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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.137
2018年3月1日号
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◆今回の内容
◯日本神話のルーツと精神進化
・「ムスビ=結び」の宇宙観
・似通った創世神話
・4万年前のスピリチュアルインフラックス
◯お知らせ
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日本神話のルーツと精神進化
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先日、アムステルダム在住で一時帰国されていたSさんと会って、神話の話などをする機会がありました。彼女は親御さんの仕事の都合で幼いときからヨーロッパに暮らし、言葉も文化も日本よりも欧米のほうが馴染み深い人です。
Sさんは、ドイツの大学で文化人類学を専攻し、ポリネシアの島々をフィールドワークした経験があって、太平洋の島々の神々と日本の神々の類似性に注目しています。しかし、日本神話を紐解いてみたのはいいけれど、神名が難解で苦労していると言います。
そこで、私が、「漢字は表意文字ではあるけれど、神名に用いられているのは単に音が同じ漢字を当て字しているだけだから、音だけ気にすればいい」と教えてあげると、とても喜んでいました。
私も日本神話を紐解き始めたときにまず躓いたのは、神名表記の難解さでした。ほぼ同じ時期に成立して、内容もほとんど重複する『古事記』と『日本書紀』でも、同じ神の名をまったく異なる漢字表記しているのがほとんどで、これは何か本質的なことを隠すために、わざわざ難解で紛らわしくしてあるのではないかと思ったほどです。
今回は、そんなことから、表記に囚われずに、神名に注目してその意味を明らかにして、日本神話のルーツ、さらにその先まで考察してみたいと思います。
●「ムスビ=結び」の宇宙観●
記紀神話が成立した当時は仮名はまだなく、輸入言語である漢字を無理やり日本語の表記に使っていました。これを「借字」といいますが、借字には統一されたセオリーがなく、適当に音が当てはまりそうな漢字を当てたので、記紀神話内の神名表記もバラバラになってしまったわけです。
普段、私たちは表意文字としての漢字に馴染んでいますから、小難しい漢字で書かれた神名を見ると、無意識のうちに文字が表す意味を追いたくなります。しかし、そうすると、無意味の袋小路にはまり込んでしまいます。
また、中には、漢字表記と意味が合致するようなケースもあって、紛らわしいところです。たとえば、日本神話には『造化三神』という神が最初に登場しますが、その中心の神である天之御中主(アメノミナカヌシ)は、宇宙の中心にある根源神といった意味合いを持っていますから、漢字と意味が合致しています。しかし、他の二神、高御産巣日(タカミムスビ)、神産巣日(カミムスビ)は、漢字を見ても意味は掴めません。アメノミナカヌシは稀なケースで、他の二神のようなケースが一般的です。
漢字を無視して二神を分析すると、「ムスビ」という共通の音を持っているのがわかります。「ムスビ」は「結び」のことで、形なき力動、相互作用の吸引力のようなものを表しています。
『古事記』では、「天地(あめつち)のはじめは、最初にアメノミナカヌシ、タカミムスビ、カミムスビの三神が生まれ、次に国稚(わか)く浮ける脂の如くして、海月(くらげ)なす漂える時、葦牙(あしかび)の如く萌え騰(あが)る物に因りて成りし神がウマシアシカビヒコヂ、アメノトコタチノカミ」と記されます。
まったく何もない無の世界に造化三神が現れたというのは、無からビッグバンによって宇宙が生じるというビジョンにとても近いイメージです。そこから混沌が生まれ、ムスビの吸引力によって、新たな二神、ウマシアシカビヒコヂとアメノトコタチノカミが生成してくるというイメージは、まさに複雑系のプロセスです。まったく収拾のつかないように見えるカオスの中に、ほんの些細な動きが生じ、それが創発を促して一つの秩序へ自己組織化していくというのが複雑系のプロセスで、それは例えば宇宙や天体の盛衰から、人類史における文明の存亡や、経済活動における恐慌と再生など、自然界から人間社会のあらゆるもののバックボーンを成しています。
宇宙論にしろ複雑系にしろ、そうした最先端の知見に繋がるようなビジョンをどうして古事記の神が秘めているのでしょう。そもそもそういったビジョンは、何に由来するのでしょうか。
●似通った創世神話●
無(虚無)やカオスから宇宙が生じたとする神話は、じつは世界中に見られます。
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