午後から新しいプロジェクトについての打ち合わせ。
新しい技術をもとにして、まだ世界中のどこにもないシステムやコンテンツについて話し合うのは実に楽しい。 ランチミーティングからそのままの流れで夜まで、叩き台にしたチャートに次から次へと項目が加わっていった。
初期のブレストでは、とにかく思いつくままにアイデアを出していくことが肝心だ。そこから、 コアコンピーテンシーを加味したロードマップを作り、細部へと入っていく。
デジタル系のコンテンツは、クリエイティヴな部分と『理詰め』の部分が、ちょうど旨い具合にハイブリッドなのが心地良い。
他のメディアの仕事では、例えば誰かがアイデアを提出したときに、それを主観だけで判断しがちだ。そのアイデアが「好き」か「嫌い」 か。建設的な意識をもったメンバーばかり集まっているところならいいけれど、人のアイデアを批判ばかりして足を引っ張る輩がいると、 ミーティング全体がトーンダウンして、ありきたりなものに収斂してしまいがちだ。
その点、デジタルコンテンツは……とくに今回のように新しい技術が絡むデジタルコンテンツは、 その技術をどう生かすかという観点からコンテンツの中身や演出を考えていくから、単に「好き」、「嫌い」ではなく、 客観的な判断をできるのがいい。いくら批判的な意識をもった人間でも、技術が持つコアコンピーテンシーを生かして、 それで他のモノと差別化できたり、新しい表現手法が生まれるといった客観的な基準を頭ごなしに批判することはできない。もっとも、 変化の激しいこの世界では柔軟な思考が要求されるから、保守的な脳みその人間が関わることは滅多にないけれど……。
まるまる半日、様々な可能性を検討して、自前のCPUもかなりオーバーヒートしたので、その後はプロジェクトリーダーのK氏と一杯。
彼とはSEGA時代からの付き合いだ。ぼくがシナリオのチーフとしていろいろな世界をイメージし、 それを彼の会社がリアルな3DCGとして構築してくれた。とにかく徹底的に細部までこだわって、北京の故宮をリアルに再現して、 ゲームイベントがその中で起きなくても、ただ探索しているだけで時間が過ぎてしまう、そんなモデルを作ったりしていた。
久しぶりに二人でじっくり語り合って、新プロジェクトの可能性などの話からSEGA時代の昔話へと移っていった。
当時、飛ぶ鳥落とす勢いだったSEGAには、様々な人材が集まっていた。社内の人材もとてもユニークな人間ばかりで、 クリエイティヴな雰囲気に溢れていた。
ちょうど10年前、プロジェクトが解散し、それぞれがそれぞれの道に散っていった。ある者は長年いた会社を離れて自分で起業し、 ある者はライバルだったSCEやMicrosftへと移っていった。
そして、気がついてみると、新プロジェクトでは、当時の懐かしいメンバーたちがまた集まりはじめている。
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