お盆の入りの深夜、ここ鹿島灘の海岸に近い田舎町では、間断のない稲光と地響きを伴った雷鳴が鳴り響いている。
じつに久しぶりにお盆を実家で過ごすことになり、のんびりしつつまっとうに墓参りをしようと思ってやって来たのだけれど、「波乱」含みのおかしな雰囲気だ。
まず、常磐自動車道を普段なら千代田石岡ICで降りるところを、今日はその一つ手前の土浦北ICで降りた。
べつに理由があるわけでなく、ただ「なんとなく」いつもと違うルートで祖先の霊が待受ける田舎に戻ってみようという気になったのだ。
高速道路から、国道6号線に入り、片側二車線の道が一車線に合流するちょうどその合流地点に差し掛かり、右車線に合流しようとしたところで、突然、車が異常な振動に襲われて、ストップしてしまった。
エンジンを再スタートして、ギアを繋ごうとするが、クラッチペダルがスカスカでクラッチを切ることができない。どうやらワイヤーが切れてしまったようだ。
JAFを呼び、車はそのまま整備工場へと運ばれていき、こちらは実家から迎えに来てくれた車に乗って実家へ向かった。
それにしても、あのままいつものICまで高速道路を走っていたら、かなりなハイペースで追い越し車線を飛ばしていた車がどうなっていたかと思うと背筋が寒くなる。
また、国道の車線が一つになってからストップしていたら、大渋滞の原因になっていたし、もう少し手前で止まってしまったら、後続車に追突される危険性も高かった。
際どく危機を回避していたことを、稲妻をぼんやり眺めているうちに気がついて、先祖に守られているのだろうか……などと考えてみたりする。
車が止まってしまった場所が伯父の家に近いところだったので、距離のあるディーラーまで運ぶより、とりあえずそこで預かってもらえればと電話するも相手は留守番電話で、仕方なくJAFに車を託したのだが、実家に辿り着いてみると、件の伯父はこちらにいた。
数日前に母に電話をしたときには、今年のお盆は伯父の一家は来る予定がないと言っていたのだが……。
先週は今年初めてのツーリングマップルの取材で南信濃から奥三河を巡っていたが、このときは取材用に借りていたオーストリア製の高性能バイクのリアブレーキがフェードして、山道で危ない目に遭った。
その帰りには、中央道で雷雨に遭った。
この時は、何故か他人事のような感じで実感に乏しく、メーカーのメカニックにトラブルを報告したときに、「よくリアがフェードして大丈夫でしたね」と感心されて、事態の深刻さに気づかされた。
運が良いといえばいいのか、不幸中の幸いといえばいいのか……。
久しぶりに親戚が顔を合わせて夕食を共にして昔話に花を咲かせたが、不意に伯父が「おまえはおばあちゃん子だったよなぁ」としみじみ言った。
祖母は、盆や彼岸には、ぼくを伴って墓参りに行き、お参りの作法や先祖に感謝する気持ちが大切だとよく説いていた。
盆暮れにまともに帰省せず、ようやく顔を見せたぼくに、祖母はほんのちょっとお灸をすえたのかもしれない。
コメント