今、東京、六本木のミッドタウンで、「川ガキたちのいるところ野外写真展」が開催されている。
写真家の村山嘉昭氏が主に中部から西日本を巡って、夏の間、清流で遊ぶ地元の子供たちの姿をおさめたもの。 印画紙ではなく耐水処理された布に印刷された無邪気な川ガキたちが、都心のビルの谷間の小さな緑と水の広場で、 底抜けの笑顔を振りまいている。
この写真展は、Think the Earthが企画した、水の惑星地球を考えるイベント「ウォータープラネット」 の一環として開かれているもので、昨日は、村山嘉昭氏のトークショーも開かれ、それに参加してきた。
Think the Earthでは、「マイボトル」を持って出かければ、 提携の給水ポイントでミネラルウォーターが補給できる活動を続けていて、そのポイントも増えている。
他にも、「水の惑星」といわれる地球でも、じつは人が口にできる水は極端に少なく、 衛生的な水が飲めずに命を落としていく子供たちもたくさんいる。そういったことを、 様々なイベントやメディアでの活動を通じてみんなに理解してもらい、水を大切に使う「チェンジウォーター=水をえらぶくらし」 の普及活動を続けている。
毎年の「ツーリングマップル中部北陸」の取材では、名水の誉れ高い郡上八幡やその支流の目の覚めるような清流板取川などを巡って、 ぼくも高い端の上から川に飛び込む「川ガキ」たちと話をしたりしているけれど、ちょうどそんな馴染みの場所の写真とともに、 楽しいエピソードを聞かせてもらって、とても楽しい時間を過ごせた。
このところ、地球温暖化を如実に示すような豪雨に見舞われているが、どうしても、既成概念として、「環境は破壊されつつある」 とぼくたちは思い込んでいる。ところが、村山さんは、九州のとある清流で、地元の老人と話をしていて、「昔と比べて、別に、 この川は変わっとらんよ」と言われ、その川の美しさ以上に感動したという。
でも、じつは、その川を管理しているその老人が、区長として、その場所をいつも気を配ってメンテナンスしているからこそ、 その素晴らしい環境が守られていることを知る。
太い孟宗竹を切って、いざというときの浮き輪代わりにしてもらおうと、子供たちが泳ぐ場所に設置する。その竹を 「目立つようにオレンジに塗れば」と村山氏が言うと、「人工的なものが目立っては、せっかくの自然が台無しだ」と老人は言う。
さらに、その川のその場所が街の人に知れて、たくさん人が押し寄せるようになり、放置されるゴミが目立つようになると、 地域の人たちは、迷惑だから立ち入り禁止にしようと声を上げたという。しかし、その区長は、「ゴミくらい片付ければ良い。 この場所に人が入れなくして、きれいな川で遊ぶ体験を閉ざしてしまったら、川を守ろうという意識も生まれてこない」と、 その声を退けたという。
地球環境を守ることは大切だ。しかし、その環境に接する機会を奪ってしまったら、 何故大切なのかを理解することもできなくなってしまう。
取材で様々なところを巡っていると、ときどき、「この場所は紹介しないほうがいいのではないか」と思うことがある。 ひっそりとした山の中にたたずむ奇蹟のような風景……それが、ぼくが紹介することで人が大勢訪れるようになったら台無しになってしまう。 そんな感覚が働くのだが、それでいいのだろうかと、ふと考えさせられてしまった。
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