日本時間の今朝未明、ついに噂のAppleタブレットがお披露目された。夜が明けて、日本のメディアもいろいろ報道しているが、 iPadを新しいエンタテイメント端末として期待する声と逆に「単なるiPod touchのでかい版じゃないか」 といった期待ハズレとする声に二分されているようだ。
ぼくは元々アップルの製品にはあまり関心がなく、PCにしろメディアプレーヤーにしろシンプルで余計なデザインの無いもの、 どうせ実用品なのだから価格の安いものがいいと思って、IBM系やクリエイティヴメディアを愛用してきた。
ところが、このiPadは、熱烈に欲しいと思う。
そもそも、Appleのタブレット型端末に関心をもったのは、それが電子ブックリーダー機能を持つと噂されていたからだった。
前回のエントリー"iSlate(or iPad,or iTablet)という「体験」に期待。そしてKindleの「シンプリシティ」"にも書いたように、 一人の読書人としてまた物書きとして、2007年に登場して、英語圏では爆発的なヒットを記録したAmazonのKindleに関心があり、 今年に入って、Kindleで日本語が読めるようになったり(青空Kindle)、SONYからも同種のリーダーが発表されて、 いよいよ日本でも本格的な電子ブックの時代が始まると確信していた。
そこへ、「Appleもダブレット端末で電子ブックリーダーの世界へ参入する。 それも他の電子ブックリーダーとはまったく異なるコンセプトを引っさげている」というのだから期待も高くなる。
そんなわけで、今までAppleの新製品発表会のライブなどを心待ちにしたことなどなかったのに、 今朝は4時近くまでPCにかじりついてTwitterのコメントを追いかけていた。
iPadの蓋が開いてみると、Macファンの多くはすでにiPhoneで見慣れたインターフェースに、 MacPCほどのスペックを持たないiPadに若干失望するか、「まあ、うわさ通りだったな」と淡々と受け止めたようだ。
だが、そもそも電子ブックリーダーとして注目していた身としては、唯一、 10時間というバッテリー寿命が残念な気はしたが(Kindleなどの他のリーダーは数日から1週間は持つし、 電子ペーパーを採用しているので、電源を落としてもブラウズしていた画面はそのまま保持される)、 LEDバックライトで鮮やかなカラー液晶や、余計なボタン類は何もなく、洗練されたタッチパネルのUIなど、 それだけで期待以上のものだった。
間違いなく電子ブックリーダーとして、今もっとも使いやすく、洗練されているといえるだろう。さらに、iPadは、 電子ブックリーダー機能は数ある機能のひとつに過ぎず、ネットブックとしてのあらゆる機能を備えている。
そして、なんといっても驚きは、その価格だった。もっとも廉価なバージョンで$499。これは、 モノクロ表示で電子ブックリーダーの機能しか持たないKindleDXより、わずかに$10高いだけ。
Amazonは、Appleの動向を意識して、 自社の電子ブックマーケットの拡充や誰でも手軽に電子ブックが出版できるシステムなどを矢継ぎ早に発表したが、これに対して、Appleは、 すでに大きな実績のあるiTuneStoreやAppStoreにくわえてiBooksという電子ブック専門のネットストアのオープンを発表した。
iPadは、欧米の電子ブックフォーマットとして広く普及しているepubをサポートしているので、 iPad用の電子書籍を制作するのは容易い。さらに、今朝の発表と同時に、SDKも開示して、ダウンロードできるようにした。これで、 iPhoneアプリのようにアプリを手軽に開発して、それを販売することができるようになった。
単に電子ブックリーダーとしてだけでなく、うまくアプリと組み合わせれば、動画が立ち上がったり位置データと連動させたり、 ただ本や雑誌を読むだけでない、新しい体験がもたらされるようになる。
intelのチップにMacOSではなく、独自の安価なチップを使い、軽いiPhoneOSを使って、本を読んだり、映画を観たり、 ゲームで遊んだり、あるいはネットでコミュニケーションしたりといった「日常的なエンタテイメント」を手軽に、 そして存分に楽しめるようにした。そして、ネットブックと同等の価格を実現した。
前回のエントリーでは、シンプルな電子ブックリーダーとiPadは共存すると思うと書いたが、 電子ブックリーダー機能が他の専用マシンよりも優れ、さらに遥かに多彩なエンタテインメントが楽しめてネットブックとしても秀逸ときて、 マーケットも充実しているのだから、これはiPadの独り勝ちになる可能性が高いだろう。
今度は、3月末の発売が待ち遠しくなった。
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