ほのぼのとしたイラストと、 昔の人が季節の移ろいを意識して日常の風景の中に見られる象徴を綴った二十四節気七十二侯の文言が収められた『えこよみ』 の07-08年版が最後のページとなった。
二十四節気の最後は「大寒」、七十二侯は「にわとりとやにつく」、そして季節が一巡した締めくくりは「節分」となる。
寒さが極まり、温もりが蘇ってくる中に春の兆しを感じ、にわとりは卵を産み始める。そして、 季節が一巡する中で溜まった穢れや邪気を追う最後の節分には「追儺」を行う。
えこよみを都度に紐解きながら暮らしていると、季節の循環に合わせた人の感覚の移ろいや行事の意味がよく理解できる。 漫然と暮らしていると単調な日常に埋没し、自分を取り巻く自然の変化や息づかいに気づかぬまま、「昨日も今日も明日も……何も変わらない」 という無感覚に囚われてしまう。
今、自分が暮らしている環境では、鶏小屋は近くにないので、にわとりがとやについたことを確認はできないけれど、 この文言を目にしただけで、遠い昔、実家で飼っていたにわとりの様子が思い出され、「そういえば、今頃、餌をやりにいくと、 小屋の隅のほうで羽根を一杯に膨らませてたっけな」なんて、具体的な姿が蘇ってくる。
自分が自然に生かされている、人は自然とともにあるということが自覚できれば、それだけで心は安らいでくる。
世間に新しいカレンダーやスケジュール帳が出回る昨年の秋頃から、新しい『えこよみ』は出ないのだろうかとアンテナを張っていたが、 ちょうど七十二侯が終わるこの節分のタイミングで新版が発売された……気が急いていたことに、 「まだ自分はえこよみが解いてくれる季節の移ろいを実感できるようになっていないんだな」と、少し恥ずかしく感じながら、 さっそく09年版を注文した。
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