リフトの終点から1時間半あまり、途中 、断続的なブリザードに足止めさせられた割には、順調に高度を稼いで、 八方池に到着しました。
八方池といっても、もちろん今の時期は雪に埋もれて、水を湛えた池があるわけではありません。そこは、 唐松岳に続く八方尾根から北側にテラス状の雪原となっています。
八方池を見下ろす尾根上には、「風切り地蔵」があります。これは、白馬に七つ確認されている風切り地蔵の一つで、 池を挟んで北西にある小さな祠、飯森神社奥社と結ぶことで、里にある飯森神社里宮を指し示しています。
また、飯森神社奥社と風切り地蔵、飯森神社里宮を結ぶ直線は、ほぼ、冬至の日の出の方向を指しています。
どうして、この三者が結ばれているのか、いったいどうやってこの正確さを出したのかは、不明です。
じつは、白馬には、こうした冬至の日の出と夏至の日の入りを指し示すラインがたくさんあります。それは、一説には、 農事暦ではなかったかと言われていますが、ほとんどが個々の地蔵や物件は見えない位置にあるので、農事暦としての実用性は薄いでしょう。
白馬を中心として、長野県内とさらには関東、近畿と巡った約1年間に及ぶテレビの取材が、これで終了しました。神社仏閣や遺跡、 地蔵などを結ぶと現れるこの不思議な直線「レイライン」を追ったNBS長野放送の特別番組は、4月の下旬に放映されます。 詳細な日時がはっきりしましたら、またあらためてお知らせします。
さて、GPSを使っての位置の検証を終えて下山に掛かる頃には、白馬三山や五竜岳に雲が掛かり、 ブリザードの間隔も短くなってきました。上層には、低気圧が近づいていることを知らせる絹層雲も出始めて、 この場所も悪天候のまっただ中に飲み込まれるのは時間の問題です。
慌てて下山を開始したぼくたちと入れ替わりに、太い新雪用のスキー板やスノーボードを手にしたエクストリーマーたちとすれ違います。 彼らは、オーストラリアやニュージーランドから、わざわざこの白馬までやってきて、 北アルプスの主稜線からバックカントリーへとエントリーしていきます。
昨年は、自らが巻き起こした雪崩に巻き込まれて、ニュージーランドからのスキーヤーが何人も死亡するという事故がありました。 彼らの行動を「無謀」と片付けるのは簡単ですが、今日も、ブリザードを真っ正面から受けても怯まずに登っていく彼らの姿を見ると、 あっけらかんとリスクに立ち向かっていく姿に、強い羨望を感じました……。
**ブリザードに吹き付けられて露出している風切り地蔵。一見穏やかなようだが、 油断すると尾根から吹き飛ばされそうな強風が吹き荒れている。ここで、 借り物のストックを飛ばされてしまった**
**八方池を挟んで風切り地蔵の対岸に位置する飯森神社奥社。こちらも強風で、 祠には雪がついていない**
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