今年は暖冬で雪が少ないにもかかわらず、前回はリフトを降りた時点で猛吹雪のホワイトアウト状態となって断念した白馬八方池までのスノートレッキングに再挑戦してきました。
前日は麓でも雪が降って、予報では翌日には大荒れになるというちょうど狭間のような一日、白馬八方尾根のリフトを乗り継いで、 第三リフトの終点から1時間半ほどの道のりを辿って、今は雪の下に埋もれる八方池まで行ってきました。
天気は最高で、北は白馬三山から、南は鹿島槍ヶ岳までの山並みが青空を背景に真っ白でエッジの効いた稜線を刻んでいます。でも、 やはり低気圧が近づいていることを感じさせる突風が雪煙を巻き上げて吹き、一部痩せ尾根では肝を冷やす場面も……。
麓のゴンドラリフト乗り場では小春日和のうららかな陽気で、「こりゃ、上はTシャツ一枚でも大丈夫そうだね」 などと軽口を叩いていたのに、高度を上げて行くにしたがって、ブリザードの勢いが強くなり、その息継ぎの間隔も短くなっていきます。
見上げる北アルプスの主稜線に雪煙が舞ったかと思うと、それがしばらくしてこちらの稜線にまで吹き付けてきて、 顔を上げていることもできません。
今回はスノーシューを履いて登りましたが、スノーシューが必要な積雪はごく一部だけで、 例年より雪が少ない上に強風に吹き飛ばされて、クラストした雪面はアイゼンのみのほうが歩きやすいくらい。 平年ならこの稜線上も2m以上の積雪があるはずですから、今年の異常さが尋常でないのがわかります。
今回は、ぼくが昨年からずっと取材に関わっているNBS長野放送の特別番組の取材で、雷鳥研究の第一人者であり、 山岳環境研究所所長の北原正宣先生が同行してくださいました。
北原先生は、もう長年この山域に入って、冬場も雪洞や山小屋に籠もって調査研究を続けてこられた北アルプスの大ベテラン。 そんな人を案内人としてお願いするのだから、とても贅沢な取材です。
道々、山での思い出話や、年々少なくっていく雷鳥の実態、さらには熊などの他の野生生物に関するフィールドワークなど、 興味が尽きません。じつは、北原先生とは、昨年11月の山行でも同行で、そのときは木の実を食べるために熊が枝を折って木の上に作った 「熊ダナ」や様々な動物が木に残した爪痕や角の研ぎ跡などを解説してもらい、単に山に登るだけでなく、 そうしたアニマルトラッキング(本来は動物の足跡のことを言いますが、ここでは広義の痕跡を指します)を確認しながら行くと、 山が実に多彩な動物たちのプロムナードであることを実感できて、別な世界が開けたような気がしました。
**八方尾根ゴンドラリフト乗り場下の駐車場で登山の準備。この時点ではポカポカ陽気で、 Tシャツ一枚でも行けるのではないかなどと楽観していた**
**最終リフトを降りて歩き出す。 快晴の空と真っ白いスカイラインのエッジのコントラストが素晴らしい**
**白馬三山もはっきり見えているが、白馬岳の頂上に怪しい雪煙が……**
**第二ケルンまでは、時折、気まぐれなブリザードに見舞われるも、 比較的快適に登ることができた**
その2へ続く
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