□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.308
2025年4月17日号
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今回の内容
○占いの歴史…運命の法則を見つけ出そうとする試み
・殷の神権政治と甲骨占い
・肝臓占いで予兆(オーメン)を見るメソポタミア
・エジプト・神官という官僚の確立
・神託の発祥・古代ギリシア
・暦の中に運命を組み込んだマヤ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
占いの歴史…運命の法則を見つけ出そうとする試み
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
時々、占いをテーマとしたテレビ番組の出演オファーを受けたり、雑誌の特集などで占いについて書いてほしいといった依頼があります。最近は、レイラインという言葉がなにやら霊的な意味を含んだ「霊ライン」などと称されて、ご利益や不思議な現象を起こす仕組みとして紹介されたりすることも多く、私もそうした観点でレイラインや聖地をとらえていると勘違いされているようです。
聖地やそのネットワークとしてのレイラインのわたしの取り組みは、スピリチュアルや占いとは全く関係ありません。GPSやデジタルマップというツールを使うことで、アライメントを洗い出し、それが歴史・文化的にどのような意味を持つのかを追求するのが主眼です。
しかし、見方を変えて、占いもひとつの文化としてとらえれば、そこには積み重なった長い歴史があり、ユングが集合的無意識と易との関連に注目したように、人間の精神と根源的につながる部分があります。占いが当たる当たらないといった皮相な話はナンセンスですが、占いというものと人の精神・心との関係に注目するのは、聖地学的にも正当なアプローチといえます。
人類の歴史は、ある一面を見ると「予測できないこと」との格闘の歴史でもあったといえます。昨年の年初に能登を襲った大地震の記憶はまだ生々しいですし、未曾有の被害を出した東日本大震災も、事前に予知ができる可能性はなかったのかと、今でも考えさせられます。さらに、次の大災害がいつ起こるのかと、常に心の片隅には拭いがたい怯えがあります。
個人のレベルでも、他者の行動や感情にもとらえがたいものがあるし、さらには、自分自身の心の動きも不確実で、時に予想もつかないものです。そうした、未知なる不安や、自分の行動に絶対的な自信が持てないときに、心を落ち着かせてくれるものとしてあるのが、占いだといえるでしょう。
また、古代社会の多くにおいて、占いは統治と社会秩序形成の根源的な技術ともいえるものでした。それは意思決定のメカニズムを提供し、権威を正当化し、人間と神聖な領域との関係を媒介するものでした。そうした国家や権力での意思決定の手段としての占いは、それを行う神聖な場所としての聖地を生み出すことにもなりました。
AIや量子コンピューティングといった先端技術が目覚ましい勢いで進化し、未来の輪郭が明確になりつつある現代にありながら、一方で人を引きつけてやまない占い。今回は、そのルーツとともに、人の心・精神とどのように関わってきたのかを辿ってみたいと思います。
●殷の神権政治と甲骨占い●
東洋で、占いが一つの体系として確立したのは紀元前1600年頃~紀元前1046年頃に中国で栄えた殷王朝だといわれます。一般に「神権政治」といわれる王が神と直結していると考えられた政治体制が特徴で、日本の古代の天皇制や国家神道もその例のひとつともいえます。
殷の神権政治は、王が最高神(上帝)や祖先の霊との仲介者とされ、「国の大事は祭祀と軍事である」と言われるように、祭儀と軍事を王権を支える根幹として、占いが統治の中心に据えられていました。
殷代の占いは、主に亀の腹甲や牛の肩甲骨を用いて行われました。骨や甲羅に熱した金属棒を当てることでひびを入れ、その形状によって吉凶を判断するもので、このひびを指す言葉が「兆(きざし)」でした。今でも、「兆し」は予兆の意味で用いられています。
この甲骨占いは、祭祀、軍事行動、狩猟、農業(豊作)、気象、天災、王や王族の健康状態、出産等々、国家運営と王の生活のあらゆる側面に関わっていました。さらには、「卜旬」と呼ばれる、次の10日間の吉凶を占う定期的な占いも行われていました。
占いの結果は、神や祖先の意志の表明と解釈され、王の決定を直接的に方向づけ、正当化しました。また、王が占いを通じて神聖な領域と交信できる能力は、その権力の重要な源泉でもあり、王の正統性は、この能力によって裏づけられていました。
第22代殷王武丁(紀元前13世紀半ば頃)以降には、占いの内容や結果も合わせて甲骨に刻まれるようになりました。この記号が甲骨文字です。甲骨文字は、複雑な占いの内容を詳述するために発展し、殷代の後期には口語を忠実に記録できるほどにまで発達し、仮借(かしゃ)や形声を用いて、象形文字では表しにくい抽象的な概念や文法機能語も表記できるようになっていました。
>>>>>続きは「聖地学講座メールマガジン」で
初月の二回分は無料で購読いただけます。
最近のコメント