もうだいぶ昔、浴衣を仕立てたような記憶があるのだが、思い出せない。たしか、一度、 袖を通して田舎の花火を見物に出掛けたような気がするのだが……。
浴衣を仕立てた名残りの下駄は、学生時代、夏に都心へ通学するのに突っかけて歩いていた。しかし、本体のほうは、 はっきりと着た記憶がなかった。
先日、新しいプロジェクトのミーティングが引けた後、メンバーで飲みに行って、和装の話になった。メンバーの一人、 建築家のN氏が若い頃から和装が好きで、年に幾度か和服で集まる会を開いているという。
「夏は、浴衣が涼しくていいんですよ。気分も変わるしね……」
なんて話があって数日後、思い立って、浴衣を見に行った。
これから仕立てては夏が終わってしまうので、店の女将さんに見立ててもらって、吊るしを買い、そのまま店のある小江戸の街を歩いた。
猛暑日を記録した炎天も、ゆったりと風が通る浴衣は、たしかに洋服よりも爽やかで気持ちがいい。昔、下駄を愛用しはじめたときは、 鼻緒の擦れに慣れるまでしばらく時間がかかったが、今の下駄は鼻緒も柔らかく、裏にはラバーが貼ってあって、痛みも疲れもずっと少ない…… カランコロンと下駄を鳴らして歩くあの風情も捨てがたいのだが。
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