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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.280
2024年2月15日号
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◆今回の内容
○天災と日本精神・文化
・夢うつつのうつつ
・「木組み」の世界観
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天災と日本精神・文化
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日本文化の根底には、「儚さ」や「無常観」の思想があるといわれます。「形あるものはいずれ壊れる」「盛者必衰」そして「色即是空空即是色」。それらは、究極的な諦念に繋がっていますが、その諦念は虚無感へつながるものではなく、いったん「どうしようもない」と諦めた後に、じわじわと復活をはたしていきます。そして、また無常や無情に出会い、いったんは諦めるけれど、再び立ち上がってくる……。
そうした日本独特の「儚さ」や「無常観」の感覚がどうして生まれたのか。それは、災害の時代を迎えた今だからこそ、よく分かるような気がします。1995年の阪神淡路大震災にはじまり、中越地震、東日本大震災、熊本地震、そして能登地震と、この20年で大地震に立て続けに襲われ、前の地震の復興がままならない中でも、みんなが、なんとか立ち上がろうとしています。
地震だけでなく、火山噴火や台風災害も頻繁に起こり、さらに洪水や大雪……日本は災害大国であるということを見せつけられるような20年でした。日本史を振り返ると、そうした大災害が頻繁に起こりことが当たり前で、災害による飢饉や政情不安などをなんとか乗り越えて生きながらえてきたのが日本という国の特徴だともいえます。
私は1961年の生まれで、子供のころは、まだ戦争の傷痕や記憶が残ってはいたものの、高度経済成長の波がそうしたものを押し流し、上向き景気がずっと続いた時代に成長しました。さらにバブル景気、そのバブルが弾けて経済の低迷へ向かっていくわけですが、戦争にも大きな災害にも遭わずに青春時代を終え、楽観主義が心を支配していたような半生を過ごしてきました。
ところが、日本の栄華は萎んで景気は長い低迷に入り、そして災害の時代に突入してみると、自分が過ごした半生が、歴史的に見れば稀有な時代であったことに気づかされました。今、政権の中枢を担っているのは、平和で好景気の日本で生まれ育ってきた同じような世代の人たちばかりです。彼らが突発事態に見舞われたときにどうしていいか分からず、初動で失敗して遺恨を残してきたことも、危機感の薄い同年代として理解できるところがあります。
しかし、漫然と生きていればいい時代は過ぎ去り、災害が日常である時代に突入した今、過去の同じような時代にあって、どうやって日本人は立ち上がり続けてきたのか、諦念や無常観に心が打ち負かされるのではなく、それを芸術や文化に昇華することができたのかということに目を向けることで、生きていく知恵と心構えを持てるのではないかと思うのです。
災害と聖地との関係は、過去に何度か取り上げましたので、興味を持たれたらバックナンバーを紐解いてみてください。今回はとくに災害が常態である日本だからこそ、どのような精神や文化が生み出されてきたのかに焦点を絞って掘り下げてみたいと思います。
●夢うつつのうつつ
町や村、集落の境界には、道祖神や庚申塔、地蔵などが残っていますが、これらは疫病が流行ったときに境界を越えて入ってこないように、そこに結界を張るという意図が込められていました。
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