今の時期、室内の温度が安定しているので、昨日仕込んだビールが快調に発酵して、エア抜きバルブがリズミカルな音を立て続けている。
なんだか小さな生き物と仲良く同居しているようで、楽しい気持ちになってくる。前回ビールを仕込んだときは、まだ寒くて、酵母が活性化せずに失敗してしまったので、今回のように、いかにも元気に嬉しそうに酵母が呼吸していると、こっちまで元気になってくる。
杜氏の人たちもワイン仕込みの職人も、みんな血色が良くて、元気な人ばかりだけれど、彼らも酵母から元気をもらっているのだろう。
ぼくのビールは、もう一週間もすれば、一次発酵を終えて、瓶に詰めて二次発酵することになる。二三ヶ月で飲み頃となるので、今年はちょうど夏の暑い盛りに、自家製の旨いビールが堪能できそうだ。
こういう、時間のかかる熟成作業は、気長に構えて、結果は天に任せるしかないというのがいい。うまくいけば、期待を遥かに越えるような「作品」ができるし、失敗すれば得体のしれない不気味な代物となる。
成功するほうがもちろんいいけれど、失敗しても、それはそれで一つの楽しい思い出になる。これをビジネスにするとなると、考えただけで胃が痛くなりそうだけれど…。
今日は埼玉県の北にある武蔵丘陵森林公園でツリーイングイベントの予定だったが、雨で中止になった。そこで酵母の呟きをBGMに、「聖地学講座」の構想を練ったり、ラジオ番組のロケに向けての資料調べをしたり、青空文庫で折口信夫や和辻哲郎の作品を拾い読みして過ごしていた。
SNSやらネットサーフィンをせずに部屋にこもっていると、時間の流れがいつもより、よほどゆったりと感じられる。
そして、ふと、「自分の生活というか最期の一つの理想形は、エリアーデの作品『ホーニヒベルガー博士の秘密』のホーニヒベルガー博士んだよなあ」なんて思い出していた。
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