昨夜は、何に当たったのか、夜中に吐き気を催してすっとトイレから離れられなかった。明け方になってようやく落ち着いて、少し仮眠し、早朝からツリーイングのイベント会場へ向かった。
もう吐き気はしなかったが、フラフラして、いつもなら30分もあれば5,6本はロープセッティングができているはずなのに、ようやく1本できただけだった。ツリーイングのロープ設置は、はじめにスローラインを結びつけた「パウチ」と呼ばれる鉛の入った錘を投げて、狙った枝の股に掛けるのだが、枝を見上げると、シーソーを揺らしながら仰向いているようで、視界が揺らいで狙いが定められないのだ。
それでもなんとか既定のロープを設置し終わり、イベントが始まると、腰から下に力が入らず、立っているのも億劫な感じだ。いっそのことロープにぶら下がっていれば楽ではないかとクライムしてみると、シットハーネスに腰掛けていればいいので、何倍か楽だった。
そのまま、樹上のサポートにまわり、一日を過ごした。
普段なら、子どもたちを引き上げるのに力技を使うところを、今日はそもそも力が入らないので、いちもよりポジショニングに気を使って、作業するときになるべく力を使わないで済むようにしていたら、いつもより格段に疲労が少なかった。
イベント終了後、インストラクターを目指しているメンバーが樹上にツリーモックと呼ばれるソリッドなハンモックを張る練習をしたいというので、そのサポートについた。
見ていると、自分がぶら下がっているロープのアンカー(支点)が後ろ側にあって、目の前の幹にハンモックのスリングを巻きつけようと苦労している。体を安定させるためにランヤードを幹に巻きつけて、自分の体を幹のほうに引き寄せているのばいいのだが、それでもポジションが安定しないので、作業に専念することができない。
こういった場合、目の前の幹の裏側に回って、アンカーが自分の前側に来るようにしたほうが格段に作業しやすくなるのだが、そのことはわかっていて、なんとかランヤードを引っ張って幹に抱きつき、向こう側に回り込もうとする。
「Nさん、そのやり方がいちばん手っ取り早そうに思えるけど、じつはそれはいちばんきついんですよ。手間に思えるけど、一端上に登って、その幹に繋がる枝に乗って降りてくるほうが断然楽ですよ」
いつもなら、自分も力任せにNさんが試みていたようなやり方で無理やり幹の向こうへ回りこむこともするのだが、今日はさすがにそんな力は出ない。ぼくが食あたりでげっそりしていることはNさんもよく知っていて、そんなぼくがいったん上に登って、体の方向を変えて幹の反対側を降りてくるのを実演すると、それがいかに合理的か納得できたようだった。
じつは、自分でも力技を使うより、セオリー従ったほうが格段に楽なことを体が辛い時だったが故に身にしみて体験できた。
超長距離のオフロードを走るラリーやエンデューロレースでは、体力のある20代や30代よりも40代のほうが力を温存しながら走るセンスが身についているので完走率が高い。実際、30代後半くらいから無理をしない走り方が身について、レースが楽しくなった。
そんな時代のことを思い出した。
「自然体」というのは、簡単なようで、なかなか難しいものだ。
コメント