**いろいろな素材を前にし、
手の形から、それに合わせたカッティング、グローブのフォルムと、話は尽きない。ユーザーの手の形から、
癖や好みまで徹底的にリサーチして一つのグローブを製作するCACA-ZAN、出石氏。手の型も取ってくれるので、一度訪ねれば、次からは、
自分専用の型で、様々なタイプのグローブをイージーオーダーで製作してもらえる**
先月、四国香川に本拠を置く 「CACA-ZAN」というハンドメイドグローブのブランドを紹介したが、そのとき宣言したように、 ライディンググローブをオーダーしてきた。
高松で、新しいプロジェクトを始める打ち合わせがあり、昼から午後一杯、 skypeでニュージーランドと結んだテレビ会議をこなした翌日、その会議の主催者だった香川のGofieldの社長、森田さんとWEBの統括責任者馬渕さんとともに、 CACA-ZANブランドの出石さんを訪ねた。
前回お邪魔したときは限られた時間しかとれず、グローブをオーダーすることができなかったので、ぼくは、今回、 高松空港に降り立った瞬間から、心はCACA-ZANへと飛んでいた(笑)。 自分だけのグローブをオーダーしたいという気持ちもさることながら、出石さんというレザーとグローブのエキスパートと、素材やカッティング、 パターン、そして縫製等々の話を心行くまでしたいという下心も大きかった。
Gofieldの森田さんは出石さんとは以前からの知己で、出石さんを直接紹介してくれたのは森田さんだった。その森田さんも、 アウトドア用のワークグローブをオーダーしようと以前から考えていた。馬渕さんはといえば、出石さんのアスリート仲間……というか、 弟子のようなもので……今回訪ねた三人が、それぞれに出石さんとは、縁が深い。
忙しい最中に訪ねたにも関わらず、またしても、素材の話から始まって、あれやこれやと話は尽きない。
今回は、ぼくも30年以上に及ぶライダー人生で、自分がとことん納得のいくグローブをオーダーしようということで、 思いのたけをすべて出石さんにぶつけた。
前回伺ったときに、しなやかで張りのあるディアスキン(鹿革)にすっかり惚れ込んでいたので、 素材はディアスキンにすると決めていた。色は、黒、キャメル、ブラウンと三種類あるのだが、これは決めかねていて、 それぞれの色の素材を見せてもらった。
ぼくは単に、色の違いは、「銀面」と呼ばれるレザーの表皮の色の違いだけだと思っていたのだが、じつは、 なめしとともに染料も含浸させるので、色の違いは、レザーそのものの風合いの違いにもなるのだという。
実際、グローブに加工する前のレザーを見せてもらうと、しなやかさや伸び具合、バックスキンの稠密度などが、 確かに微妙に異なっている。
さらには、一口に「ディアスキン」といっても、流通の問題で、北米産のものが入ることもあれば、 ニュージーランド産のものが入ることもあり、産地による違いもかなりあるという。
そういった微妙な差異をじっくり確認するためには、やはり自分で足を運ぶしかない。
あれやこれやと吟味していると、忙しい仕事の手を止めて、それを嫌がるどころか逆に嬉々として、「これはどう、じゃ、 こっちはどう?」と、出石氏は、次々にレザーを持ってきて風合いを試させてくれる。
**次々に、
とっておきの素材を取り出して、詳細に説明してくれる出石氏。「一人のユーザーにここまで付き合っていたら、採算に合わないでしょ」
と思いつつも、好奇心が湧いてきて止まらなくなってしまう(笑)。こういう、本物の職人さんと話を始めると、
ほんとに時間を忘れてしまう**
そんな中、ぼくが選んだのは、ブラウンレザーだった。これをもとに、 CACA-ZANブランドで用意されている既製モデルのもっともシンプルなスタイルで作ってもらうことにした。
ブラウンを選んだのは、単にライディンググローブとしてだけでなく、冬場のタウンファッションとして違和感なく使えること。そして、 吟味させてもらったブラウン素材のバックスキンが他と比べてとても稠密で、まるでベルベットを裏張りしたような密着感が、 なんともいえず心地よかったからだ。
**これが、
ぼくが選んだブラウンバージョンのベーシックモデル。ステッチをなるべく使わず、レザーの持つしなやかさで、動きをカバーし、
使い込むほどに手に馴染んで味が出る。甲のほうは、
伸縮性に富んだディアスキンの特性を生かして一枚革のシンプルなスタイルとして、指の部分は、「ガンカットタイプ」と呼ばれる、
銃のトリガーを引くときの微妙な感覚も伝わるフィット感の高いパターンとした。ぼくは、バイクライディングの際に、
クラッチ側は人差し指と中指をレバーに掛けっ放しにし、ブレーキ側は人差し指を掛けっ放しにして、微妙な操作をする。それには、
最適なカッティングのパターンだ**
グローブといえば、バイク乗りにとっては、もっとも馴染み深く、そして自分なりのこだわりのあるギアだ。
ぼくも、30年以上のバイク歴で、自分の手に嵌めたグローブはもはや数えようがない。バイクライディングだけでなく、 ロッククライミングやアウトドア、サイクリング等々、自分が没頭してきたアクティビティを全て含めたら、 ぼくの手を覆ってきたグローブは100や200では足りないはずだ。
言わせてもらえば、ユーザーとしてはグローブのエキスパートであり、人一倍、拘りが強いと自負できる。そんな自分が、 初めて香川の出石手袋を訪ねて、CACA-ZANブランドのグローブを自分の手に嵌めたとき、「こんなにフィットするグローブには、 今まで出会ったことがない」と感動した。
今回、いろいろ話していて、気がついたのは、出石さんの手とぼくの手の形がほとんど同じで、ぼくのほうが一回り大きいということ。 彼と手を合わせてみると、全体のフォルムと掌と指の長さの比率が、笑ってしまうくらい同じだった。
CACA-ZANのグローブは、出石さんの手の形を基準に型が起こされている。サイズ違いのぼくは、 彼の手のサイズにぴったり合わせたLサイズより一回り大きなLLサイズなら、ほとんどオーダーといえるフォルムだったわけだ。
「内田さんの手の形なら、既製のものでも、まったく問題ないかもね」
と、やや職人魂が萎えた雰囲気の出石氏に食い下がって、徹底的にディテールを詰めていって、
ぼくは既製モデルの小指の長さを5mm延長するオーダーをお願いした(笑)
ぼくのほうは、素材選びでかなりな時間がかかったが、ワークグローブをオーダーする目的で行ったGofieldの森田さんは、 素材はすんなり決まったものの、手の形が出石さんも呆れるというかびっくりするほど特殊で、こちらは、 既製の型をアレンジするだけでは済まず、新たに型を起こすことになった。
今回、ぼくはバイクライディング用のグローブとともに、ツリーイング(木登り)用のものも合わせてオーダーするつもりだったのだが、 これは、森田さんが目を付けていたワークグローブが、まさに用途にドンピシャリで、 こいつの場合はライディンググローブほどにシビアなフィット感が要求されるわけでもないので、既製のモデルをそのままいただいた。
**今回、
四国から一緒に帰ってきたワークグローブ。ツリーインググローブとしてさっそく活躍中。北米産の牛革素材だが、とてもしなやかで、
アウトドアショップでよく目にする同じような製品とは、まったく質感が違う。このグローブに関しては、
また別立てでインプレッションする予定なので、お楽しみに!!**
といったわけで、じつは、まだ前置きなのだが、語りつくせないくらい、中味の濃い、四国行き、グローブオーダーの顛末だった。
次回は、オーダーグローブが手元に届いているはずなので、その詳細をお届けしよう。
**生まれついてのユニークな手のフォルム故、
完全フルオーダーとなった森田氏。「職人魂を揺さぶられる手でしょ、ぼくの手は」と森田氏。「こんな手の形作るのは、めんどくさいよ」と、
出石氏(笑)**
**今回、オーダーするにあたり、
様々なパターンを見せていただいた。幸いぼくはノーマルな手の形をしていたが(笑)、顔形が違うように、手の形、
指の長さなども千差万別であることを痛感した。森田さんのように、今まで、既製のグローブでは違和感ばかりあったという人は、ぜひ、
CACA-ZAN=出石手袋を訪問すべし!!**
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