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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.159
2019年2月7日号
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◆今回の内容
◯生活のコスモロジーと聖地
・はじまりの島と山岳
・垂直軸と庭園の構造
・物語と都市
◯お知らせ
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生活のコスモロジーと聖地
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最近、個人の方から、住居や事業所について、立地する場所を見立ててほしいとか、家屋の構造などについてアドレスしてほしいといった依頼をいただくことが増えてきました。
そうしたことは、本来、家相や風水を鑑定する専門家の仕事で、聖地を専門とする私の範疇ではないと思っていたのですが、何例か手がけてみると、聖地の立地条件やその構造を援用することでかなり理想的な住環境や労働環境が実現できることがわかりました。
そもそも聖地とは、その場が、単に「聖なるもの」が顕現した場であるというだけではなく、土地の歴史や文化と密接に結びついていて、さらに、大きな自然や宇宙との結びつきが感じられるような構造を秘めています。そして、そこには、介在する「人間」の存在が不可欠です。人がそこを「聖地」として強く意識するからこそ聖地として存在しているともいえます。
そう考えれば、家屋が立地する場所と土地の歴史や文化が結びつく糸口を見つけ、自然や宇宙と結びつく構造を取り入れて、それを住む人がはっきりと自覚できるようにすれば、そこはまさに「聖地」となるといえます。万人が認める「聖なるもの」の顕現の場でなくても、そこにいることで、土地や宇宙と繋がっているという感覚がもたらされれば、人は大きなやすらぎと心のゆとりを感じることができます。それはパーソナルな聖地といっていいでしょう。
このことの詳しい話は、『トポスの個人鑑定』というタイトルで、ブログ記事にしましたので、ぜひ、そちらもご参照ください。
https://obtweb.typepad.jp/obt/2019/01/topos.html
人はかつて日々の営みの中で、周囲の環境との一体感やもっと大きな自然、宇宙との繋がりを意識していました。たとえば、季節の移ろいを四季として捉え、さらに二十四節気・七十二候として細分化し、自然の移ろいとそれにつれて出没位置を変えていく太陽や星々を意識して暮らしていたました。それは、「生活のコスモロジー」とでも呼べるようなものでしょう。
聖地も、そんな生活のコスモロジーと結びついています。
今回は、そんな観点から、いま一度、聖地の成り立ちを振り返り、生活のコスモロジーとどのように結びついているのか考えてみたいと思います。それは、現代社会で失われている生活のコスモロジーを取り戻すきっかけになるかもしれません。
●はじまりの島と山岳
世界中の創世神話を見渡してみると、その多くは混沌とした水の中から島が生み出されて始まります。さらにその原初の島は、もっとも重要な聖地として、不死の伝説と重なっていきます。
日本神話の最初は、イザナギとイザナミが別天津神(ことあまつがみ)たちから天沼矛(あめのぬぼこ)を授かり、それで大地が漂う混沌をかき混ぜ、その矛の先から滴った雫が、最初の国である淤能碁呂島(おのごろじま)になります。
ヒンドゥー教では、乳のような良い香りのする水を湛えた海を神々がかき混ぜると、女神ラクシュミーをはじめとして、太陽や月や宝石が現れ、最後に不老不死の妙薬である「アムリタ」の入った壷を手にした神ダンワタリが姿を現したとされます。仏教の宇宙観では、海の中に須弥山を中心として、その東西南北に、東勝身洲(とうしょうしんしゅう)、南贍部洲(なんせんぶしゅう)、西牛貨洲(さいごけしゅう)、北倶盧洲(ほくくるしゅう)という四つの島「四大洲(しだいしゅう)」があると考えます。
道教では、江蘇の海岸の先、東の海上に、仙人の住まう蓬莱山、方丈山、瀛洲(えいしゅう)山があると信じられていました。中でも蓬莱山は、秦の始皇帝の命を請けた徐福の一行が目指した聖地として有名です。マラヤ半島のジャングルに住むセマング族やサカイ族は、海の上に浮かぶ「果物の島」というパラダイスがあり、そこに行けば地上の人間を苦しめているすべての罪悪が洗い流されると考えました。さらに、それは、西から向かわなければ見ることができないと考えられていました。
聖地のイメージが島からはじまるというのは、島が生活の場である陸から隔てられていて、容易に近づけない場所であり、想像力を掻き立てられる存在であることから納得できます。今でも、海の中に孤立した島は、神秘的なイメージを漂わせています。謎の島で次々に起こる超常現象をテーマにしたアメリカのTVシリーズ"LOST"や現代のパラダイスとそこに起こる悲劇を描いたレオナルド・ディカプリオ主演の"ザ・ビーチ"に描かれるように、21世紀の今日でも、島が帯びる神秘性は色褪せていないのです。
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