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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.87
2016年2月5日号
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◆今回の内容
1.『聖地観光』という視点
・聖地に光を当てれば土地が輝く
・ところで、自分の故郷は?
2.お知らせ
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『聖地観光』という視点
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先週末は長野県上田市の別所温泉を中心に周辺の聖地巡りロケをしてきました。
別所温泉は、第72回『大地に描かれた北斗七星』でも紹介しましたが、龍脈を背負って龍穴に温泉が湧き出す風水の理想条件を備えている上に、夏至の朝日が昇る方向が開けて、太陽信仰的な意味でも理想的な地形をしていることから、太古から聖地とされてきた土地です。後に、道教・仏教的な結界も加えられ、より聖地としての色を濃くしました。その結界の一つが大地に描かれた北斗七星だったわけです。
今、上田市は大河ドラマ「真田丸」の舞台として盛り上がっています。別所温泉は真田の隠し湯とも言われ、真田幸村はじめ真田十勇士たちもここで英気を養ったと小説などで紹介されています。真田の旗印である六文銭は三途の川の渡し賃であり、命をなげうつ覚悟で戦いに臨むという心構えを象徴したものとされています。
一方、地元では別な説も伝えられています。それは、真田の本拠地と別所温泉を分ける千曲川を三途の川に見立て、川を渡って別所温泉に行く際に六文銭を川に投げ入れて渡ったことから六文銭が旗印にされたという話です。別所とは仏教用語ではあの世という意味があります。この世でない「別の所」、つまり彼岸であるというのです。真田にとっての別所温泉は、文字通りの彼岸であり、いちどあの世に行ってそこで極上の温泉に癒され、生まれ変わり、力を漲らせて戻ってくる。そんな場所としてとらえられていたのかもしれません。
別所温泉は、日本武尊が東征の帰りに発見し、ここで歴戦の傷と疲れを癒やしたとされ、清少納言も「枕草子」の中で、島根の玉造温泉、三重の有馬温泉と並ぶ三名泉の一つとして紹介しています。武運長久の神である日本武尊が発見し、英気を養った温泉ですから、武士にとってはこれほどありがたい湯もなかったでしょう。真田だけでなく、平安末期には木曽義仲、鎌倉時代の北条氏や戦国時代の武田信玄、江戸時代には上田藩主と家臣団と、時代が変わっても武士たちに愛でられ続けました。
今回ロケした番組は、旅番組仕立てで、主役の女性を私が案内しながら、別所周辺の聖地を巡り、個々の聖地に立ち昇る「ゲニウス・ロキ=土地固有の雰囲気」を感じるという構成になっています。
今、ちょうど編集中で、正式なタイトルは決まっていませんが、今月20日の18時半からBS-TBSで放映されますので、ぜひ、ご覧になってください。
と、少し前置きが長くなってしまいましたが、今回は別所温泉での取り組みを例に、地域興しのツールとして「聖地観光」の可能性に触れてみたいと思います。
【聖地に光を当てれば土地が輝く】
別所温泉では、別所の聖地を観光資源として活用しようというプロジェクトが2013年から始まりました。観光協会と旅館組合、上田と別所温泉を結ぶ上田電鉄、さらに地元の長野大学が一丸となって、別所温泉周辺の聖地とその歴史を見なおし、それを永続的な観光資源として活用しようという試みです。
その初期の段階から参加させていただいて、聖地調査を行なってきたわけですが、今度放映される番組も一つの成果であり、また若い女性やカップルに好評を博している「太陽と大地の聖地温泉でデトックス&チャージ」という旅行キャンペーンや、「聖地の恵み」という地元で採れる材料を使った自然食品ブランドの展開や、これと連動したメニューをカフェや旅館、学食で提供するなど、どんどん具体的な形となっています。別所を訪ねる度に新しい取り組みに出会い、次はどんな楽しいことが待っているんだろうと期待させてくれます。地元の人たちが身近にある聖地の意味を理解してそれを誇りに思うことが、そうした躍動感の源泉になっているのだと感じさせられます。そして、私の聖地調査がそのきっかけの一つになったことをとても誇りに思っています。
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