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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.157
2019年1月3日号
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◆今回の内容
◯スサノオの原郷
・スサノオの二面性
・来訪神としてのスサノオ
・スサノオと紀伊熊野
◯お知らせ
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スサノオの原郷
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新年あけましておめでとうございます!
2012年から始まったこの聖地学講座も今年で7年目となりました。この間、着実に読んでくださる方も増えて、昨年末には「まぐまぐ」のバックナンバー売上でトップとなることもできました。
隔週でかなりボリュームのある内容をお伝えし続けるのは、かなりきつい作業ですが、毎回、このメルマガを待っていてくださる方がいることは、とても励みになります。また、この講座を続けることで、私自身の研究の幅が広がると同時に、考察にも深みを増すことができ、とても勉強になっています。
「まぐまぐ」では200回を超えるメルマガは殿堂入りとなりますが、それも迫ってきました。まずは、その殿堂入りを一つの目標として頑張っていこうと思っていますので、引き続き、お付き合いいただけましたら幸甚です!
年明け早々の1月1日21時からNHKBSで、前回の冒頭で記したユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』と『ホモデウス』を題材とした番組が放映されました。ご覧になられた方もいらっしゃると思います。なぜ、体力も本能的な能力も劣るホモ・サピエンスが地球の生き物の覇者となれたのかを解き明かし、それを下敷きとして、テクノロジーが凄まじいスピードで発達していく中で、人類にどんな未来が待ちうけているのかを考察する、ハラリの視点がわかりやすくまとめられていました。
もっとも、二冊合わせれば2000ページにも及ぶような大著ですから、その内容を詳細にトレースすることは不可能です。ますますAIに依存する人類社会が、ディストピア的な様相を帯びるのではないかといった悲観的な雰囲気のエピローグは、少々残念でした。ハラリはけして悲観的な未来を予見しているわけではありません。現在の文脈の先にある未来を予想しつつも、それらはあくまで可能性の一つであって、人類にとって幸福な未来を考える切っ掛けにしなければならないというのが、彼の主張の主旨です。
さらに、歴史を考察することの意義は、過去から現在、未来がリニアにつながることを自覚して、歴史の中に未来の可能性を見るという点にあると語っています。
前回も同じようなことを書きましたが、この聖地学講座の主旨も、ハラリの主張とまったく同じです。
「物語は人間社会の柱石の役割を果たす。歴史が展開するにつれ、神や国家や企業にまつわる物語はあまりに強力になったため、ついには客観的現実まで支配し始めた。人々は偉大な神セベクや天命や聖書を信じたおかげで、ファイユームの湖や万里の長城やシャルトルの大聖堂を造ることができた。だが不幸にも、こうした物語をむやみに信じたせいで、人間の努力はしばしば、現実の生きとし生けるものの暮らしを向上させるのではなく、神や国家といった虚構の存在の栄光を増すために向けられることになった」と、『ホモデウス』では問題提起されていますが、まさに今、日本でも世界でも、歪んだ原理主義が台頭しはじめてきています。
それは、歴史の逆行です。虚構は虚構としてはっきりと認識して、そうした虚構の持つ意味や、それが形作られた経緯や意図を読み解くことで、歴史の本当の意味が見えてくるはずです。
今回は、そんな主旨も踏まえた上で、日本神話の中でとくに異彩を放ち、また違和感に満ちた神「スサノオ」の原郷について考察したいと思います。
●スサノオの二面性
スサノオといえば、アマテラス、ツクヨミとともに「三貴神」に数えられます。『古事記』では、黄泉の国から帰還したイザナギが最後に産み落としたのがこの三貴神とされますが、スサノオは高天原の支配者である姉のアマテラスに対して乱暴狼藉をはたらき、高天原から追放されて根の国へと送られてしまいます。
ところが、高天原から下りたスサノオは、ヤマタノオロチを退治して人身御供にされそうになっていたクシイナダヒメを娶る際には「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠に 八重垣作る その八重垣を」と、日本初とされる和歌を詠んだり、「我が心安来(やす)けくなりぬ」と根の国に落ち着いたり、傍若無人で粗暴な性格はまったく見られません。
極端に異なるこのスサノオの二面性は、従来は一柱の神の荒御魂(荒ぶる神)の要素と和御魂(恵みの神)の要素を表したものだと説明されていました。しかし、今では、スサノオという名のもとに、異なる二つの神格を日本神話が一つに統合したものという見方が主流になっています。異なる二つの神とその信仰を日本神話が無理矢理統合したのがスサノオという神だというのです。
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