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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.260
2023年4月20日号
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◆今回の内容
○白山信仰から辿る渡来と日本文化
・白山信仰の源流
・殺牛祭祀
・鉱山と猿楽・能楽
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白山信仰から辿る渡来と日本文化
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前回は、渡来系の人々が古代の日本に根づいて、彼らが持ち込んだ信仰が神社信仰の底流にあることを紹介しました。その冒頭で、白山の神である菊理姫が元々「高句麗姫」と呼ばれていたものが転訛して「ククリヒメ」になったという説とともに、菊理姫を祭神とする白山信仰を開いた泰澄が渡来系の秦氏の出自であることに触れました。
白山信仰については、そのように簡単に紹介しただけで、続いて、典型的な渡来の信仰を源流とした神社信仰の例をあげていきましたが、今回は、この白山信仰を糸口に、渡来民たちの信仰だけでなく、産業技術や芸能が、日本文化に大きな影響を与えたことを掘り下げてみたいと思います。
●白山信仰の源流●
民俗学者の宮田登は、『民間信仰辞典』の中で、白山信仰を以下のように紹介しています。
「白山信仰とは、石川県と岐阜県にまたがって鎮座する白山比咩神社に対する山岳信仰。加賀白山は、富士山と並ぶ万年雪をもつ秀麗な山岳であり、白山の名称もそこから生まれたと考えられている。山神は、主神に菊理姫命という女神が設定されている。
この女神は、かつて伊弉冉命が、伊弉美命を冥界に訪れ、死穢に触れたため現世に戻れない状態になった時、禊祓をすすめた神格として知られている。つまり原初的意味は、穢れを払う神ということになる」。
宮田がこの中で触れている日本神話の逸話は、『日本書紀』神代巻第五段の一書の十に、「是の時に、菊理姫神亦た白す事有り」と触れられているだけで、その素性や神の系図のどこに位置する神なのかは記されていません。結論を先に言えば、前回触れたように、「菊理姫」は「高句麗姫」の転訛であり、そもそもが朝鮮由来の神であったというわけです。
今では、白山信仰のルーツは、中国・北朝鮮国境にそびえる白頭山(別名太伯山、中国名は長白山)にあるというのが定説になっています。この信仰を伝えたのも渡来系の人たちであり、日本式の白山信仰を確立した泰澄もまた渡来系でした。
『渓嵐拾葉集』には、泰澄の父の三神安角は秦氏の出で、日本海での海運に従事していたと記されています。母は伊野氏で、この一族も渡来系と考えられています。泰澄の母は白玉の水精を懐中に入れる夢を見て懐妊し、泰澄は6月に生まれますが、その月に季節はずれの雪が降ったと伝えられています。この泰澄の出自そのものに、白頭山信仰のキーワードが散りばめられています。
白頭山は朝鮮民族の始祖である檀君が天から降臨した山とされます。現在は北朝鮮領内になるので、自由な登山はできませんが、北朝鮮の金一族もこの山を神聖視していて、金正日や金正恩が白馬で白頭山麓を駆ける姿を誇示したりするのは、自らの正統性を朝鮮民族に訴える意味があります。
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