地域振興の事業などに関わっていると、「他の地域にはない個性を探してほしい」と言われることがよくある。
しかし、それを探すのはとても難しいし、仮にそれが見つかったとしても観光資源として活かせるだけのポテンシャルがあることは少ない。そもそも、ぼくがたずさわっている歴史的・文化的資源というのは深く掘り下げれば、必ず他の地域に繋がっていく性質のものだ。
そうした、他の地域と通底するものを「個性」として、その同じ「個性」を持つ地域が、それを共通の「資源」として活用するほうが、広がりも出るし、深みも生まれる。そしてまた、「物語」もおのずと浮かび上がってくる。
大陸から朝鮮半島を経由して進出してきた渡来民は、日本の古代史を形成する大きな力となったが、彼らが辿った道で繋がる地域には、共通の「土地の記憶」がいまだ鮮明に残っている。さらに、それに気づいて、渡来民の道筋を辿って、日本文化の深層を見極めようとした人間たちがいたこともわかってくる。「土地の記憶」はそのまま壮大な物語になり、それを辿った先人たちの生きざまもロマンを秘めた物語になる。
そうした物語が紡ぐ現代の巡礼路を創り出すことで、まず地域の「誇り」が蘇り、失われた地域の「繋がり」も復活し、強い連帯意識の元で自信を持った、永続する地域振興が生み出されていく。そんな道を模索している。
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