□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.61
2015年1月1日号
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今回の内容
1 次元の呪いとパターン認識
次元の呪い
パターン認識の方法論
2 お知らせ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
パターン認識
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
みなさま、あけましておめでとうございます!
この「聖地学講座」も今年で4年目を迎え、今回が61号となりました。聖地をテーマにした学術的な研究が存在しない中、宗教学や神話学、人類学、歴史学、地質学、地球物理学、美学・芸術史といった、多岐に渡る分野を援用しながら、聖地とは何か、聖地を生み出す原理は何かという考察を続けてきた3年半でした。
講座を始めた当初は、「聖地学」というひとつの独立した研究分野を1,2年で体系づけようという意気込みだったのですが、フィールドワークと考察を重ねていくうちに、謎が謎を呼び、新しい視点を導入していくうちに、さらに謎が深まっていくという状態になって、とても1,2年で気の利いた体系を築くことなど不可能だと痛感させられました。
胸を張って「これが聖地学だ」と言えるまでにはまだ何年もかかりそうですが、それを目標として、この講座は様々な試論を展開していく場として続けていきたいと思っています。
ときに「聖地」とはまったく関係なさそうに見えるテーマを扱うことがありますが、それも、聖地学を体系化させるために必要な考察であることを理解してお付き合いください。
聖地学講座4年目の初回は、まさにそんなテーマを取り上げたいと思います。
【次元の呪い】
今回のテーマである「パターン認識」は、数学や情報工学の用語です。一見ランダムに見えるビッグデータの中からある規則性=パターンを抽出して、分析の精度を高めたり、変化の予測を立てるものです。
私は、TAOS研究所というパターン認識を専門とする研究所のPR系のアドバイザーもしているのですが、このTAOS研究所では、カオス解析をコアにしたパターン認識によって、ヘルスケアや産業分野への応用研究を行っています。
例えば、心電図や脳波を測る際に、普通に見る脈動だけではなく、より微細なゆらぎを検出します。どういうことかというと、心臓が「ドックン」と一回脈動する中にも、筋肉の微細な震えがあるのですが、その微細な震えの中に見られるゆらぎを検出するのです。大きな脈動では異常が見られなくても、微細なゆらぎにパターンの変化があれば、それは後の心臓疾患の発現に繋がる前兆である可能性が高くなります。
こうした微細なゆらぎのことをカオスといいます。カオスはとても複雑な動きを見せるので、ただそのデータを眺めただけでは、文字通りランダムなカオス=混沌にしか見えません。ところが、カオス理論に基づく解析を行うと、その混沌の中に特徴的なパターンを見つけることができるのです。それがカオス解析によるパターン認識です。
他にも、人の表情の中に含まれるカオスを解析することで、笑顔を浮かべていてもじつは怒りの感情を持っているとか、悲しい顔をしていても心では笑っているといった、隠された心理を露わにすることができます。
産業分野では、金属や構造の疲労を解析し、いつごろトラブルが起こるかを予測します。
そんなカオス解析に代表されるようなパターン認識とは、膨大な情報の中から有意な情報と意味のない情報を振り分け、有意な情報だけを抽出していく技術や理論のことを言います。
「次元の呪い」という言葉はご存知でしようか。なんだかオカルトかスピリチュアリズムの用語のようですが、これもれっきとした情報工学や数学の用語です。どういうことかというと、ある物事を分析する際に、モデルやサンプリングの次元を増やしていくと、問題解決のための算法が指数関数的に増えて、問題が果てしなく複雑になってしまう状態のことです。
統計分析では、サンプル数が少なくては偏った結果になってしまうため、平均値を出せるように十分なサンプル数を集める必要がありますが、これが逆に多すぎてしまうと、結果を出す計算が膨大になり、いつまでたっても解が出せなかったり、ようやく出た解がありふれた平均値で落ち着いてしまいます。もっと身近なところでは、ネット上に溢れる情報をあさっているうちに、自分がいったい何を調べようとしていたのかがわからなくなってしまうということがありますが、このように膨大な情報に振り回されてしまうのも、一種の「次元の呪い」といえます。
端的に言えば、この次元の呪いから脱するために必要とされるのがパターン認識なのです。
コメント