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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.283
2024年4月4日号
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◆今回の内容
○聖地と意識と最新科学
・認知機能による思いこみ
・意識と量子コンピュータ
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聖地と意識と最新科学
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聖地と人との関係について調べていくと、どうしても人の脳が世界をどのように認知しているかを考える必要が出てきます。それは、聖地とされる場所が、人に「聖地」として認知されるからこそ聖地になるからです。どうしてそこを「聖地」として認知したのか、その外在的な原因とともに、人間の認知機構がどのような仕組みになっているかということも課題として立ち現れてくるわけです。
人が特定の場所を聖地として認知する外在的な原因としては、その場が地質的な影響によって、電磁波や自然放射線が強く、脳に直接影響を与える可能性があったり、あるいは歴史的に重要な出来事のあった場所で、そこに立つと、歴史のその場面が蘇って敬虔な気持ちを呼び起こす場所であるといったことがあげられます。
しかし、そういうファクターが人の認知に作用する強さや、認知そのものの内容は、当然、人によって異なります。それは、受容体としての人の脳が個々で感受性が違ったり、あるいはそれぞれの人の体験や知識の違いによって、受け止め方が違うからです。
それぞれの認知は主観的なものなので、共通の認知体験となるのは稀なのではないかと思います。誰にとってもまったく同じ意味合いと性格の認知体験をもたらす聖地がないのであれば、聖地の普遍性や客観性というのは幻想ではないか。そのように思ったのが、私が人の認知機構に関心をいだいたきっかけでもありました。
振り返ってみると、私がGPSを使ってフィールドワークして、データをデジタルマップにダウンロードして分析し、さらには地質学的な数値データと聖地の立地などの因果関係を考えてきたのは、そうした主観的な認知作用に囚われず、客観的にその聖地がどのような場所であるのかを知りたいという欲求に根ざしたものでした。
日本で聖地といえば神社仏閣や遺跡が多いわけですが、近年の神社ブームにのって神社巡りをしている人の中には、私におすすめの神社を聞いてきたり、何か具体的なご利益が得られる神社を教えてほしいという人が多くいます。お門違いというと申し訳ないのですが、そういったことは私の興味対象ではないので、「主観的」にご利益だの神話をそのまま敷衍した歴史などを主張している人に聞いたほうがいいですよと返事をします。
しかし、そういうことが重なってくると、さすがにこちらも消耗してくるわけで、時々、原点を見直すために、科学的なエポックを渉猟したくなります。この二年ほどは、ChatGPTにはじまった生成AI革命のおかげで、海外を含めた様々な論文に触れて、聖地を巡る様々な研究もそれらを活用してできるようになり、聖地の構造分析も容易かつ精細にできるようになりました。
それだけでなく、世間一般に「脳科学」といわれる脳生理学も様々なセンサーを使った研究で飛躍的に発展していて、「認知」の問題についても、そのメカニズムがかなり詳細に解き明かされつつあります。また、AIと並んで時代のトレンドともなっている量子コンピューティングでも、実用化の目処がついてきて、それが切り開く未来のビジョンがだんだんはっきりしてきています。
私の聖地研究もそうした時代のトレンドを吸収して、より明確で具体的な「聖地像」のようなものを今後形作っていけそうな気がしています。というわけで、まず冒頭にあげた「認知」の問題から、今回の論考をはじめたいと思います。
●認知機能による思いこみ●
「巫女体質」とか「霊媒体質」という言葉がありますが、なにか常人には見えないものが見えたり、あるいは声が聴こえたりというのは、脳生理学的な見地からいえば、何かの刺激に対して、脳の神経伝達回路が異常反応を起こし、いわゆる幻覚や幻聴が引き起こされやすい状態にある人といえます。
ノーマルな感覚では、視覚や聴覚に対する刺激が感覚器官から脳に伝えられて、それが特定の部位にある受容体への電気信号となり、ニューロンが「発火して」シナプスを伝達し、それが具体的な物を見たり聴いたりという「感覚」として知覚されるというプロセスを辿ります。
ところが、そうしたノーマルな伝達経路を辿らずにいきなり受容体が反応を起こして「感覚」を呼び起こしてしまう。てんかんや統合失調症などの精神疾患は、脳がそうした反応を示しているわけです。だから、他の人には見えたり聴こえたりしていないものが、当人にとってはリアルな現実として知覚され、周囲から見ると異常に映るわけです。精神疾患でなくとも、脳の受容体の感受性が敏感であれば、「巫女体質」のや「霊媒体質」として人には映るでしょう。
脳はもともと繊細な電子回路として機能して認知や感覚を生み出しているますから、直接、脳に電気刺激が加わると、だれでも幻覚や幻聴を知覚します。それを人工的に引き起こす装置が、すでに19世紀後半には実用化されていました。
心理学者のジャック・アルセーヌ・ダルソンバール(1851~1940)やシルヴァヌス・トンプソン(1851~1916)が完成させたのがはじめで、これは、二つの巨大な電磁石を間隔を開けて設置して、被験者がその磁石の間に頭を挟み込むという、一見するとフランケンシュタイン博士の怪しげな装置のようでした。これが、今のTMS(経頭蓋磁気刺激・Transcranial Magnetic Stimulation)につながる最初のものでした。
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