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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.251
2022年12月1日号
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◆今回の内容
○<甕>の神名が示すもの
・滅ぼした悪神(敵将)の名を取り込んだ神
・甕星の聖地
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<甕>の神名が示すもの
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私の自宅の庭には40年近く前に植えられたイロハモミジがありますが、これが今年は見事な紅葉を見せてくれて、リビングの大きく取った窓の向こうで光を反射して、室内を優しい光で包んでくれていました。
それも幾度かの雨と風ですっかり散り落ち、もう今年は紅葉も見納めだなと思っていたところ、出先でまた盛りの紅葉と出会い、なんだか充実した秋を二度味わえた気分になりました。それは、茨城県日立市にある大甕神社の境内でしたが、ここは自宅から50kmあまりも北なので、もうすっかり冬枯れになっているだろうと思ったのに、うれしい誤算でした。この神社は海に近い高台に位置しているので、海風を受けて温かいのでしょう。
大甕神社は地味で、交通の便もあまり良くないので、参拝客が大勢訪れるようなところではないのですが、何故か私の周りでは、この神社が好きな人が多く、私自身も調査などではなく、ときどき、ふらっと訪れたくなるところです。
TBSの「世界ふしぎ発見!」で何度か一緒にロケをしたミュージシャンのShockEyeさんは、この5,6年の間に400社以上の神社を訪ねたという芸能界でも有名な神社ファンですが、彼も大甕神社が一番好きな神社だと言っていました。理由は説明できないけれど、なぜかここに惹かれるという彼に、この神社の歴史的な背景などを話すと、それでかなり納得したようでした。
今回は、この大甕神社から話をはじめたいと思います。
●滅ぼした悪神(敵将)の名を取り込んだ神●
大甕神社は、タケハヅチ(建葉槌)を祭神としていますが、神社の名はここでタケハヅチが滅ぼした土着の神であるアマツミカボシ(天津甕星)の「甕」から取られています。大いなる甕星の神社というのですから、祭神よりも滅ぼされたほうを大切に祀っているように見えます。
実際、社殿の背後にある「宿魂石」と呼ばれる巨岩が御神体で、この巨岩こそタケハヅチによって粉々にされたアマツミカボシだと伝えられ、その魂を祀る頂上にある祠が「御神殿」と呼ばれています。巨岩の袂には拝殿があり、ここにはタケハヅチが祀られていますが、本殿とされる祠にはアマツミカボシが祀られ、地元でも、この表向きの祭神よりもアマツミカボシを本来の神として祀ってきました。なにやら、隠れキリシタンが表向きを偽装して、本来の神を密かに祀ったかのようです。
これはいったい、何を意味しているのでしょうか。それは、この地方が古代に蝦夷と大和の勢力が戦った場所であることに関係しています。それをこれから少し説明しましょう。
アマツミカボシは、日本書紀に悪神として登場します。別名アメノカガセオ(天香香背男)もしくはホシノカガセオ(星神香香背男)とも記されています。
『日本書紀』巻第二 神代下 第九段一書には、「一書に曰く、天津神、経津主神、武甕槌神を遣して葦原中国を平げ定めせしむ。 時に二神曰く、天に悪しき神有り。名を天津甕星、亦の名を天香香背男(アメノカガセオ)と曰う。請う、先ず此の神を誅し、然る後に下りて葦原中国を撥はらわん」とあります。
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