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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.190
2020年5月21日号
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◆今回の内容
○潜在意識の中の聖地
・ユングが辿った道
・潜在意識の中の聖地にたどり着く方法
◯お知らせ
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潜在意識の中の聖地
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前回は、外出自粛を余儀なくされるコロナ禍の中で、鬱々と落ち込んでしまうことを避け、逆にこの機会を利用して、あえて自分と向き合うことで精神・内的体験を充実させることをテーマにしてみました。そして、どんな状況にあっても精神を高揚させる方法として「至高体験」を紹介しました
依然として続くコロナ禍の中で、今回は、もう少し自己と向き合うことについて掘り下げてみたいと思います。テーマとするのは潜在意識です。
至高体験ももちろん潜在意識と深いつながりがあります。それは潜在意識と触れ合うことで、一瞬のスパークが顕在意識にもたらされ、意識が覚醒するような体験だからです。今回は、それとは反対のベクトルに向かい、潜在意識そのものに沈潜していくことで、何かが変わるような例を取り上げ、自分の内面と向き合うことの意味を考えてみたいと思います。
● ユングが辿った道 ●
私は、かねてから聖地とは、自分の内に秘められた内的体験を外的環境によって引き出すような場所だと考えてきました。すでに自分の心の中にありながら意識できていなかった啓示的な事柄を引き出す何らかの環境を有した場所が聖地ではないかと。
そして、聖地は必ずしも物理的な場所だけではなく、自分がある聖地を訪ねたときのことを思い出して、その陽射しや空気、そこに生息する動植物が醸し出す雰囲気を脳裏に描き出すことで、実際にそこにいるのと同じような啓示的効果を発揮するようなものでもあると思うのです。いわば、記憶の中の聖地も現実の聖地と同等ものものだと。
さらにいえば、実在の聖地の記憶だけでなく、潜在意識の中に独立して存在するものもあって、それにアクセスすることで聖地体験が得られると思うのです。
潜在意識といえば、まっ先に思い浮かぶのは、ユングです。
ユングは、フロイトとの確執で追い詰められノイローゼのような状態になりました。フロイトは、人間はコンプレックスの虜であり、そのコンプレックスが隠れ潜んでいるのが潜在意識だとしました。コンプレックスを潜在意識の中から引き出し、これを患者と対峙させることで、病理的な精神状態から開放されると考え、それを精神分析で実践していました。
これに対して、ユングは、潜在意識はフロイトがイメージするようなコンプレックスが閉じ込められている地下牢のようなものではなく、人間の精神の可能性が詰まった広大な未開領域だと考えました。そして、潜在意識そのものを探検し、そこから人間精神の進化を導き出すのが心理学に課された使命だと考えるようになりました。
フロイトは、人間の精神は病的な状態にあるのが通例で、平常な生活を送るために治療を必要とすると考えていました。ユングは、治療を必要とする精神もあるけれど、それも含めてすべての人は、潜在意識の豊穣な世界に触れ、それを知ることで精神的に大きな進化を遂げると信じるようになったのです。二人の対立は避けられませんでした。
ユングは恩師であるフロイトと対立し、激しく叱責されたことで、ノイローゼに陥ったのです。しかし、それを克服して、自らが信じる潜在意識の可能性を追求する方向へ進んでいきます。そして、自らの精神の奥底に降りていって、そこでフィレモン=賢者という存在に出会い、潜在意識の広大さと奥深さを知り、ついには「個人」を超えた人類共通の集合意識といったものにまで辿り着きました。ユングにとって、潜在意識は一大聖地だったわけです。
今、私たちは、コロナ禍によって、逼塞を余儀なくされ、さらにこの先、世界がどうなっていくのか、自らが行きていくための収入を得るためにどうすればいいのか見当もつかず、不安に苛まれています。しかも、行動することもできず、八方塞がり状態です。
パンデミックという状態に陥ったのも、そのために経済的に困難な状況に追い込まれたのも、大きな原因は現代の社会経済システムにある。ポストコロナでは、同じ轍を踏まず、人間本来の幸福を実現するために、今までの社会とは違った社会を作らなければいけないと思う反面、なんとか元の経済を取り戻したいという思いのジレンマに挟まれています。
これは、コンプレックス理論をベースにしたフロイトの精神分析学に疑問を持ち、人間の精神が進歩する可能性を追求したいのに、その方法が見つけられずにいたユングが置かれた状況にある意味似ています。
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