夏の終わりはもの悲しいものだけれど、今年はとくに寂しくて切ない夏の終わりとなった。
ぼくにとってそこは魂の安らげる場所だった。たとえ、そこに行かなくても、そこを思い浮かべるだけで心が落ち着く場所……それが、 四国の『野遊び屋』だった。
2001年の夏、 OBTメーリングリストを通じて知り合ったニュージーランドのシーカヤックガイドRyu.Takahashiさんの誘いを受けて、 岡山の牛窓で行われたシーカヤックミーティングに参加した。
それまで、マリンスポーツとはまったく縁遠かったのだが、広い海原を自由に渡っていけるシーカヤックの魅力と、 カラッと明るいシーカヤッカーたちのキャラクターにたちまち引き込まれてしまった。そして、 そのイベントの主催者だった野遊び屋と付き合いがはじまった。
四国香川のベッセルおおちをベースとする野遊び屋は、どっしりとしたログハウスを中心に、それを取り巻く広々としたウッドテラスが、 岬の突端にあって、のどかな瀬戸内の海を一望できる、とてもここが日本だとは思えない素晴らしい環境にあった。
調度のほとんどは間伐材や流木を使った手作りで、ベースの中や外には、各地の遠征ツアーで集められてきた貝殻や漂流物が、 さりげなく置かれていた。
そこにいると、木の温もりにうっとりとして、さらには、瀬戸内の潮風が運んでくる南国の匂いに、 遠い奄美や沖縄の島々の風景が浮かび上がってくるようだった。
ベースから見下ろせる山田海岸から瀬戸内にエントリーすると、広大な鏡のような海面を自在に漕いでいくことができる。 沖に見える島まで渡り、無人の浜に上陸して、そこでティータイムやディナーを楽しんだ。
冬には、OBTとジョイントでGPSイベントを開催したり野遊び屋の面々に八ヶ岳まで出張してもらって、 スノーシューイベントを開催したりもした。
野遊び屋やそのイベントではたくさんの友人ができた。
その思い出深い野遊び屋のベースが閉鎖になると聞かされたのは、ゴールデンウィーク明けの頃だったろうか……。
野遊び屋を運営するG-Outfitterの吉川氏に、今年のイベントやらWEB仕事やらのことで電話をしたときに、 突然の閉鎖を聞かされた。
もともとここは、東かがわ市の第三セクターが運営する施設で、そこを借り受けていたのだが、第三セクターが経営に行き詰まり、 その経営権を買った民間業者から立ち退きを要求されたのだという。
その後、交渉を重ねたがうまくいかず、同じ四国の中で別の場所を探したが、なかなか条件に合うところが見つからず、 この9月末をもって閉鎖が決まってしまった。
この野遊び屋のファイナルイベントが、先週末行われた。
お世話になった山田海岸でビーチコーミングクリーンアップを行い、その後、ハッピーアワー。そして、翌日はファイナルツアー。 さらに、その翌日は最後までの居残り組でさぬきうどん巡りツアーを行った。
ぼくは、オートバイでこのイベントに向かったが、懐かしいみんなと、そして、 思い出がたくさん詰まった野遊び屋ベースを後にして走りながら、今度は、自分がどこかに、野遊び屋の雰囲気を再現した場所を作って、 仲間たちにいつでも集まってもらえるようにしたいと、切実に思った。
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