昨日は、六本木でGerald Curtis氏の講演を一ヶ月ぶりに聴いた。前回は、 45年間の日本での生活を綴った『政治と秋刀魚』の発刊記念だった。次の回は、アメリカの政治の今後についてがテーマだったが、 それは残念ながら時間の都合がつかなくて聴けず、後で主催者が作成したrésuméを読んだ。
先のrésuméでは、民主党の大統領候補となったObama氏を高く評価していたが、じつは、 そのObama氏のアジア問題に関するアドバイザーを務めているという。
今回も、アメリカの大統領選について、Obama氏が勝利すると思っているが、9月にまた911のようなテロが起きたら、 間違いなくMcCain候補が逆転勝利すると繰り返した。「アルカイダにすれば、穏健派のObama氏が対話路線に進んでくるより、 McCain氏が今の緊張関係を維持してくれたほうが自分たちも都合がいいわけですからね……」と、何やら、 具体的な情報があるかのような不気味な言い方をしていた。
1時間半ほどの講演の中で、Curtis氏は、日本の今までの『対応型外交』 から戦略をもった外交に変わらなければならないと主張し、中国の今後と、それを牽制するためには対立の構図に持ち込むのではなく、 東アジアとオセアニア、インドを含めた地域の複雑性を維持して、そこに中国を巻き込んでおく必要があると説く。そして、 北朝鮮政策についてのアメリカの立場と戦略をリークした。
日本では、対北朝鮮問題をアメリカは、拉致被害者問題が解決しなければ北朝鮮を「テロ国家」 の指定から外さないという日本政府の立場を思いやってくれるはず……と思いこんでいるが、アメリカにとっては、日本のそんな事情など、 まったく考慮に値しないという。
それよりも、北朝鮮の核問題をいかに解消していくかという目の前の問題に取り組むことが先決で、交渉の場につかせる第一段階を経て、 第二段階は核開発の凍結、そして第三段階として核廃棄を行わせるプログラムを進行しているという。
すでにシンガポールで米朝の第二段階合意ができて、それがライス国務長官の「テロ国家解除」を示唆する発言によって、 アメリカから北朝鮮に対する明確なメッセージが伝わり、次に北挑戦が寧辺(ミョンビョン)核施設を爆破するというパフォーマンスを示して、 アメリカに対する返答となるのだという。日本の意向や期待を無視したそんなアメリカの戦略をCurtis氏はニクソンショックに例えた。
中身の濃い1時間半だった。
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