上は、磁気偏角を補正していない状態のコンパスアプリ。下は補正後のアプリが指す真北
登山やオリエンテーリングのナビゲーション(地図読み)の経験のある人にとっては、当たり前の知識なのだが、コンパスの針は真北を指さないということを知らずにコンパスを使っている人が多い。
これは、地軸の中心である北極と地球磁場のN極の位置が異なるためで、ふつうのコンパスは、地球磁気のN極を指すのでズレが生じることになる。地球磁場のN極は磁北と呼ぶ。現在の磁北の極点はカナダの北(北緯:78°、西経98°)のあたりにある。
磁北に近づけば近づくほど、北極点との誤差は大きくなり、北米のあたりでは40°あまりにもなる。日本でも東京付近では7°のズレがあり、北海道の札幌では10°のズレとなる。これを磁気偏角という。日常的には、日本での磁気偏角はあまり気にならないかもしれないが、登山やオリエンテーリングでは仮に7°の磁気偏角を無視すると、目標地点にたどり着けないばかりか、遭難にも繋がってしまう。
レイラインハンティングでは、様々な位置情報のデバイスやアプリを使うが、もっとも重要なのはコンパスで、これがズレていると、すべてのデータが狂ってしまう。今は、スマホのコンパスアプリを使うが、これもほとんどのものはアナログな磁針のコンパスと同じく、デフォルトでは磁北を指す設定になっているため、そのままでは磁気偏角分のズレが出てしまう。そこで、コンパスアプリを使用する際には、真北を指す設定に変更しなければならない。真北設定になっていれば、コンパスの指し示す北は真北に一致するので、方位角のデータをそのまま使うことができる。
風水師が使う「風水盤(羅盤)」も、真ん中に磁針が嵌めてあって、周囲に刻まれた八卦や二十四方位、二十八宿などのとても精密な方位指標を使って方位を決めていく。風水を読み解く際にも、やはり磁気偏角の補正が欠かせない。風水盤は非常に精密であるがために、そのまま補正をしなければ、まるで見当外れな指標を読むことになってしまう。
風水盤を用いるときは、はじめに風水盤を南の方向に向けて、南天の太陽に南を合わせ、盤を回転させて、磁針とのズレ(磁気偏角)を基準線よって補正して、正確に方位が読み取れるようにする。あるいは、北極星を真北の基準として、磁気偏角を補正して用いる。
風水が、そのように地球物理的な現象を理解した上で用いられていたことを考えると、あながち「迷信」として片付けるわけにはいかないのではないかとも思えてくる。
上は補正前の風水盤。下は補正後。東京だと十二支で一つズレてしまう
左は陰陽師が南北東西を正確に割り出して条里が形作られた京都=平安京。
右は磁北に合わせて整備された札幌の市街。札幌市は磁気偏角そのままに10°あまり西偏している
【講座案内】
●朝日カルチャーセンター湘南教室 2018年4月21日
「シリーズ・神奈川の聖地を巡る vol.1 『大山と寒川神社』」
江戸時代、伊勢参りとともに人気を博した「大山詣り」。なぜ大山に人々は関心を寄せたのでしょう。大山をご神体山とする阿夫利神社は「阿夫利=雨降り」の名が示すとおり、雨乞いの聖地として太古から信仰を集めてきました。さらに大山と寒川神社は夏至と冬至の太陽のラインで結ばれています。遠く讃岐国に、「寒川(さんがわ)郡」という地名が現れ、ここには大山の天狗が祀られています。それらが何を意味するのか、方位という観点から読み解いていきます。
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●朝日カルチャーセンター湘南教室 2018年4月21日
「シリーズ・神奈川の聖地を巡る vol.2 『江ノ島』」
江ノ島も大山と並び、相模を代表する巡礼地でした。島の中に「辺津宮」「中津宮」「奥津宮」の三つの社殿を持って宗像三女神を祀り、さらに弁天を配し、「女神の島」ともいえる江ノ島は、海を挟んだ陸側にある社寺とも意味のある方位で繋がっています。辺津宮を真っ直ぐ見つめる諏訪神社、江ノ島から飛び出した光が日蓮の受難を救った伝説が残る龍口寺…、それらはいったい何を意味しているのか。
江ノ島とその周辺のポイントも紹介しながら読み解いていきます。
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