■ iPhoneのコンセプトを大幅に拡張? ■
明日はいよいよAppleが新しいデバイスを発表する日だが(現地時間27日10時。日本時間28日3時。"latest creation event")、Macユーザーでもジョブス信者でもないのに、どんなものが飛び出してくるのかワクワクしている。
巷では、もうずいぶん前から、Appleの明日発表されるであろうデバイスの噂が飛び交っていた。それは、 iPhoneを劇的に進化させたようなタブロイド型の端末らしい。意図的なリークか、はたまた見当違いかわからないが、 それは"iSlate"という名前だという(前日の時点で、"iPad"、"iTablet"というネーミングも上がっている)。
先にMSが"SlatePC"というコンセプトモデルのタブレット型PCを発表したが、これは、 今まで幾度も登場しては徒花のごとく消えていった「タブレットPC」の焼き直しにしか見えず、ユーザーもたいした関心を抱いていない…… そういえば、もう15年くらい前、EPSONが出したタブレットPCが何かの懸賞で当たったものの、インターフェースが煩わしくて、 すぐに人にあげてしまったことがあった。
iSlateは、slate=石版という同じネーミングを持ちながら、MSのそれとは根本的に異なり、あえて「タブレット」 という言葉を使わなかったコンセプトが端的に現れているという(噂)。
加速度や方向センサー、繊細なタッチパネル、GPS機能などを組み込んで、単なる「携帯電話」などではない、 またゲーム端末とも違う、日常生活の様々なシーンを新たな体験に変えるツールとしてiPhoneが浸透した今、 その機能をさらに大幅に拡張した端末が登場するのは当然の文脈だし、それがiSlateだとすれば、そのiSlateで、 Appleがいったいどんな体験をもたらしてくれるのか、期待が張り裂けんばかりになるのも当然だろう。
■ 静的なブックリーダーは併存 ■
2007年にAmazonからKindleがリリースされ、 欧米では電子ペーパーを使ったブックリーダーが定着した。 薄っぺらい300gほどのガジェットに1000冊以上もの本のデータが収納でき、 さらに通信機能で新たな本を購入するのもたやすくできる。ずっと海の向こうのそんな環境を指をくわえて見ていたけれど、 もうすぐ日本語にも対応して、Kindleで日本の作品が思う存分読めるようになる(すでに青空文庫などは、 Kindleに対応したPDF版などが有志によって整備されている)。
Amazonでは、出版や取次といったプロセスを介さずに直接電子出版が可能になるシステムも用意している。これは、 著者の立場からすると、スピーディに出版ができ、しかも収益率も高く、大歓迎だ。
Kindleの良さは、シンプルさにある。長く活字に親しんできた者には、 モノクロの電子ペーパーの画面は紙に印刷されたものとあまり変わらず、親しみと安心感がある。 Kindleは今のところインターネットとは繋がっていないので、ハイパーリンクを介してリンク先に飛んだりできないけれど、 落ち着いてスタティックな記事をじっくり読むには、そのほうがいい。
操作系もシンプルで、これはまさに活字本がそのまま進化した形といっていいだろう。当然、 出歩くときはKindleを鞄に入れて行きたいと思う。
■ 超高機能電子クリップボード ■
一方、iSlateのほうは、単なるブックリーダーではなく、本も読めるし、動画にもアクセスできる、 さらにはiPhoneのように、GPSと連動したARを楽しんだり、ネットブックとしても使えるマルチメディア端末となるだろう。
明日の発表を待てばはっきりすることだが、あえて今想像すると、いつも手に持っていて情報を呼び出したり記録したりできる 「電子クリップボード」のようなものになるのではないかと思う。それは、無尽蔵のアーカイブに繋がったブックリーダーであり、 ビデオ再生機であり、ナビゲーションツールでありゲーム端末、そしてコミュニケーションツールだ。
昨年の夏、ぼくは長年のフィールドワークの成果をまとめた私家版のCD-ROMを出した。 それを元に、この春には単行本を出版するが、それに先立って、Kindleのような電子ブックリーダーに対応させ、 できればiSlate用のコンテンツにも仕立てたいと思っている。
Kindleのほうは、今までの書籍と変わらない、落ち着いて読めるものにするつもりだが、iSlateに対応させるなら、 巡り歩いた聖地の精細な3DCGを載せて、バーチャルツアーができるようにしたり、専用のSNSを立ち上げて、 コンテンツを軸にした情報交換の場を作ってみたいと思う。
さらに、iSlateが想像するようなものだとしたら、新たなフィールドワークのツールとして、思い切り活用してみたいと思う。 今は必要なデータをインプットしたハンディGPSとノートPCを使っているが、GPS機能を持ち、PC同様の入力もできるiSlateなら、 フィールドワークの現場にはiSlateだけを持参すれば足りる。
あらかじめ位置情報や関連情報をiSlateにインプットしておいて、GPSのPOI(Point of Interest = 自分が興味のある物件を登録しておけば、その場所に近づいたときにアラートを鳴らし、 物件までナビゲートしてくれる)機能のようにARを使って、より詳細に現場で参照できる。
現場で取材した情報をそのままネットで流せれば、立ち上げたコミュニティを使ってリアルタイムなディスカッションなどもできる。
……なんて、勝手に想像を膨らませているのだが、ホントのところ、いったい何が飛び出してくるのやら。
ところで、もっと気になるのは、Googleの動向だ。
今のところこの手の端末としては、GoogleのAndroidを搭載したBarnes & NobleのNOOKくらいだが、当然、 iPhoneに対するHTC端末のように、 Appleの動向に対抗するマルチメディア端末も出してくるだろう。
Appleが書籍も動画もiTunesやAppSoreで成功したビジネスモデルを適応してくるのは確実だが、 パブリックドメインを標榜し、Youtubeを持つGoogleがどう出てくるのか、こちらも思い切り注目したい。
■ 最近続々登場しているブックリーダー ■
**Kindleの対抗馬としてSONYがリリースした「Reader」。通信機能は持たず、 非常にシンプル**
**GoogleのOS"Android"を搭載した「nook」。これもKindleの対抗馬だが、 天下のGoogleは、当然、iSlateの対抗馬であるマルチメディア端末も出してくるだろう**
**こちらもAndroidで動く"Spring Design Alex**
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