標高2150m、硫黄岳の山腹に位置する本沢温泉は、通年営業の温泉としては日本最高所にあります。なかでも、 硫黄岳の爆裂火口の下にある野天風呂は、ワイルドそのもの。
紅葉のトンネルを潜って野天風呂へ向かうとカモシカが迎えてくれた
本沢温泉に到着して、少し休憩した後、八ヶ岳の稜線、夏沢峠に向かいます。その途中で道を左に分けて野天風呂へ。 色づいたナナカマドや紅葉のトンネルを抜けて、硫黄岳の展望が開けると、硫黄の臭いが鼻を突きます。
黄色い硫黄が析出した斜面を下りていくと、前方の斜面に動く、黒い大きな影……。
「熊!?」
一瞬、立ち止まって、身構えると、むこうもこちらをゆっくりと振り向きました。
それはカモシカでした。成獣で、大きさは小牛くらいあります。熊でなかったことに安心しましたが、それでも下手に刺激して、 こちらに突進してこられたらひとたまりもないことに変わりはありません。
しばらくそいつとにらみ合っていると、フッと向こうの方がこちらへの興味をなくしたように力抜き、方向転換すると、 傍らの木の葉をムシャムシャと食べ始めました。かくして、谷の下では人間が風呂に浸かり、 そこから20mほど離れた斜面ではカモシカがのんびりと食事…… といういかにもナチュラルライフな光景が展開することとなりました(笑)
この野天風呂は白濁した硫黄泉で、湯温は適温。ゆっくり風景を楽しみながら浸かることができます。小さな湯船が一つきりで、 脱衣場もなく、いかにもな「山のいで湯」です。
本沢温泉から夏沢峠へは、 苔むした北八ヶ岳らしい登山道が続く
野天風呂を後にしたら、登山道に復帰して、傾斜を増した北八ヶ岳らしい苔むした道を淡々と登っていきます。 本沢温泉から八ヶ岳の稜線に位置する夏沢峠までは1時間あまり、車を降りてから稜線に出るまではトータル2時間半。 本格的な山岳である八ヶ岳の稜線を踏めるルートとしては、危険箇所もなく、もっともお手軽なコースです。
夏沢峠からは硫黄岳の頂上まで足を伸ばす予定でしたが、残念ながらガスの中。これでは展望も期待できないので、 今回は夏沢峠でゆっくりと昼食をとって休憩することにしました。
平日ながら、北八ヶ岳のプロムナードということもあって、他にも稜線を辿ってきたり、 反対側の夏沢鉱泉のほうから登ってくる人がいたり、けっこう賑やかです。この峠には山彦荘と夏沢ヒュッテ、二つの山小屋があって、 宿泊はもちろん、悪天候の際はその中で休憩することができます。
さて、下りはいとも簡単に本沢温泉に。20年前に訪れたときは小さな山小屋が一つあるだけでしたが、宿泊棟と温泉棟が増築され、 見違えるように立派になっていました。まず、野天風呂の入浴料600円を払い、さらに内湯の代金800円を払って、温泉棟に向かいます。
本沢温泉の内湯で登山の汗と疲れを癒す。 表の紅葉が湯船に映って、秋満喫気分
こちらのお湯はやや白濁した透明で若干熱めです。
窓の外には色づいた紅葉があって、それが湯船に映り、全身で秋を満喫できました!!
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