先日、長野県上田市の別所温泉で行われたシンポジウムで、基調講演をさせていただきました。
土地に呼ばれ、人との縁が広がって、地域が独自の魅力を見出して活性化していく。自分に与えられた使命を再認識した一日の話です。
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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.74
2015年7月16日号
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◆今回の内容
1 聖地と町興し
デトックス&チャージ
記憶を掘り起こす
2 お知らせ
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聖地と町興し
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先日、長野県上田市の別所温泉で開催された「信州の魅力発見シンポジウム」で基調講演をさせていただきました。
今回のシンポジウムは、別所温泉活性化推進プロジェクトと環境ツーリズム学部を擁する長野大学が主催する産学協同の企画で、地元上田市はもとより、長野県各地の観光行政に関わる方々や長野大学の学生さん、また交通関連の企業の方々やメディアもたくさん参加されました。
昨年から、別所温泉の聖地としての魅力を掘り起こす事業に参画しているのですが、その過程で得た具体的な成果を紹介するとともに、それをどのように活かして地域としての魅力を高めていくかについて触れました。この聖地学講座でも、上田・別所温泉に見られる夏至・冬至レイライン(第64回『ヤマトタケルとレイライン』)や塩田北条氏の結界(同)、武田信玄の結界(第59回『冬至のポイント』)、北向観音と善光寺を結ぶ北斗七星(第72回『大地に描かれた北斗七星』)等々、ポイントを紹介してきましたので、記憶のある方もいらっしゃるでしょう。
今回は、短い持ち時間でしたので、個々の事例を掘り下げたり、デジタルマップを使ったライブシミュレーションのようなことまではできませんでしたが、地元の方々に、この土地が秘めた聖地としてのポテンシャルの高さを十分理解していただき、自分たちでそれを観光資源として活かしていきたいという気持ちを高めていただけたと思います。
こうした、地方での講演でいつも感じるのは、灯台下暗しで、地元の人たちが生まれ育った故郷のことをあまり深く考えたことがないということです。それでも、講演に来てくれる人たちは、故郷について知りたいという欲求を持っている人たちですから、関心も高く、歴史や文化について造詣も深いのですが、教科書的な知識しかなく、私の話にびっくりする人がほとんどです。
と、偉そうに言っている私も、レイラインや聖地のことを本格的に調べはじめる前は、自分が生まれ育った町の歴史について、あまり深く考えたことはありませんでした。
私が生まれたのは、茨城県の太平洋岸にある鉾田市(昔は鉾田町)で、近くには東国での最重要な神社ともいえる鹿島神宮はあるし、それに対峙する大洗や酒列の磯前神社があって、典型的なレイラインを描いています。そもそも町の名前に古代の神秘的な祭具である「鉾」の名前が付き、隣には玉造(たまつくり)というまさに古代の祭儀に関係の深い名前がつけられた町があって、聖地学的にみればとても興味深い場所なのです。でも、ずっとそういったことに気づかずに過ごしてきてしまったわけです。
あまりにも身近に過ぎると、稀有なものでも関心が行かないというのは、ある意味仕方のない事です。そういった地元では埋もれた稀有なものに光を当てて、地元の方々に新鮮な気持ちで故郷を見なおしていただくのが、自分の使命なのだろうなと感じています。
今回のシンポジウムでは、パネラーとして、東急電鉄で地域活性化とインバウンド事業を担当している長谷川さんと、TBSビジョンで地域振興イベントや番組企画を担当している澤田さん、それから長野大学環境ツーリズム学部の熊谷准教授に登壇いただきました。長谷川さん、澤田さんの二人は、2013年の伊豆急沿線での聖地調査からお世話になっていて、そもそも私が上田・別所温泉の活性化に参画するようになったのも、長谷川さんから誘っていただいたのがきっかけでした。主催者側から登壇いただいた熊谷さんは、土木工学が専門で、とくに景観工学的な側面から、レイラインや聖地についての補足説明をしていただきました。
また、事業や教育で地域振興事業に携わってきた経験から、地域外部の人間として、地元の方々が自ら動き出すように刺激を与えるという役割について話してくれました。
今回は、この上田・別所温泉活性化事業でのエピソードから、土地が秘めた聖地としての魅力を地元の人たちが意識していった過程を紹介してみたいと思います。
【デトックス&チャージ】
伊豆急沿線の聖地調査とその成果を活かしたツアープランができて、一区切りついたすぐ後、東急電鉄の長谷川さんから「今度は上田・別所温泉で同様の事業を行うのだが、手伝ってくれないか」と打診を受けました。
上田・別所温泉は、2007年に放映されたNBS長野放送の番組で信濃国分寺-生島足島神社-泥宮-別所温泉という夏至の朝日を導き入れるレイラインを紹介し、何度も取材に行ったところでした。
さらに、私の母親側の家系が上田市の隣の佐久という地域の出であったり、2011年に亡くなった伯父が上田市の出身で、晩年には故郷の上田に帰りたいとしきりに言っていたことなどがあって、個人的にとても親近感のある土地でした。
そんな土地の地域活性の手伝いの話が舞い込んだことに、「これは、また土地に呼ばれたんだな」という意識を強くしました。
長谷川さんが地元の観光や行政関係の人たちに、はじめてレイラインの話をしたときは、パワースポットブームにあやかったオカルト的な話かととられて、反応が薄かったそうです。
ところが、方位という具体的で客観的な視点から土地の構造を解析していくという私の手法を紹介すると、これを斬新だと感じてくれる人が出てきました。とくに別所温泉観光協会の重鎮の方々や、宿のオーナーは、別所温泉という土地が何か特別な力を秘めていることを感じていたこともあって強く共感してくれました。
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