トランプが大統領に選ばれたことをいろいろな人間が分析している。おおむね「隠れトランプ票を読みきれなかったのが原因」といったような論調だが、そんなことはどうでもいい。ぼくは、追い詰められた民衆の悲痛な最後の最後の叫びだと思う。
トランプが人格的にもその主張にもおかしなところがあると感じているアメリカ人が大多数だと思う。トランプに票を投じた人のほとんどもそう感じていただろう。だけど、クリントンが勝って、今の格差社会を放置する政治が続くくらいなら、トランプのような「悪魔」に売り渡してでも、変革の兆しだけでも見えてくるのではないかと期待したのではないだろうか。
オバマが華々しく変革を掲げて登場したのに、どんどんトーンダウンして「ありきたりな」大統領に堕してしまい、ますます庶民が苦しむ国になってしまって、いよいよ既成政治に幻滅を感じさせられた反動も大きいに違いない。民主党に幻滅させられた日本人がその反動で保守政治に振れたように。
いちばん怖いのは、トランプを熱狂的に支持するファシストが自らに正統性が与えられたと考えて、どんどんファナティックな方向へアメリカを引っ張って行ってしまうことだ。すでにその兆候はレイシズムとして現れている。少数のナチス信奉者がヒトラーを掲げてドイツと世界を破滅寸前まで追い込んだようなことが、トランプアメリカで再現されるような嫌な予感がする。
いっぽう、トランプは現代に降臨したシヴァ神で、正当な民衆の不満や怒りをぶち撒けさせて、18世紀の市民革命を現代に巻き起こすきっかけになるのではないかとも思う。
いまさら選挙の分析などしても始まらない。トランプ前とトランプ後で、アメリカが、世界がどう変わるのかを想像し、先手が打てるところは先手を打ち、未知数の部分もシミュレーションして、この機会に、日本のポジションをどう有利な方向に持っていくか考えるのが政治家やメディアの役目ではないのだろうか。
個人的にはずっとTPPには反対だったが、アメリカが抜けたTPPなら、もしかしたら健全な貿易協定になるのではないかと思う。よく分析しないとわからないことだけれど、日本にとって不利な内容の多くは対アメリカに関しての部分だったはずだ。だったら、アメリカを抜いた11カ国で考えれば、健全なものになるのではないだろうか。
アメリカが抜けるから日本も抜けるでは、今までの対米追従外交そのままだ。これからのアメリカに今まで通り追従していくことはできなくなるだろうし、本来、追従外交は主体性のない愚かなものだったわけだから、まさにトランプアメリカになることをいい機会に、「独立国」として日本の来し方行く末を考えていくべきだろう。
さらに言えば、ぼくは、今回のトランプ勝利は既成政治や既成国家の終わりの始まりだと思う。全く新しい経済社会システムを生み出す一歩を踏み出すための「溜め」のような後退がトランプというトリックスターの登場だと。
ファシズムを牽制しつつ、ブロックチェーンのような国家という枠組みを超えて広がっていく真に民主的なシステムを蔓延させていかなければならない。
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