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最近、冬山でもないのにバラクラバを愛用している。といっても、 さすがにこれを目出帽としてバイクを漕ぐときやジョギングの時に着用していたら、たちまち職務質問されてしまう。 これを手軽なネックウォーマーとして使用しているのだ。
昨年のファイントラックの展示会で、「これを来年からリリースするんですよ」と見せてもらったのが、今、 愛用しているフラッドラッシュアクティブスキンシリーズだった。
ファイントラックのベースレイヤーといえば、フラッドラッシュスキンとフラッドラッシュスキンメッシュがあるが、 このフラッドラッシュアクティブスキンは、フラッドラッシュスキンシリーズの後継に位置づけられる。
フラッドラッシュスキンシリーズは、マリンやシャワークライミング用の超撥水素材から発想を得て、肌に密着した「ベースレイヤー」 として極薄の超撥水生地で水濡れや汗の濡れ戻りを防ぐという斬新な機能を持っていた。この種の「ベースレイヤー」 がレイヤードとして定着するきっかけとなったエポックメイクな素材だった。
後にフラッドラッシュスキンメッシュが加わり、 スリーシーズン用のベースレイヤーがそちらに移ってからも元々のシリーズは存続された。このフラッドラッシュアクティブスキンは、 素材などを見直し、さらに性能を高めたモデルになる。今のところ、アクセサリーに分類されるバラクラバとインナーグローブ、 それにアームカバーがリリースされている。
従来のフラッドラッシュスキンは、耐久撥水加工されたポリエステル100%の極薄ニット生地だったが、 フラッドラッシュアクティブスキンは従来のものより伸縮性を格段に高めたポリエステル糸95%に、 消臭機能を持つ新世代のポリウレタン糸5%のニット生地が使われる。
この生地になって、極薄のニット生地の弱点でもあった強度が高くなり、また同じ重量ながら、肌触りがポリエステル100%に比べて、 温かみを増した。そのおかげで、バラクラバを積極的に普段使いのネックウォーマーとしても違和感なく使用できるようになった。
バラクラバやインナーグローブというと、厳冬期の装備のように思われがちだが、案外、 これからの春山シーズンにも大きな効果を発揮してくれる。春山では、厳冬期に比べて発汗が多く、行動停止時には一気に汗が冷やされるので、 寒気を余計に感じやすかったり、汗で濡れたグローブから手を抜いたときに内装まで抜けて、はめ直すのに苦労するといったことがある。 それをこうしたドライに保つベースレイヤーを着用していれば防ぐことができる。
また、ポリウレタンの配合によって生地自体の防風防寒性が高まっているので、たとえば、 ランニング時にインナーグローブを軽快なアウターのグローブとして使用してもいい。アームカバーは、 まさに今のランニングブームに合わせた製品といえる。
来月にはアクセサリー類に続いて本格的なベースレイヤーのラインナップが登場してくる。ぼくも、 もう3年あまりフラッドラッシュスキンを愛用してきたが、これに合せて、ベースレイヤーの総入れ替えをしようと思っている。
**新たにポリウレタンが配合され、生地の温かみと強度が増した**
**ネック周りが立体的になり、補強のパイピングが一周施されているので、 ネックウォーマーとしてもラフに使用できる。これからの花粉の季節は、頭部だけを後ろに跳ね除けて、 マスク替わりに使っても良さそうだ**
**上が、従来のフラッドラッシュスキン素材。下がアクティブスキン。見た目にも風合いが暖かそうだ。 さらに、縦方向も横方向も大幅に伸縮性が良くなった**
アクティブスキン・アクセサリーには他にインナーグローブ、 アームカバーがラインナップ
トラベラーズノートを使い始めて以来、ミドリのこのプロダクツチームが創り出すノートやメモ帳には、一も二もなく飛びついてしまう。
今回も、プロジェクトリーダーの飯島氏のブログ「トラベラーズ日記」で、 このスパイラルリングノートが紹介されるやいなや、近くのLOFTに飛び込んで購入した。
『北国シロクマノート』と名づけられたこのノートに履かされた帯には、「雪原を歩くシロクマのように真っ白な紙のノートです。 書くことにこだわって開発したMD用紙は、にじみや裏抜けがしにくく、さまざまな筆記具で心地よく書くことができます。 カフェで広げて書くのにちょうどよいサイズです。縦でも横でも自由に使ってください」と、メッセージが記されている。
どこか異国の街の片隅で、ぶらりと入ったカフェで広げ、何気ない旅のシーンを絵や文で記す…… ざっくりとした素朴な牛革カバーのトラベラーズノートからは、そんなシチュエーションがふと思い浮かぶ。実際、旅の様々なシーンを想定し、 自分たちが世界各地の旅にプロトタイプを持参して作り上げられたノートだ。
創り手の深い思い入れが端的な形となって出来上がったモノ。それに自分のライフスタイルや思いがシンクロすると、 そのモノはかけがえのない相棒になる。
前々回のエントリーで紹介したモールスキンは、 大好きな作家であるブルース・チャトウィンのモールスキンへの思い入れを知り、それをきっかけに自分もファンになった。そうした、 「思いの共有」ともいえる気分をもたらしてくれるモノに囲まれていたいと思う。
デジタルガジェットも便利で楽しいモノだが、そこには、やはり手触りや温もりが欠ける。気分や思いを自由に記すには、 キーボードではなくて、やはり紙とペンが合っている。
さっそく、買ったばかりのシロクマノートを持ってカフェに入り、コーヒーを飲みながらその真っ白な紙にペンを走らせると、 トラベラーズノートとはまた違った、もっとカジュアルな気分で今日一日の過ぎた時間が思い出されてくる。そして、きっと、創り手たちも、 同じような気分を味わってもらいたくて、このノートを創ったのだろうと想像されて、なんだかとても嬉しくなってきた。
**白いMD用紙を使った「シロクマ」モデルの表紙にはシロクマが空押しされている。他に、サンド色の 「ラクダ」モデル、全てのページがポケットになった「カンガルー」モデルがある**
**今回買ったのは縦開きのB6サイズ。横開きタイプもあり、それぞれ、A5スリム、A6スリム、B6、 B7と豊富なサイズがラインナップされている**
2010/02/17 カテゴリー: 02.ライフスタイル, 12.グッズ、ギア | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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欧米では、 樹木医であり木の剪定や伐採を行う専門技術者を「アーボリスト」と呼びます。
アーボリストが、高い木に登り、 樹上で安全に作業を行うために発達させてきた技術をもとに、誰もが手軽に木に触って親しむことができるようにアレンジされたアクティビティが「ツリーイング」です。
ツリーイングはロープとハーネスを用いて、安全かつ容易に木に登り、 ツリーモックと呼ばれるハンモックを樹上に張ったり、木の間に張り渡したロープを伝って横に移動したりするとてもスリリングなスポーツです。
木肌の温もりや柔らかさ、風に揺れる木のしなやかさを感じ、 普段味わうことのできない「木の目線」 で世界を見渡す体験は、素晴らしい自然が身近に息づいていることを教えてくれます。
日本ではTMCA(Tree Master Climbing Academy)が、 ツリーイングの普及活動を行っていますが、 OBT(アウトドアベーシックテクニック)では、 TMCA公認インストラクターである代表の内田によるプランニングの元、 より多くの方にツリーイングの世界を体験していただける7種類のプログラムを用意しました。
◆ ツリーイング体験会
◆ ツリーイングワークショップ
◆ ツリーイングツアー
◆ TMCA認定講習会
◆ 企業・教育関係機関向け研修プログラム
◆ 森のアクティビティ設計
◆ 樹木剪定
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■ ツリーイング体験会 ■
10分ほどの簡単な手ほどきの後、 ロープやツリーモックがセッティングされた木に登る手軽なコースです。体験時間は2時間ほど。4歳くらいのお子さんから70代くらいの方まで、誰でも楽しんでいただけます。 家族、 グループ、 学校などでのイベントにお薦めです。
TMCAでは、 全国のブロック支部毎に体験会を開催しています。
OBTではTMCAのレギュラースケジュール以外に、教育機関等の団体やグループのご要望に応じて、 随時、 インストラクターを派遣して体験会を実施いたします。
[ TMCA主催体験会スケジュール ]
→http://treemaster.jp/index.html
[ OBTツリーイング体験会 ]
10人以上のグループを基本に、出張体験会をお受けします。
東京、埼玉、群馬では、こちらで会場を用意することも可能です(東京は八王子大学セミナーハウス、埼玉は桶川市の城山公園、 群馬は赤城大沼周辺)。
費用は一名につき3500円。
東京、神奈川、千葉、埼玉は出張費無料。
その他の地域は出張費として交通費宿泊費等実費。
**宿泊施設等で、 ツリーイング体験会をパッケージにした宿泊プランなどのご相談も受け付けております**
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■ ツリーイングワークショップ ■
"ツリーイングワークショップ"は、 ツリーイングの基本を学び、さらに自分でアップダウンを楽しめるようになる入門コースです。 午前と午後の2時間半ずつ、 間にランチを挟んで一日じっくり木と向きあいます。
通常の体験会は、あらかじめセッティングされたロープをインストラクターのサーポートによって登降しますが、 このワークショップではツリーイングの基本であるDRT(ダブルロープテクニック)を使い単独で登降ができるようになります。
体験会だけでは物足りなさを感じた方、 林業や造園などでツリーイングの技術を仕事に活かしたい方、 スポーツとして本格的なツリーイングを体験してみたい方等にお薦めです。
ワークショップは、 OBT独自のプログラムです。
基本的に5人以上のグループで出張ワークショップをお受けいたします。
費用は一名につき7500円。
東京、神奈川、千葉、埼玉は出張費無料。
その他の地域は出張費として交通費宿泊費等実費。
**宿泊施設等で、 ツリーイングワークショップをパッケージにした宿泊プランなどのご相談も受け付けております**
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■ ツリーイングツアー ■
現在、 長野県白馬村の提携宿泊施設"ペンション・ミーティア”を拠点に、 3月末までの間、 "スノーシュー&ツリーイングガイドツアー”を実施しています。
午前中に雪原をスノーシューでトレッキング。フィールドで昼食の後、ツリーイングを体験。 丸一日、 フィールドを縦横無尽に楽しむプログラムです。
ご家族、修学旅行や学校等でのアウトドア体験学習にお薦めです。
3月下旬からゴールデンウィーク前にかけては、 スノーシューで雨飾山中腹まで登り、 日本海を見渡す稜線でブナの大木に登るスペシャルツアーを計画しています。こちらは、 DRT以上の資格を持っている方はフォローアップを兼ねた自主練習・講座として、 初心者の方はインストラクターのサポートを受けながら楽しんでいただけます。
開催日程等のお問い合わせは、 直接"ペンション・ ミーティア”まで。
[ ペンション・ ミーティア ]
[email protected]
http://www.hakuba-meteor.com/
TEL : 0261-72-5153
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■ TMCA認定講習会 ■
"TMCA認定講習会"は、ツリーイングのベーシックテクニックであるDRT(ダブル・ロープ・ テクニック)を学ぶ"T1”、アッセンダーとディセンダーを使用するSRT(シングル・ロープ・テクニック)を学ぶ"T2” 、 さらに樹上での移動や確保と剪定作業の基本を学ぶ"T3” の三つの講座があります。
それぞれ一泊二日の集中コースで、TMCAのチーフインストラクターが講習と検定を行い、 検定に合格すればツリーイングクライマーとしてTMCAに登録されます。
OBTでは、 TMCAの定期講習会の他に、ご希望に合わせて出張講習を行う他、埼玉県桶川市の城山公園・ 東京八王子の大学セミナーハウスで特別講習を行います。
ツリーイングの技術を仕事に活かしたい林業・造園関係の方、アウトドアガイドの方、さらに教育関係の方などに最適です。 出張認定講習会は4人以上のお申し込みから受け付けております。
費用は、T1、 T2、 T3それぞれ一名につき30000円。
東京、神奈川、千葉、埼玉は出張費無料。
その他の地域は出張費として交通費・宿泊費実費にてお受けいたします。
**宿泊施設等で、 ツリーイング認定講習会をパッケージにした宿泊プランなどのご相談も受け付けております**
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■ 企業・教育関係研修プログラム ■
身近な自然で楽しめる手軽なスポーツであるツリーイングは、 欧米の森林技術者たちが高所作業を行うための技術をルーツとしており、非常に奥の深い知識と経験に裏打ちされています。
樹木を中心とした森の生態系に対する深い理解、そして、高所で作業を行うための安全に関する技術、 それらは自然教育やリスクについて学ぶのにも最適なプログラムでもあります。
OBTでは、企業・ 教育関係団体、さらにはアウトドアガイドの方々に、木の生態と安全管理、 チームワークといったことを学んでいただける研修プログラムを用意しています。
[ 研修プログラムの特徴 ]
・ ツリーイングを通して身近にある自然に触れる
→見慣れていることや聞き慣れていると思っていることの中に、
まだまだ 『ワンダー』が眠っていることに気づく。
→身の回りへの注意力を喚起する
・ロープワーク、 ツリーイング対象の樹木の選定方法を覚える
→論理的な思考のトレーニング
→樹木選定と運営上の安全管理を学ぶことで、 リスク管理の
方法論を身につける
・ バディシステムでツリーイングに臨む
→チームワーク、リスク管理、 人との協調や補完関係を身を持って体験する
[ タイムテーブル ]
…基本的なプログラムは一泊二日から二泊三日。TMCA認定講習を合わせたプログラムなどご相談に応じます
◇一日目
・集合
・ミーティング
・ツリーイング理論座学→ツリーイングの方法、 バディシステム
・ ツリーイング理論実践
・休憩
・セッティング
・ツリーイング
・座学→樹木選定、 リスク管理について
・ディスカッション
◇二日目
・前日の項目の再確認
・ツリーイング
・バディチェンジ
・ レスキューデモンストレーション
・ ディスカッション
・終了
[ コスト ]
基本費用は、講師の日当が4万円。装備レンタル・教材代が研修生一人当たり2000円となります。
研修生10人までは講師2名、 さらに5人増す毎に1名ずつ追加。
研修プログラムに 「TMCA認定講習会」 を併催することも可能です。その場合は、別途、費用を見積もりいたします。
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■ 森のアクティビティ設計 ■
樹や森の生態系に与えるインパクトが少ないツリーイングの技術を応用して、 森で楽しめる様々なアクティビティを設計します。
ツリーイングを行いやすくし、かつ森の健康を維持するための環境整備から、ロープワークを使ったアドベンチャーコース、 流行のスラックラインなども取り入れて、誰もが自然に触れる喜びを味わえるコースをプロデュースいたします。
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■ 樹木剪定 ■
山深い場所で高木を剪定・ 伐採するために発達したアーボリストの技術をベースとしたツリーイングは、難易度が高い条件の元、 きめ細かい山林作業を得意としています。
高所作業車等の入れない場所、里山の定期的な手入れなど、 樹木の剪定に関する作業を行います。
費用は、現場を下見の上、お見積りさせていただきます。
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■問い合わせ先■
[ OBT・内田 ]
[email protected]
http://www.obtweb.com/
運営主体: Digital Contents lab(デジタルコンテンツラボ=略称DCL)
代表者: 内田一成
所在地: 〒331-0811
埼玉県さいたま市北区吉野町1-363-5 サンハイツA棟102
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2010/02/16 カテゴリー: 01.アウトドアライフ, 06.ツーリズム | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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ブルース・チャトウィンが旅の相棒として、常に肌身離さず持っていた手帳。パタゴニアでも、 オーストラリアのアボリジナルのテリトリーでも、そして、彼が命を落とす原因となった中国奥地の旅でも、彼は、 この"モグラ革装"と喩えられる手帳に、旅の思いを綴った。
チャトウィンが愛したモールスキンは、イタリアの片田舎で頑固な職人が一つ一つ手作りする伝統工芸品ともいえるようなものだった。 チャトウィンは、いつも自分がモールスキンを買っていたパリ市街の片隅の文房具屋で、モールスキンの職人が亡くなって、 手に入らなくなるという話を聞いて、「ありったけのモールスキンを取り寄せてくれ」と頼む。だが、すでに、工房は売りに出されていて、 その店では手配がつかなかった。
チャトウィンは、残り少なくなったモールスキンのストックを携えて旅に出る。そして……。
この手帳に何かを書きつけるとき、このチャトウィンの逸話が蘇ってくる。
モールスキンは、その後復刻され、チャトウィンの逸話をブランドストーリーとして、世界中で愛される手帳となる。
チャトウィンが使っていた家内工業で作られていた頃のものとは違うだろうが、この手帳を手にとって、そこに文字を書きつけてみると、 その吸い付くような表紙の手触りと、どんな筆記具でも優しく受け止める紙の感触に虜となってしまう。
ぼくは、このモールスキンのもっともプリミティブなモデルともいえるポケットサイズの"クラシカル・ プレーン"を読書メモとして愛用している。
読んだ本の印象的なフレーズをペリカンのロイヤルブルーインクを入れたラミー・アルスターでカリカリと書き付ける。 さらにモンブランのブラウンインクを入れたペリカンの#250で感想や注釈をサラサラと記す。
かなり小さな文字で書き留めてきた一冊をついに使い切った。
30冊あまりの本について書き留めてきたこのモールスキンの一冊は、自分にとってかけがえのないバイブルとなった。
そして、今日から、新しいバイブルを作り始める。
2010/02/15 カテゴリー: 02.ライフスタイル | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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……レイラインハンティング 日本編 vol.1 より一部抜粋……
第一章 【東北 巨石文化とアラハバキ信仰】
東北における巨石信仰の源流とは何だろう。
縄文から続く原始信仰が蝦夷に伝わり、蝦夷は民族神としてアラハバキを信仰した。アラハバキ神は巨石に降臨する。鉱山の神、 産鉄神でもあり、それは後に出雲の信仰にも通じていく。ストーンサークルや大石神ピラミッドに見られる巨石遺構などは、 そんなアラハバキ信仰の源流ともいえるだろう。
アラハバキ神が巨石に降り立つイメージは、そのまま神道にも取り入れられて今に続いている。神が降り立つ特別な岩、それを神道では 「磐座(いわくら)」と呼び、磐座そのものが御神体とされているケースも多い。
ゲーテは、地質に関する様々な論考を残しているが、とくに花崗岩を特別な存在と考えていた。それは、地球の創生の記憶を内に秘め、 宇宙へ向かって地球の意思を放出する一種の記憶装置で、花崗岩の上に人が位置したとき、その内部に秘められた「地球の記憶」 をリーディングできるのだという。そして、この北東北で生まれ育った宮沢賢治も、しばしば静かな月夜の晩に花崗岩盤の山に登り瞑想し、 そこで神から啓示を受けたような瞬間を体験した。賢治の代表的な絵画作品に「日輪と山」があるが、 あの宇宙へ向かって大地が食指を伸ばして宇宙の象徴たる太陽を捕らえようとしているかに見える光景は、 磐座の上で得たインスピレーションを表したものだったかもしれない。
巨石遺構に使用されている岩はほとんどが花崗岩であり、元々花崗岩の岩盤の場所で、その露頭に手が加えられていることも多い。 花崗岩の中に含まれる石英(水晶)は、外部から衝撃や圧力が加わった際に、その力を特定の周波数の振動に変換する。 時計で用いられる水晶(クオーツ)発振はその特性を利用したものだが、花崗岩を用いた巨石遺構では、 特定の日の太陽の光が集中されることによってそれが一定の周波数の振動を生み出す。そして、 配置された巨石全体に共鳴を起こして電磁波や重力の変化を誘導する。それが、大地に眠る力を汲み出し、 あるいはそこにいる人間の意識を変性させる。そのようにも推測できる。
エジプトのピラミッドやストーンヘンジが、何故、わざわざ遠く離れた山から岩を切り出してきて、 それを砂漠や草原の真中に積み上げなければならなかったのか……それも花崗岩のそんな性質を考えれば納得できる。
元々、地霊の沸き立つ「聖地」に花崗岩を据え付けることで、より強く鮮明に地霊の雰囲気を感じることができるようになる…… 巨石遺構は、そのような「装置」ではなかったのか。
ところで、再び大湯ストーンサークルの万座に立ち戻って、万座-黒又山-上大石神ピラミッドラインを見直してみよう。 方位角50度を示すこのラインを万座ストーンサークルの西側に立って、その中心にある立石と黒又山の頂上が並ぶように仰ぎ見る。 するとその先、遙か彼方にかすんだ山並みが描くスカイラインが重なっているのがわかる。このスカイラインの一角が、 まさに上大石神ピラミッドなのだ。これは、この仰角のついた直線の先に位置する星座を指すのではないだろうか。
エジプトのギザピラミッド群を研究したグラハム・ハンコックは、 ピラミッド群の配置が紀元前1万500年前のオリオン座の形を映すもので、 そのときの春分の日の夜明けにオリオン座が正確に南中することを確かめた。同様に、黒又山とこれを軸にしたレイラインは、 ある時代の特定の星座を指し示しているのかもしれない。
●坂上田村麻呂の呪い●
三内丸山の文明は気候変化などによってその後衰退するが、三内丸山を築いた縄文人たちの末裔である蝦夷は今の北関東から東北、 北海道全域に渡って分布し、独立した立場を保っていた。
8世紀、西から勢力を伸張してきた大和朝廷が「東国」支配を目論んで蝦夷の天地に侵攻を開始する。ところが、蝦夷の抵抗は激しく、 送り込まれた朝廷の軍勢はことごとく敗走することになる。
そのまま、三内丸山から延々と続いてきた蝦夷の平和が続くかに見えた……。
9世紀、朝廷は最後の切り札として、武運の誉れ高い坂上田村麻呂を起用する。そして、長年抵抗を続けてきた蝦夷は、 あまりにもあっけなく、田村麻呂の前に平定されてしまう。
田村麻呂を征夷大将軍として起用したのは桓武天皇だった。桓武は平安京遷都に当たって風水や陰陽道を駆使し、 自らが死に追いやった実弟の早良親王の怨霊を封じたことでも知られるが、唐様の習俗や文化を積極的に取り入れて呪術政治を行った。 その桓武天皇の腹心であった田村麻呂は、当然、陰陽道にも精通していた。 ただし武人である彼は恒武のように徹底した陰陽師であったわけではなく、 実際的な力である武力と霊的あるいは心理的な力といえる陰陽道とをうまく使い分ける巧みな戦略家だった。
三内丸山の縄文精神を受け継ぐ蝦夷たちは人間と土地との結びつきを重要視していた。限りない恵みを与えてくれる大地に感謝し、 その大地と対話できる場所を聖地として祭っていた蝦夷たち。その蝦夷の聖地に楔を打ち込んで、 これを機能させなくすることでまず精神的なダメージを与え、 それで骨抜きになった蝦夷に対して武力攻撃で止めを刺すのが田村麻呂の戦略だった。
オーストラリアのアボリジナルは、聖地を結んで全土に網の目のように広がる「ソングライン」 という精神的ネットワークをイメージしていた。聖地と聖地を結ぶ一本のラインには、それぞれ固有の歌があてはまる。 歌にはライン上の地形や土地の資源などが織り込まれていて、初めて訪ねた土地でも、その歌さえ知っていれば、無事に旅を続けられた。 このソングラインが道路や鉄道の建設によって寸断されてしまうと、聖地は力を失い、土地そのものが死んでしまう。アボリジナルは、 長年受け継がれてきた精神遺産であるソングラインをずたずたにされて、まさに生きる屍となってしまった。
アボリジナルと同様に、蝦夷たちも聖地を結ぶネットワークを持っていた。それが、三内丸山をハブとするレイラインであり、 大湯-黒又山-上大石神ラインだったのだろう。蝦夷が東北に築き上げたソングライン同様のネットワークがうまく機能していれば、 大地は健康であり、大地と不可分である自分たちも健康であり続けられる。蝦夷は、そんな風に考えていたのかもしれない。
田村麻呂はそんな蝦夷の精神世界を逆手に取った。
今回の旅は、三内丸山遺跡を起点に大規模なスートンサークルを繋いで南西に大湯ストーンサークルまで辿り、大湯から北東へ黒又山、 上大石神ピラミッドを結ぶラインを辿った。さらに、上大石神から三内丸山へラインを引いてみる。上大石神と三内丸山を結ぶライン上には、 今のところ、顕著な遺跡や「聖地」は認められないが、三内丸山、大湯、上大石神を結ぶ三角形を見ると面白いことに気づく。 この北東北に絵かがれる三角形の内側に、その面積の大部分を占める形で、十和田湖がすっぽり収まっているのだ。
強大な水神が眠る湖として太古から信仰の対象とされてきた十和田湖は、巨石遺構を結ぶレイラインに囲まれると同時に、 岸辺にも巨石遺構が残っている。風水や陰陽道では、幾筋もの龍脈を流れてきた気が龍穴というポイントで集中する。 龍穴は池や湖であることが多いが、それは水が「気」を溜めてさらに増幅するコンデンサの役割を果たすとされるからだ。そして龍穴に溜まった 「気」は、龍=水神に象徴される。当然、太古の巨石信仰を受け継ぐ蝦夷にとって十和田湖はこの上ない聖地であった。
その十和田湖の中に突き出た中山半島。その根本に十和田神社がある。
巨木が立ち並ぶ暗い森の中に一筋の径がつけられている。両側は一見、自然の崖のようだが、 よく見るとむき出しの溶岩の岩盤に混じって、長い年月の間に木の根がからまって覆い隠された石垣が見える。それは、 かつてここにあった巨石遺構の痕跡だ。さらに両側から崖が迫った切り通しを抜けて行くと、 周囲の自然にどことなくそぐわない厳しい雰囲気の社が現れる。
この神社は、坂上田村麻呂によって創建された。坂上田村麻呂が東国に創建した神社は数多いが、 十和田神社はその中でもっとも蝦夷の勢力の奥深くに食い込んだ場所に位置している。しかもここは蝦夷にとっては、強大な「気」 が集中する巨大龍穴であり、最重要ともいえる聖地だった。坂上田村麻呂は、まさに蝦夷の聖域中の聖域に楔を打ち込んだのだ。
坂上田村麻呂が朝廷から東征の任を受ける前、この地を本拠とする蝦夷は、 アテルイというアラハバキ神を奉じるシャーマニスティックな指導者に率いられ、強大な勢力を誇っていた。坂上田村麻呂の前任者たちは、 ひたすら朝廷の強大な武力に頼り、力でアテルイ軍をねじ伏せようとした。ところが、数の上では半分以下、 ときには十分の一以下のアテルイ軍にことごとく敗退させられてしまう。そして、桓武天皇によって、 最後の切り札ともいえる坂上田村麻呂が派遣される。
坂上田村麻呂はただちに武力攻撃でアテルイ軍を攻略せよという朝廷の命令を当初無視して、まったく異なる方法をとる。それが、 蝦夷最大の聖地に対する霊的攻撃ともいえる十和田神社の創建だった。
大湯ストーンサークルから十和田神社は方位角22度45分の方向になる。このラインを十和田神社を超えてそのまま伸ばしていくと、 下北半島のつけ根で「石文」という地名の場所に行き当たる。ここでは「日本中央の碑」が出土している。
「日本中央の碑」は「壺の碑(つぼのいしぶみ)」として古くから和歌に詠まれてきたもので、 長く伝説上の架空の存在であると信じられてきた。平安時代の歌学書『袖中抄』には以下のように記されている。 「みちのくの奥につものいしぶみあり、日本のはてといへり。但、田村将軍征夷の時、弓のはずにて、 石の面に日本の中央のよしをかきつけたれば、石文といふといへり。信家の侍従の申しは、石面ながさ四五丈計なるに文をゑり付けたり。 其所をつぼと云也」。坂上田村麻呂が東国征伐の際に弓の端で「日本中央」と刻んだ石文を置いた。 その場所は蝦夷地奥のつぼであったという記述だ。
石文とは、今でも北東北に残る風習で、小石あるいは大型の置石に自分の意志や願いを込め、それを神殿や道祖神、 あるいは祭壇に当たる場所に置くというものだ。坂上田村麻呂がこの場所まで進軍したという記録はないが、 坂上田村麻呂に代わる者がこの石を置いたとすれば、ここに記された「日本中央」の文字は、「日本中央=朝廷がこの地の支配者である」 というメッセージであり、蝦夷の聖地に対する呪いであっただろう。
長い間、壺の碑は、千人の人間が引いて東北町にある千曳神社の地下に埋めたとされ、明治9年に明治天皇が北東北を巡幸した際に、 千曳神社の境内の発掘を命じたが、結局、発見されなかった。
昭和24年、千曳神社から東へ4㎞あまり隔たった東北町石文地区の山林内を歩いていた猟師が、 地面から突き出した不思議な立石を発見する。それを掘り起こしてみると、石の表面に「日本中央」の文字が刻み込まれていた。これが今に残る 「日本中央の碑」だ。ただ、この石碑は刻まれた文字が稚拙で、仮に伝説が伝えるように弓の端で刻んだにしてもまだお粗末なものに見える。 そんなこともあって、いまだにまともな研究対象にはされていない。
この石碑の真贋はともかく、 出土したとされる場所も伝説の残る千曳神社の場所も大湯と十和田湖という蝦夷の一大聖地を結んだライン上にあるという点に注目したい。
坂上田村麻呂は、まずは北東北の聖地の中でももっとも重要だった十和田湖に十和田神社という楔を打ち込んだ。 さらに蝦夷の領域の奥深く、十和田神社とも関係するラインの末端に「日本中央碑」という楔を打ち込んだ。これによって、 蝦夷のソングラインともいうべき聖地ネットワークが寸断されてしまった……。
それまで威勢を駆って都にまで攻め入ろうというほどだったアテルイ軍は、坂上田村麻呂が率いる軍勢に対して、突然劣勢となり、 各地で敗退し、ついには総崩れとなってしまう。そして、首領のアテルイは坂上田村麻呂に捕らえられ、都に送られて打ち首となる。
坂上田村麻呂以前の征夷大将軍たちがことごとくアテルイ軍に敗れ去ったのに、坂上田村麻呂軍は、 戦端を開いた途端にアテルイ軍を圧倒し、鮮やかに殲滅してしまう。その背景には、アテルイ軍の士気を阻喪させる心霊戦…… 心理戦の効果があった。陰陽道にも長けていた坂上田村麻呂の戦略に蝦夷は屈したといえるのではないだろうか。
だが、広い東北の地に広がる蝦夷が、坂上田村麻呂一代によって完全に殲滅され、朝廷色に塗りつぶされたわけではなかった。
時を置いて、蝦夷は復活してくる。中世には、それが藤原王朝として平泉に花開いた。
今でも東北を旅していると、土地の持つプリミティブな力=地霊の強さをはっきりと意識する。 坂上田村麻呂はある部分では蝦夷の地霊を支配し、改変してアテルイに勝利したが、 広大な東北地方全域まで地霊をコントロールすることは不可能だった。
蝦夷のしたたかさは、太古から縄文そして中世へと脈々と受け継がれてきた巨石信仰=アラハバキ信仰に由来するのかもしれない。 巨石信仰と結びつくアラハバキは天空神であり漂泊神である。天の力と大地の力の両方に通じた神であり、巨石遺構の場所に降臨し、 レイラインを伝わって移動していく。そして、アテルイにアラハバキが憑依して絶大な指導力と運を手にしたように、 ある瞬間にその場にいる人間にとてつもない力をもたらす。たしかに坂上田村麻呂によって一つの重要なレイラインは封じられたが、 北東北の巨石信仰レイラインのチャンネルはそれだけではなかった。
中世東北にキラ星のように出現した藤原王朝もまたアラハバキを奉じていた。藤原王朝の基盤は、 後に津波で壊滅することになる十三湊を軸にした大陸との交易と、金の採掘だった。それが朝廷をも凌駕する巨万の富をもたらした。
竹内文書と同様、これも典型的な偽史にあげられる「外東日流外三郡誌」がある。そこには、古代、 津軽に朝廷を凌駕する東北王国があり、それもまたアラハバキ神を奉じ、十三湊を本拠としていたとされた。内容を全て信じることはできないが、 十三湊の繁栄やアラハバキ信仰の実体など、無視できない部分も多い。
大石神ピラミッドと三内丸山を結ぶレイラインをそのまま北西へ伸ばしていくと、まさに「外東日流外三郡誌」 に登場する聖地や大規模な巨石遺構がそこに並んでいるのが見て取れる。これは、坂上田村麻呂が封じたレイラインのまだその先に、 もしかしたら大陸につながっていく、さらに強力なレイラインが存在し、 それが後の藤原王朝の繁栄をもたらしたことを物語っているのではないだろうか。
ところで、その藤原王朝も信じがたい栄華を極め、強大な軍事力を誇りながら、鎌倉幕府によってあっけなく滅亡させられてしまう。 それは、坂上田村麻呂によって滅亡させられたアテルイの最後に驚くほど似ている。
押し寄せた潮が一気に引くように、忽然と姿をくらましてしまうかのように見える蝦夷。じつは、 彼らにとって北東北は自らの文明の中心ではなく、南に伸びた前衛の一部で、その本拠は遠く大陸に存在するのかもしれない。だとしたら、 世界のほかの地域の巨石文明ともその先で繋がっていたに違いない。
2010/02/13 カテゴリー: 06.ツーリズム, 08.スーパーネイチャー | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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これは、2009年にいちばん感銘を受けた本だった。
『「まちがっている」と「自明のことだ」という二つの意見に分かれる話題はどんなものであれ、いいテーマに違いない』 という冒頭の言葉から、いきなり強烈なインパクトがある。思わず、「さすが、WIED編集長!!」と喝采してしまう。
クリス・アンダーソンは、「ロングテール」を提唱して、 誰もが表現できなかったネット時代のニッチな商品やコンテンツが注目されるコンシューマーの消費行動と傾向を喝破したが、今度は、 商品やサービスが「フリー」に向かっていく、ネオ資本主義社会の構造を披露した。
今までの手に取れる「実物」をやり取りする経済をアトム経済と呼び、 ネットを介してデータ=ビットをやりとりする経済をビット経済と呼ぶ。
乱暴に要約してしまうと、ビット経済では、輸送コストや在庫コスト、それに関わる人員コストなどがほとんどいらず、 限界費用は極限まで下がっていく。そこに利益を求めるのではなく、限界費用の最低限つまりフリーにまで押し下げて、 それで人の注目とアクセスを集め、「内部相互補助」によって、 他の場面で収益を上げる構造を作れと説く。
今、様々なものがビットに置き換えられ、フリー化しているが、その流れは止めることはできない。だったら、それを積極的に利用して、 プロモーションを行い、ビット化できないものの価値を高めていけばいい。
クリス・アンダーソンは、自らのその理論を実践するために、この本をネット上に無料で公開した。期間限定ではあったけれど、 30万ダウンロードを記録し、印刷版は全世界でそれよりも遥かに多い売上を記録した。
紙の書籍としてもベストセラーとなったのは、彼の巧みな戦略の成果だが、本来、彼としては、「フリー」 というビットコンテンツが大きな話題を呼ぶことで、自らの講演活動の価値を高めるのが真の意図だった。 元々ネームバリューの非常に高い彼だからこそ、無料で公開したコンテンツの紙書籍版もベストセラーになったのだといえる。
じつは、ぼくも彼に習って、 新たに出版する本を電子ブックのコンテンツとして無料で配布もしくは電子ブックリーダーにバンドルするつもりで準備を進めていた。
アメリカでは2007年にAmazonがKindleをリリースして、 電子ブックを専用のリーダーで読むという読書スタイルがすっかり定着した。日本では、 昨年の終盤になってようやくKindleが正式にアマゾンの日本法人からリリースされたが、 まだオフィシャルとしての日本語対応はできておらず、日本語のコンテンツも皆無に近い状況だった。
それが、この春には正式な日本語対応モデルが登場すると噂され、それを機に日本でも電子ブックリーダーが普及し始めることになれば、 日本語コンテンツとして先鞭をつければ、高いプロモーション効果が期待できると考えたわけだ。
ところが、年が明けると、AppleがiPadを発表し、電子ブックリーダーの世界が、世界的にも一気に広がる気配となってきた。
Kindleだけであったら、まだ日本国内ではマニアックなデバイスで、コンテンツを無料で公開しても、 そこで失う読者以上のプロモーション効果が見込める。だが、iPadも含めて、 一気に本格化する電子ブック市場にフリーの原理を持ち込んでしまったら、紙の書籍の収益を落とすことは間違いない……クリス・ アンダーソンほどの知名度があれば別だろうが。
そして、何よりも、印刷と流通というアトムな出版の世界ではもっともコストがかかる部分がカットできて、 限界費用が安い電子出版では、当然のように定価を低くすることができ、中間業者がないぶんマージンも少なく、 最終的な利益は紙の出版よりも大きくなる。
そんな状況が見えてきて、紙の書籍のプロモーションとして電子ブックを「フリー」 のプロモーションツールとして利用するという発想は切り替えることにした。 紙の出版のプロモーションツールとして電子ブックを使うのではなく、電子ブックをメインのコンテンツとして、ここに収益の主軸を置き、 紙の書籍は逆に電子ブックを補完するような位置づけにする。
クリス・アンダーソンも、これからのフリーをベースにしたビジネスは、社会の変化に合わせて、 柔軟にシフトしていかなければならない。ステレオタイプになるなと説くが、彼の理論を実践しようとして、まさに、 そんなめまぐるしい変化に対応するケーススタディを行うことになったわけだ。
電子出版が世界的潮流なる兆しを見せ、既存の出版社は、今まで通りの利益を確保したい、 あるいは出版の世界での自分たちの既得権益をなんとか守りたいと必死になっている。
「フリー」では、電子出版が主流になる世界では、出版社は既得権益にしがみつくことをやめ、 より創造的な仕事に特化していくべきだとする。また、ジャーナリズムもプロとアマチュアの境界が曖昧になりつつあり、 プロのジャーナリストの仕事は、アマチュアジャーナリストの訓練なども含むものへと広がっていくと予言する。
あらかじめ「フリー」を読み、クリス・アンダーソンの視点に感銘していたおかげで、 これから出版界を洗う荒波も嬉々としてサーフィンしていけそうだ。
2010/02/08 カテゴリー: 07.本 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (1)
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