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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.215
2021年6月3日号
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◆今回の内容
○意識と聖性
・芸術の発露それとも類感呪術
・洞窟であること。そして変性意識
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意識と聖性
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中沢新一は、アースダイバーシリーズの最新巻『アースダイバー 神社編』の冒頭をこのような一文からはじめています。
「初期の人間は、真っ暗な洞窟の奥での儀式を通じて、最初の『聖地』をつくりだしたのである。真っ暗闇の中に長時間こもっていると、脳とつながっている視神経が内部から励起しはじめて、自分から光を放つように体験されるようになる。この現象は『内部光学(エントオプティック)』として、科学的にも観察されている。またこの現象は人間の心へのサピエンスの出現と重なり合っている……」
これは、『洞窟のなかの心』の中で、著者のデヴィット・ルイス・ウィリアムズが提唱した〈内在光学現象〉を援用した話です。
暗い洞窟内にいた初期のホモ・サピエンスに、この現象が作用して、それまで動物的本能に反復学習という機能が加わっただけの<原初意識>しか持たなかったものが、観念を操作できる<高次意識>を持つようになったというのがウィリアムズの理論の基本になっています。
この講座の第143回『聖なるものと人』では、人が<聖なるもの>としてある事象を意識するメカニズムについて触れましたが、それは、人間がある事物を自分以外の対象として「意識」して、その上で<聖>なるものというより高次の感覚を抱くというプロセスを前提としていました。
そうした段階的なプロセスを辿る認識ももちろんありますが、そうしたリニアなプロセスをすっ飛ばして、一気に<聖なるもの>として事象を捉えることもあるのではないか。そして、それが、じつは現生人類=ホモ・サピエンスの際立った特徴なのではないかという発想からスタートしたのが、ウィリアムズでした。
今から3万5千年ほど前、ホモ・ネアンデルタレンシス(ネアンデルタール人)から、今の私たちに続くホモ・サピエンスに、一気に地球人類の主役が置き換わります。じつは、それ以前のほぼ1万年ほどの間は、両者が共存していたのですが、3万5千年前を境にホモ・ネアンデルタレンシスは絶滅し、完全にホモ・サピエンスだけになったのです。
この人類の主役の目まぐるしい交代の謎は、考古学者だけでなく様々な人たちの想像力を刺激しました。私の大好きな作家ジェイムズ・P・ホーガンが『星を継ぐもの』でテーマにしたのも、まさにこのミッシング・リンクでした。
ホーガンは、突如として地球上に現れたように見えるホモ・サピエンスは、今はない木星の巨大な衛星に住んでいたもので、それが破滅的な戦争によって自らの星を破壊してしまい、生き残りが地球に到達してネアンデルタール人に置き換わったという壮大なストーリーを描き出します。
このストーリーには、小惑星帯がどうして生まれたのか、月はどのようにして地球の衛星となり、またその裏側だけにクレーターが多いのかといったこともストーリーに取り込んで説明しています。
ユヴァル・ノア・ハラリは、『サピエンス全史』の中で、ホモ・サピエンスがなぜネアンデルタール人を駆逐して地球の覇者になれたのかを、社会心理学と文明論的なアプローチから詳細に解き明かしました。
冒頭に中沢新一を挙げたのは、彼の『アースダイバーシリーズ』と私のレイラインについての研究が、ちょうど同じような発想でスタートして、常にシンクロするように展開してきて、「聖地」についてのビジョンが完全に一致したように感じられたからでした。『アースダイバー 神社編』では、「レイラインは存在する」という一項を設け、太陽信仰と聖地の方位について、詳細に解説しています。
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