OBTの本編では、ワーキンググローブの項でアウトドアグローブの一つの定番として 『グリップスワニー』を紹介したが、最近では、革製のグローブはほとんど使用していなかった。
最近、ツリーイングをする機会が多くなり、ロープワークでのグローブの摩擦が多く、また革製のものを使う必要が出てきた。
グリップスワニーも、堅牢性という点ではいいのだが、最初のうちは革が硬く、 フィッティングがアバウトでいきなりロープワークに使うのは難しい。長年愛用したものも、最初は突っ張って使いづらく、 何年もオイル含浸などのメンテナンスをして、ようやく手に馴染んだ。「道具を自分に合ったものに育てていく」 といった仄かな喜びが味わえるのはいいのだが、この冬は、いきなり実用として使いたい。
そんなことをしばらく考えていたときに出会ったのが、前回のエントリーでも紹介したCACA-ZANだ。
「ワーキンググローブ=初期は硬くて手に馴染みにくいもの」、という思い込みがあったせいで、ツリーイング用のグローブも、 このときオーダーしたライディンググローブと同じディアスキンでオーダーしようと思っていた。
ところが、出石手袋を訪ねて、 そのとき同道したGofieldの森田さんがオーダーを考えていた牛革製のワーキンググローブを試着させてもらうと、これが、 自分が抱いていた牛革のイメージと大幅に違うしなやかな革で、すぐにツリーイングでも使えるものに思えた。
さすがに、しなやかさでは定評のあるディアスキンに比べればごつい質感だが、 アウトドアショップで売られている既成のどんな牛革のワーキンググローブに比べても、しなやかで、ぴったりとフィッティングする。
「これなら、わざわざディアスキンにする必要はないですね」、と出石さんに、言うと、「ワーキンググローブとしてラフに使うなら、 ましてロープワークのように摩擦も多い使い方をするなら、牛革がいいですよ。ディアスキンだと、銀面(革の表面)が柔らかいから、 摩擦でささくれてしまいますけど、牛革なら大丈夫です」とのこと。
また、ワーキンググローブははじめのうち硬くて革も厚いので、細かい作業には向かないというのは、 ぼくの思い込みだったこともわかった。
まず、革が硬く感じるのは、なめしが十分でなかったり、均質な厚みの革を使っていないことが多いためだという。さらに、 細かい作業がしづらいというのは、普通のワーキンググローブは、手の形に裁断した表と裏の二枚の革を合わせたスタイルが多く、 それでは親指の動きが制限されるため。
CACA-ZANのワーキンググローブは、親指部分はライディンググローブなどと同じように、 独立したパーツで立体的に取り付けられ、全体がものを掴んだ形に成型されているので、いきなり自然なフィーリングが味わえる。
ものを握ったときに、ステッチが手に当たったりせず、素手の感覚を大切にしているのもCACA-ZANの特徴だが、たしかに、 グローブを嵌めて、何かを握ったときにはっきりとそのフィーリングが体感できる。
Gofieldの森田氏は、友人が鉈を使うときに嵌めていたこのグローブを借りて、その自然なホールド感に魅せられて、今回、 オーダーすることにしたというが、ぼくは、これをまずライディンググローブとして使ってみて、 今まで試した他のどんなライディンググローブよりフィット感が高いのに驚かされた。
不快なステッチの当たりもなく、ハンドルグリップを握ったときに、掌全体が吸いつくような感触で、指を動かすのにも、 カッティングパターンの良さとしなやかな革の特性のおかげで、自然なレバー操作ができる。
「これなら、ライディンググローブをオーダーする必要はなかったのでは……」とも一瞬思ったが、『吊るし』 のワーキンググローブでこのフィット感だと牛革よりずっとしなやかなディアスキンのオーダーグローブでは、いったい、 どんなフィーリングなのか……いよいよ楽しみになってきた。
**ものを掴みやすい形に、親指は、
ライディンググローブと同じように別パーツで構成されている**
**立体的に構成されるフォルムは、普段、リラックスしているときの手の形そのままで、
へんなツッパリ感などはなく。長時間着用していても、疲れも違和感もない**
**耐久性の高い厚手の牛革ながら、部材をうまく使い分けることで、しなやかさがあり、ギュッと握ったときの抵抗も少ない。また、
このしなやかさを利してフィット感の高い、ややタイトなフォルムに仕上げられているので、
細かい動作も自然にできる**
**掌側と甲側で微妙にシャーリングの位置が違う。
これも手首の動きを阻害しないための独特の工夫**
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