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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.254
2023年1月19日号
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◆今回の内容
○魔術的時代の先にあるもの
・中世からルネサンスへ
・魔術から科学へ。そして…
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魔術的時代の先にあるもの
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疫病が流行り、戦争が起こり、貧富の差が激しくなって社会不安が広がり、カルトがはびこる現代。これを「暗黒時代」と感じている人も多いのではないでしょうか。
第206回『陰謀論について』でも触れたトランプを支持するQアノンと称する集団が、悪魔崇拝(異端)の恐怖を煽って、ついには、アメリカ連邦議会を襲撃して死者を出すまでの騒ぎとなったのは3年前のことでした。
Qアノンは、黒魔術を行う集団が夜な夜なピザ屋に集い、幼児性愛などのソドミーを繰り返しているなどというナンセンス極まりない妄想を広めたわけですが、まともな神経をなら信じられないそんな妄想が受け入れられ集団ヒステリーのような様相を生み出すといったことは、過去にも何度もありました。その典型例は、まさに「暗黒時代」と称される中世西洋でしょう。
西洋史の研究者、とくに中世からルネサンスにかけての時代を専門とする人たちは、「時代の裂け目には、魔術や呪術がはびこる」と言ったりしますが、まさに現在も大きな時代の裂け目に直面していて、だからこそ、陰謀論のような怪しげな言説がはびっこているともいえます。
今回は、こうした絶望的ともいえる時代の先にいったい何があるのか、中世からルネサンスへの移行期を「魔術」という観点から見ることによって展望してみたいと思います。
●中世からルネサンスへ●
中世キリスト教社会は14世紀に入ると、教会組織が形骸化し教会関係者の腐敗や堕落とあいまって、キリスト教の理念が民衆への説得力を失い、凋落の一途をたどっていました。そこに起こったのがペストの大流行でした。
人々は大量死の地獄絵図の中で、ますます神の権威を信じなくなり、怪しげな民間信仰や黒魔術といったものに頼るようになります。それはまさに今と同じような状況でした。
さらに、キリスト教の教えを刷新して、現世に生きる人々の直截的な救済に主眼をおいたルターによる宗教改革が始まると、カトリック教会はこの末期的な状況を打開しようと、巻き返しに乗り出します。それが、異端審問による弾圧でした。
1540年にイエズス会がローマ教皇庁の認証を得ると、42年には異端審問所が設置されます。そこから異端審問の嵐が吹き荒れていくことになります。カトリックの改革運動は強権を前面に押し出して、さながら中世の十字軍ともいえる狂気じみた改革政策を推進していきました。しかし、それでも中世封建主義の崩壊は避けられませんでした。
人びとはキリスト教信仰に飽き足らず、それに取って代わる「新たな理念」を模索しはじめます。ペスト襲来後は、この世で地獄を味わうこともあるのなら、今ある生を楽しもうという現世利益重視の考え方が大きな潮流となります。これは享楽的な世相を生み出す一方で、地上での理想的市民生活を達成しようという人文主義を生み出すきっかけともなりました。
その人文主義の理念のバックボーンが、中世を通して忘れられていた古典でした。それが、ルネサンスの大きな潮流となるわけですが、古典の見直しから注目されたもののひとつが、新プラトン主義やヘルメス思想といった「自然魔術」の思想でした。
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