールドとしての面白さをじっくりと開拓したいという思いと、その中南米の土地に息づいたインカ、マヤ、アステカ、 さらにはそれら以前の「源文明」ともいえるオルメカにも興味があった。
密林を開拓して大規模な都市国家を作ったり、4000mに迫る高地に都市を築き、そこへ向かって「インカ道」 と呼ばれる街道を開拓し、さらに自然のリズムを知るために、大規模なピラミッドを建て、そして、独特な「生け贄文化」を形作った……。
どうして、こんな山奥の地に文明が花開いたのか、そして、彼らはどんな暮らしをしていたのか、そんなことを想像しつつ、 ぼくがライフワークとして続けている「レイラインハンティング」の観点から見れば、 ナスカの地上絵とこれら文明の関係なども興味をひかれる部分だ。
今回の展示会は、今まで海外には搬出されなかった大型の石碑やミイラなどもあって、 その精緻な造形や想像力溢れるモチーフに釘付けとなってしまった。
サイクリングナビゲーターの丹羽さんがつい先日ペルーを訪ねて、マチュピチュ探訪のレポートなども載せられていたが、 そのときも南米探訪の気持ちを掻き立てられたが、今回はさらにその気持ちが強烈になった。
むこうが秋になる、4月くらいにでも訪ねてみようかと思う。
2007/09/03 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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毎年、夏には幾度かシーカヤックで海に出ているのだけれど、 昨年はバタバタと忙しくて、一度も出かける機会が持てなかった。
今年は、昨年の分も取り戻そうと、四国、若狭、そして西伊豆で漕いでみようと思っている。
まずは、いちばん手近なところだと、西伊豆ということになるが、ここは一昨年に始めて漕いでみて、 ツーリングではお馴染みだった風景が海から観るとまったく違うことに驚かされた。
関東のアウトフィッターにとってはホームグラウンドのこのあたりは、ツアーを組んでいるショップも多いので、 それに参加してみるのがお薦めだ。
ぼくは西伊豆でカフェを開いている知り合いが貸し出し用の艇を持っているので、そいつを借りて漕ぐことにしている。
昨日は、全国的に真夏日を記録して、東京も灼熱地獄だったが、こんな日こそ、海の上で涼しい風に吹かれて、 無人の浜に上陸してのんびりしたい。
さっそく、お盆が明けたら出かけてこようと思っている。
**しっかり装備をチェックして、いよいよエントリー。このあたりは、 天候さえ崩れなければ入江は波もほとんどなく、容易に漕ぎ出すことができる**
**シーカヤックは、リバーと違って、自由にラインを選べ、 自分の好きなところへ自分のペースで行けるのが魅力だ**
**無人の浜を見つけて上陸。ダブル艇だとたくさん荷物を詰めるので、キャンプ道具満載で、 オートキャンプ並みの豪華キャンプも楽しめる**
2007/08/11 カテゴリー: 01.アウトドアライフ, 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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シルクロードの旅から戻って、東京の湿度の高さに喘いでいたら、日本の自然を思い出させようかとでもいったように、台風の洗礼。
どうやら関東は避けて東の海上に遠ざかっているようだが、湿度0%の乾燥地帯とはまったく異なる湿潤気候の典型を感じさせられた。
タクラマカン砂漠では、親しい友人への土産と自分の思い出にと砂を採取してきた。均一な微粒子で、 このまま砂時計に使ったら良さそうにサラサラと流れる砂は、日本の海岸などでは見られないものだ。
これはちょうどタクラマカン砂漠を縦断する「砂漠公路」の真ん中、砂漠のど真ん中で採取したものだが、 黄色い砂とともに雲母の破片のような黒い粒とキラキラ輝く石英がかなりの割合で混ざっているのがわかる。
この砂漠の下には莫大な石油が眠っていて、今、盛んにそれを採掘しているわけだが、この砂を眺めていると、 この死を連想させるモノトーンの世界が、鉱物的には豊かな土地であることを実感させてくれる。
2007/07/14 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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**孫悟空が芭蕉扇を奪う、
西遊記のクライマックスシーン。その舞台が、ここ火炎山**
砂漠公路を抜けた後、トルファンに泊まって、火炎山を訪ねた。
ここは、20年前にも訪れて、オフロードバイクで走り回ったところだが、今は観光地として整備されて、 むやみに立ち入ることはできない。もっとも、地元のガイドによれば、裏側から回り込めば、この山の頂上に出られるとのことだが。
鉄分の多い土質のこの山は、侵食された跡が火炎が立ち上るように見えるので、この名がつけられたが、 何よりも西遊記のクライマックスの舞台として知られ、中国国内はもとより海外のビジターに人気がある。
20年前は、もっと土の色が赤く、今よりずっと「火炎」の雰囲気が強かった。今は、砂嵐が多く、表面に砂漠の砂がついて、 下地の赤が消えてしまっているのだという。たまたま最近、砂嵐があったのかと思ったが、そうではなく、年間を通して頻度が高くなっていて、 一年に数度だけ、雨が降って砂が流されたときだけ下地が見えるのだという。
タクラマカン砂漠の際にあって、そんな話を聞くと、砂丘は美しいけれど、「砂漠化」が進行している現実を突きつけられた気がする。
**この日、
火炎山の気温は50℃を突破。今はオフロードバイクで走り回るといったことはできないが、
ラクダに乗っての周遊は可能**
**トルファン郊外にある交河故城。
20年前、この古代都市の中を歩き回っていると、路地裏から子供でも飛び出してきそうな白昼夢に襲われたが、
今は木道が整備されて自由に歩き回ることはできなくなった。ユネスコの世界遺産への登録申請を行っている**
2007/07/07 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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**「そこに一度入ったら、
二度と出てこられないという意味の「タクラマカン砂漠」。この砂だけのピュアな世界が、刺激を与えてくれる**
ウルムチを出発してから一週間、天山山脈を越えて、タクラマカン砂漠の北縁を西へ向かって、さらにその縁を南へ。
タクラマカン砂漠の南を通る「西域南道」の中心都市であるホータンにまで達した後、 キャラバンはタクラマカン砂漠の中心部を縦断する「砂漠公路」に入った。
この道は南のホータンと北の輪台(ルンタイ)を結ぶ850kmあまりの道のりのうち、550kmを占め、 そのうちの400kmが延々と砂丘が続く風景の中を行く。
ホータンを出発してから100kmあまりは、崑崙山脈とタクラマカン砂漠に挟まれた比較的水もある場所で、 土漠と草原が交互に現れる光景が続くが、進路を北にとってしばらくすると、道の両側に乾燥に強い胡楊の林が続くようになり、さらに、 その胡楊の枯れた荒涼とした風景から、砂丘地帯へと移り変わっていく。
実際に訪れる前は、道の両側は見渡す限りの砂丘が続いているものと思っていたが、 イスラエルから技術供与を受けたというパイプを使った感慨施設によって、丈の低いタマリスクの防砂林が何列も続いていく。
だが、車を止めて、防砂林を越えてみると、そこには、砂のモノトーンの世界が果てしなく続いている。
昔、同じように砂漠を渡っていく車中で、地元のガイドに、「海を見たことがあるか」と尋ねたこがある。
彼は、「教科書で習ったけど、見たことはありません」と答えた。
ぼくが、「この砂全部が水なんだよ」と説明すると、「そんなことはありえない」と、彼は高笑いした。
逆に、砂漠に馴染みのない我々にとっては、海の水がすべて砂の世界といっても、イメージがピンとこないだろう。だが、 この砂丘の連続は、まさに太平洋のような広がりを持って、砂の波頭が続いているのだ。
砂と空以外に何ものもないシンプルな風景の中に置かれてみると、地球の自然の不思議と同時に、 生命とは何だろうという根源的な疑問がわきあがってくる。
この砂の海の中では、もちろんそれに適応した生物もいるが、人間が着の身着のままで放り出されたら、数日で命を亡くしてしまう。 圧倒的に無慈悲ともいえるこの景色の中に佇むと、このまま、自分も砂屑になって、 風に飛ばされていったら気持ちいいだろうなという気にさせられる。
タクラマカンとは、地元の言葉で「一度そこに踏み込んだら、二度と抜け出すことはできない」という意味。
古代、この砂一色の世界に身を投じていった先人たちの想いが、この風景を前にすると、リアリティを持って感じられる。
**イスラエルの技術供与によってできたグリーンベルトが、
タリム油田開発の拠点を結ぶ「砂漠公路」に伸びる**
**砂漠の周縁部には、
胡楊の枯林が広がる。胡楊は、立って1000年、枯れて1000年、 倒れて1000年と言われる。実際には、
朽ち果てるまで400年くらいだといわれる**
2007/07/06 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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30日早朝にアクスの街を出発したコンボイは、そのまま天山南路のメインルートを進むのではなく、途中から北に折れて、 天山山脈の南端をかすめ、キルギス共和国との国境地帯へと向かった。
造山活動の跡が褶曲した地層として残り、生々しい地球活動を感じさせる山の間をどんどん高度を上げていく。それにつれて、 気温も下がり、風が気持ちよくなっていく。
アグチ(阿合奇)の町は、雪山を間近に仰ぐ標高1600mの高原地帯にある。ここは、キルギス族の町で、 特別にしつらえられたユルト(彼らの遊牧時の移動式住居)で昼食の歓待を受けた。
その後、キルギス共和国との国境近くの山岳地帯を下って、再びテン間南路のメインルートに合流。アトシュの町に入った。
今回、我々のバスのスルーガイドを務める黄さんは、アトシュの山岳地帯の出身で、先のアグチの町へ向かう途中に、 自分の故郷を案内しながら、子供の頃の話をはじめた。
彼の生まれ育った村は貧しく、彼は子供の頃、靴を履いたことがなかったという。「だから、ぼくの足は、 こんなに大きくなってしまったんです」と、笑いながら語っていた彼だが、その目から、大粒の涙がこぼれだし、すすり泣きしながら、 片道30kmの道を歩いて小学校に通ったことや、神民族ながらウイグル族の学校に2年間通ったこと(普通、 漢民族は少数民族系の学校には通わない)、彼の村からウルムチの大学に入った第一号となったことなど……快活で、素直で、 そして勉強熱心な彼が、そんな苦労をしてきたことに、バスのみんなは絆されてしまった。
「がんばったねぇ、これからも、がんばれよ!!」
自分も涙を浮かべながら、シャーさんがそう叫けぶと、日本人も台湾人も、香港人も、そしてウイグル人も、みんな一斉に、 「がんばれー!!」の唱和が起こった。
黄さんは、現代の都会に生きるぼくたちが忘れてしまった、とても大切なことを思い起こさせてくれた。
2007/07/03 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (1) | トラックバック (0)
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昨日は、早朝にクチャを立って、キジル千仏洞、天山神木園などに立ち寄って、アクスの町に深夜に到着した。
連日、12時間を軽く越える行動で、さすがに疲れがたまってきているが、様々な表情を見せてくれる自然が、 そんな疲れも一気に吹き飛ばしてくれる。
天山神木園に向かう途中で、懐かしい山容が姿を現した。天山山脈最高峰の「トムル峰(7435m)」。20年前、 この山の麓でキャンプをした。幻の花といわれる雪蓮が咲き、これも幻の動物といわれる雪豹が生息するといわれる秘境。
20年前、そのピークを目の前にして、いつか必ず頂上に立つと決めたが、なかなか実現できずに長い年月が流れてしまった。でも、 またこうして対面できたということは、この山にぼくは呼ばれているということだろう。
今度は、この山に登るために再訪しよう。
バスの中では昨日の記事で紹介した「コックス& キングスパキスタン」社長のシャーさんと、天山を間近に拝んだことをきっかけに、山の話で盛り上がった。
「5月と10月がね、フンザから見るカラコルムが最高なんですよ。ベースキャンプ近くのホテルからだと、ベッドに入ったまま、 目の前に7000m峰がたくさん見えますよ。この時期は、空の色も最高で、天国にいるみたい。ぜひ、いらしてください」
フンザは、新疆のカシュガルからカラコルムハイウェイを越えて、パキスタン側に入った高原にある街。20年前には、 中国とパキスタンの国境となるクンジュラブ峠まで入って、その先は想像するしかなかったが、今は、 ここも自由に行き来できるようになっている。
10月のフンザ行き、シャーさんと会って、こんな話をするのもご縁だから、ぜひ実現させたいと思う。
**荒野の中を行くコンボイ。
この風景の中に突然現れたホテルは「中国石油」関係者のためのもの。時々、石油の掘削精製施設が現れる。タイム油田開発によって、
新疆経済は一変した。現在は、上海まで伸びるパイプラインが建設中で、これが完成すれば、より一層、
開発に弾みがつくだろう**
**左:夕暮れ迫るタリム盆地に向かって、天山から下っていく。
右:砂漠の中に忽然と現れるアクスの街。西部開発の西の拠点となっている**
2007/06/30 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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**20年前に、
初めてシルクロードに同行したときに写真の取り方から歴史のレクチャーまで、4何から何までお世話になった石嘉福氏。今回、
20年ぶりにシルクロードの旅が実現できたのも、4石氏のおかげだ**
28日は、クチャ滞在二日目。今朝は、朝から歓迎のセレモニーがあり。クチャの目抜き通りを封鎖して、 両側で多彩な少数民族が踊りを披露する中を、ぼくたちが行進するという「逆パレード」状態(笑)。
ひな壇に座らせられて、目の前を通り過ぎるパレードを見送るよりは退屈せずに済んだのはありがたかったが、こうした公式訪問では、 自由気ままに動き回れずに、スケジュールがびっしり決められてしまっているのが厳しい。
午後は、仏教遺跡として名高い「スバシ古 城」へ。ここは、玄奘三蔵も足跡を残した古い仏教都市遺跡で、 川(ふだんは水がなく、広大な河川敷様になっているが)を挟んで、東西に特徴的な仏塔が残る都市遺跡がある。
日干し煉瓦を積んで、その上にさらに泥を塗り固めた建物は、半ば朽ち果てて、往時を偲ばせる痕跡はほとんどないが、 天山山脈の前衛の乾いた山を背にして、眼下には地平線まで平坦な灼熱のゴビが続く風景の中で、人が生活を営んだ痕跡が残っている、 そのことだけで奇跡のように思える。
シルクロード沿いには、こうした仏教遺跡が多く残るが、中には、まだきちんとした調査をされず、人知れず眠っている遺跡もあって、 そこには、極彩色の壁画なども現存しているという。
それは、車が入れる場所から徒歩で何時間も、あるいは何日もかかる場所にあるという。 いずれ、 タクラマカン砂漠を舞台に、ラクダのキャラバンを組みたいと思っているが、そんな歴史探検の要素も交えれば、面白いものになりそうだ…… 歴史的に価値の高い文物だから、それを荒らさない工夫や、逆にそうした埋もれた文物に目を向かせて、 保存運動に結びつけるといった社会的な目的も持って行う必要があるとは思うが。
スバシ古城の後に、同じようなロケーションの場所にある漢代の狼煙台を見学する。 さえぎるものの何もない場所で太陽に焼かれていると、カメラなどすぐに触っていられないほどに熱を帯びてしまうが、 木陰に入るといきなり涼しくなって、快適に過ごすことができる。
ちょうど関東は梅雨の真っ只中でさぞかし蒸し暑いと思うが、あの暑さを思うと、乾燥地帯のここのほうが、 まだ過ごしやすいのかとも思ってしまう。
炎熱の砂漠の中の遺跡からクチャの市内に戻り、今度は、バザールやかつての王宮を訪ねる。
**クチャのウイグル族バザール。
ちょうど、フルーツの季節で、スイカや瓜などがたくさん並ぶ。クチャの特産は白いアンズで、とても甘い**
**フルーツの季節は花の季節でもある。
左は、旧王宮の中庭。クチャに伝わるキジ楽は、雅楽の原型ともいわれるもので、ちょっとした催しでは、
かならず奏でられる**
ところで、今回は多国籍な取材者ということで、各国語の通訳がスルーガイドについたバスで移動している。
ぼくが乗っているバスは、日本語のできるメンバーと香港からのメンバーの乗り合いだが、ウルムチからずっと一緒の四人は、 すっかりこの旅で仲良くなって、和気藹々と楽しんでいる。
今回、ぼくがこの旅に参加できるように手配してくれたのは、20年前にやはりこの同じ新疆を一緒に旅して、 まだ駆け出しだったぼくに取材のイロハを教えてくださった写真家の石嘉福氏。 20年前のNHKシルクロードシリーズが始まる前からこの地方に分け入り、シルクロードシリーズでもコーディネーターを務めた大ベテラン。 その石氏ももちろん、同じバスに乗っている。
それから、パキスタンで「コックス& キングスパキスタン」という旅行会社を経営しているシャー氏と、統括マネージャーの白井さん。シャー氏は京都に留学した後、 京都が気に入って、日本での自宅も持って御子息も京都の学校に通わせているという日本通。白井さんは、 クラブツーリズムの企画などを国内の旅行会社でされて、その後、シャーさんの片腕となって活躍している。
シャーさんは、山もベテランで、日本山岳会の京都支部にも所属しいる。また、パラグライダーが趣味で、 カラコルムの空を飛ぶのが夢だという。
コックス&キングス パキスタンでは、 カラコルムハイウェイを辿るバイクツアーなども企画しているとのこと。雄大な中央アジアの自然を舞台に、 いろいろなアクティビティを実現できる、頼もしいパートナーとなってくれそうだ。
**「コックス&キングスパキスタン」
の社長・シャーさんと、統括マネージャーの白井さん。様々な話で盛り上がれる仲間がいると、俄然、
旅が楽しくなる**
**今回、
我々のバスのスルーガイドを務めてくれているヌルビアさん。ヌルは光、ビアは輝くの意味。その名の通り、明るい、
カシュガル出身のお嬢さん**
2007/06/29 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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**今回のフェスティバルの会場となるクチャに到着。
とりあえずクチャ飯店にて昼食**
天山山脈、タクラマカン砂漠、コンロン山脈、パミール高原を抱え、 シルクロードの核心部として名高い新疆ウイグル自治区で開催される「第四回新疆国際旅行祭」に招かれて、現在、 クチャという町に滞在している。
25日の早朝に成田を出て、ソウルでトランジット、北京に午後に到着し、フライトの遅れなどがあって、 新疆の首府であるウルムチに26日の2時(現地時間=日本-1時間)に到着。
少し仮眠した後、ウルムチを8時に出発して、マイクロバスに揺られること12時間、タクラマカン砂漠の北縁にあるクチャに到着した。
20年前にここを訪れたときは、北京からウルムチへ飛ぶ便が週に二便しかなく、新疆入りするまでに一週間近くかかったから、朝、 成田を出て、その日のうちにウルムチにつけるというのは、まさに夢のようだ(強行軍でかなりグロッキー気味だが=笑)。
今回の国際旅行祭は中国内外から旅行関係者、ジャーナリストなどが200名近く集まる予定で、 マイクロバス20台あまりに分乗して大コンボイで移動する。
今日の午後にクチャに集合して、正式にフェスティバルが開会するわけだが、ぼくたちは先行して、 ウルムチからその取材車両に乗り込んで移動した。
ウルムチは天山山脈の北側、ステップ地帯にある。早朝出発して、天山山脈を越え、タクラマカン砂漠の北縁に出て、西へと移動。 新疆の古都、クチャに到着した。
かつては、このクチャに着くまでに懸崖に挟まれた狭路を4輪駆動のクルマで激しく揺られながら何日もかかって着いたのだが、今では、 途中の新疆第二の都市、コルラまでハイウェイが通り、ハイスピードで結ぶことが可能となった。
新疆は改革開放政策の「西部大開発」を旗印に大発展を遂げ、ウルムチやコルラは、見違えるような大都市となった。 クチャも日本で言えば「小京都」といったような趣のこじんまりしたオアシスだったものが、近隣の油田開発などを背景に、 大都市に変貌している。
20年ぶりに訪れたぼくは、新疆の変貌振りにやや戸惑いながら、でも、民族衣装姿の人が行きかう通りや、街道を行くロバ車、そして、 何より、日本では味わえないダイナミックな自然に懐かしさを感じている。
これから、ネット環境があるところから、このフェスティバルの模様を随時お伝えしていくので、どうぞお楽しみに。
**新疆の首府ウルムチ。
「離海最遠的城市」、海から最も遠い町とも呼ばれる、ユーラシア大陸ど真ん中にある都市**
**市内からハイウェイに乗って南下する。
かつての難所であった天山越えもあっという間**
**タクラマカン砂漠北縁に出る。
このルートは「天山南路」。かつて玄奘三蔵も辿ったルートだ**
2007/06/27 カテゴリー: 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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