9月の末に最初のミーティングを持ち、10月中に東京スカイツリー、明治神宮、鹿島神宮、日光東照宮と、計5回の取材を行った"世界ふしぎ発見! 「東京スカイツリーパワースポット伝説」"が、明日、11月10日の21時から放送される。
世界中にミステリーを追って30年の番組だけあって、スタッフもミステリーハンターの坂本三佳さんも、聖地を巡る経験が豊富な上に、ぼくの著作やこのブログなどをじっくりと読み込んで、今回のテーマになる日本のレイラインや結界についての予備知識も万全で、いつものフィールドワーク以上に楽しい経験となった。
前々回の「聖地学講座」でも東京スカイツリーの立地をテーマにしたが、太古の巨石信仰と山岳信仰を伝えるレイラインと江戸時代初期の天海僧正が仕掛けた結界に、昭和に入って整備された鉄道事業が重なり合い、それが21世紀の今でも風水的な要のポイントとして意識されているのが面白い。
太古から古代には、巨石や富士山のような特徴的な山が素朴に聖なるものとして意識され、それに太陽への信仰が重なって、「聖地」が決まっていた。その後、中世になると、魔術的な思考が加わって、風水や陰陽道、そして神秘主義のように、聖地に人間の現実的な意図が折り重なっていく。それは、近代から現代にかけても、進化していく科学技術の影の部分に、予見できない事象をなんとか制御できないかという願いとして潜んでいる。
巨大建築や土木、そして社会システムを含む巨大システムは、それが大きければ大きいほど、不確定要素が増えていく。均衡しているように見える大きな砂山が、小さな砂粒一つが落ちただけで崩壊に向かう「べき乗則」の原理を人類は経験的に知っているだけに、巨大システムの運用には、常に不気味な不安がつきまとっている。風水や陰陽道は、そうした不安を和らげる心理的効果は大きいともいえる。
さらにいえば、我々の心の奥底には、何万年と続いてきたこうした魔術的思考が、実際に物理的な世界になにがしかの影響を与えることもありうるのではないかという想いが染み込んでいる。大きな砂山を崩壊させるのが、小さな砂粒一つだとすれば、魔術的思考がその小さな砂粒に作用することもあるのではないかと……。
大地に描かれたレイラインや結界を追っていくと、それがあまりにも精密であるために、じつは、現代人が忘れてしまった「叡智」が隠されているのではないかとも思われてくる。
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