昭文社から発行されている『ツーリングマップル』の取材が今年も始まった。
例年は梅雨の末期から動き出し、9月の半ばまで担当する中部北陸地方を巡るのだが、正直言って、このスケジュールだと気候環境が良いとはいえない。なかなかスカッと晴れた空というわけにいかないし、近年の夏の暑さはオートバイで走るのにも爽やかさからはほど遠い。
そこで、今回は表紙撮影のスケジュールだけでもと前倒しして、ギリギリ梅雨入り前にスタートすることにした。
出発前の二日間は移動性の高気圧が通りすぎて、梅雨前線が北上をはじめ、そのまま梅雨入りしてしまうのではないかと心配だったが、幸い大陸から高気圧がやって来て、ちょうどいいタイミングで本州を覆う形になった。
ロケ地に選んだ北信地方は、一昨日からずっと快晴で、瑞々しい新緑と抜けるような青空に身も心も洗われる。昨日は北風が強く、菅平から志賀高原にかけては後背の山々に霧氷が降りて寒いくらいだったが、茹だるような暑さに比べれば遥かにましだ。
里では水を張られた田に植えられたばかりの苗が並び、その水面に青空と新緑の山が映っている。里の用水から川へ、そして沢を辿って、水源のブナの林へ。「山笑う」という言葉があるが(北信を訪ねると必ず立ち寄る蕎麦屋も「山笑」という)、沸き立つ新緑はまさに山が笑っているようだ。
春遅いこの土地では、今まさに山の神が降りてきて、田の神となり、秋の収穫まで植えられたばかりの苗の成長を見守ってくれるのだろう。
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