最近、おとなしくデスクワークする時間が多くなって、気分転換も兼ねて、コーヒーの自家焙煎を復活した。
この夏は、久しぶりに能登を巡り、半島の突端にある二三味珈琲で、芳しい焙煎の香りを嗅いだが、そんな時を懐かしみながら、 焙煎機の中で爆ぜていた豆の音を思い出しつつ、タイミングをはかりながら焙煎網を振る。
初めは炎に豆を近づけ、パチンパチンとポップコーンのように最初の爆ぜがおこって豆が開く。半ば爆ぜたら、少し火から離して、 今度はチリチリと焼きに入る。
この焼き加減が微妙で、豆から立つ音と、煙の上がり方、そして香りで判断しながら、好みのローストに仕上げていく。
今日焙煎した豆は、ペルー産のオーガニック栽培のもので、天日でじっくり乾燥されている。大粒のきれいな豆が揃っていて、 なかなかに筋がよろしい。ミディアムを狙い、頃合いを見計らって火を止め、急いで団扇で荒熱を飛ばしてやると、 均質な焙煎に仕上がった豆たちが現れた。
ふと、「育ちのいい生徒たちが集まったクラスを指導する教師は、こんな気分なんだろうな」と思った。
サイフォン用に、少し細かく挽いて、淹れると、水分が抜けた豆は何倍にも膨らんで、芳醇な香りを立てはじめる。 香りもスッと凛々しく、味わいも素直で筋が通っている。いかにも優等生で、清清しく、飲んだ後の切れ味も最高だった。
……だけど、次は、思い切り癖のある、したたかな豆と格闘して、そいつをねじ伏せて味わってやりたくなった。
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