辺津宮の隣りにある弁天堂。辺津宮-弁天堂は二至のラインに配置されている
冬至の日出の方向に面する奥津宮。この下に役小角の岩屋があり、この社は、はじめは
その御旅所だった。古い様式をそのまま残しているのだろう
今年の春分の日は、南岸低気圧のために関東でも広い範囲で雪になった。
ちょうどこの日、江ノ島でお彼岸の中日の太陽を追いながら、江ノ島の聖地性を様々な角度から考えるワークショップ開催した。まさか湘南の江ノ島は雪にはならないだろうと高をくくっていたら見事に裏切られ、横殴りの雪に白く染まった江ノ島という、滅多に見られないシチュエーションになった。
さすがに、この天気ではドタキャンの人が多いだろうと予測していたが、なんと15人もの人が予定通り集まった。本来の目的であった太陽を追うことはできなかったが、ガラ空きの江ノ島で、桜と雪という珍しい風情をゆっくり楽しむことができ、休憩時間には他のお客さんに気兼ねなくレストランのスペースを独占して、じっくりとレクチャーができたので、参加してくれた人たちの満足度も高いワークショップとなった。
江ノ島は宗像三女神を祀った江島神社と弁天様で有名だが、もともと修験道の道場として開かれ、役小角、泰澄、空海がここで修行したと伝えられている。
二つのピークを持つ江ノ島は、その東側のピークには縄文遺跡が残り、西の海岸にある岩屋は役小角が修行して、修験道場として開いたという伝説が残る。
古代から聖地とされ、古代から中世にかけては、海人族が信仰する宗像三女神が一神ずつ時を追いながら祀られていった。さらに江戸時代には弁天信仰が盛んとなって、江ノ島参りで賑わうようになる。
今回のワークショップでは、江島神社を構成する辺津宮、中津宮、奥津宮と対岸にある龍口寺を巡った。予定では対岸の片瀬山にある上諏訪・下諏訪神社も巡る予定だったが、これは悪天候のためにカットした。
江ノ島内にある三つの社は、辺津宮と中津宮が東を向き、奥津宮は冬至の日出の方向を向いている。また辺津宮から中津宮に向かう参道と中津宮から奥津宮へ向かう参道も冬至の日の出と夏至の日の入を結ぶ二至のラインに沿っている。これは、古代からの太陽信仰と、それを受け継いだ修験の信仰の痕跡を留めるものだろう。
江ノ島に弁天が安置されたのは、ここに残る伝説に由来する。かつて、この地方では五つの頭を持つ龍が暴れていたが、その龍が江ノ島に舞い降りた天女に一目惚れし、その天女に戒められて悪さをやめて落ち着いたと伝えている。その天女が弁天に姿を変えて安置された。
龍の方は、江ノ島の対岸に長い尾根を連ねる片瀬山のことだろう。片瀬山にある下諏訪・上諏訪神社は江島神社の摂社とされるが、ともに社殿が江島神社の辺津宮を真っ直ぐ見ている。辺津宮の隣には弁天堂があるので、それを見ているともいえる。
片瀬山の麓、江ノ電江ノ島駅の近くにある龍口寺は、日蓮の法難の場所に建てられたもの。日蓮は、鎌倉幕府に政治的な建白をして、これが幕府の逆鱗に触れ、刑場だったこの場所に引き立てられ、ここで処刑されそうになる。刑吏がまさに日蓮の首を刎ねようとしたそのとき、江ノ島のほうから光る珠が飛んできて、刑吏の眼の前で弾けた。これに驚いた刑吏は刀を捨てて遁走したのだという。
龍口寺の横には龍口明神の旧地がある。今はもっと山のほうの腰越に移れているが、片瀬山から伸びる幾筋かの尾根が、ちょうどここで終端となり、それが龍の口を思わせる形なので、江ノ島伝説に登場する龍の口に当たると考えたのだろう。龍口寺で処刑されそうになった日蓮のところに光の珠が飛んできたという話は、龍が宝珠を咥えた姿をイメージさせる。また、この話は、各地に伝わる「龍燈」の伝説も連想させる。
秋分の日は、あらためて江ノ島を訪ね、一日、太陽を追いかけてみたい。
【講座案内】
●朝日カルチャーセンター湘南教室 2018年4月21日
「シリーズ・神奈川の聖地を巡る vol.1 『大山と寒川神社』」
江戸時代、伊勢参りとともに人気を博した「大山詣り」。なぜ大山に人々は関心を寄せたのでしょう。大山をご神体山とする阿夫利神社は「阿夫利=雨降り」の名が示すとおり、雨乞いの聖地として太古から信仰を集めてきました。さらに大山と寒川神社は夏至と冬至の太陽のラインで結ばれています。遠く讃岐国に、「寒川(さんがわ)郡」という地名が現れ、ここには大山の天狗が祀られています。それらが何を意味するのか、方位という観点から読み解いていきます。
◯お問い合わせ・お申込みは下記へ
https://www.asahiculture.jp/shonan/course/bf5383b2-e2f5-7c63-75a8-5a66b3e2b279
●朝日カルチャーセンター湘南教室 2018年4月21日
「シリーズ・神奈川の聖地を巡る vol.2 『江ノ島』」
江ノ島も大山と並び、相模を代表する巡礼地でした。島の中に「辺津宮」「中津宮」「奥津宮」の三つの社殿を持って宗像三女神を祀り、さらに弁天を配し、「女神の島」ともいえる江ノ島は、海を挟んだ陸側にある社寺とも意味のある方位で繋がっています。辺津宮を真っ直ぐ見つめる諏訪神社、江ノ島から飛び出した光が日蓮の受難を救った伝説が残る龍口寺…、それらはいったい何を意味しているのか。
江ノ島とその周辺のポイントも紹介しながら読み解いていきます。
◯お問い合わせ・お申込みは下記へ
https://www.asahiculture.jp/shonan/course/e48b6bdf-1795-e500-41af-5a6c36fef3a7
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