昨日、フェイスブックに以下のような投稿をした。
「ブルース・チャトウィンの『ソングライン』は愛読書の一つですが、めるくまーるから引き継いで再版した「英治出版」は、原田英治さんという方が自分の名を冠した若い会社であることを今日知りました。そして、友人がその英治出版と親しいということも。いろいろな縁が繋がっているんですね。ほんとに。http://obtweb.typepad.jp/obt/2010/11/songline.html」
それで、またぞろ『ソングライン』を引っ張りだして、パラパラとめくっていたら、カインとアベルについての記述が目に止まった。
「"アベル"は、『息』や『蒸気』を意味するヘブライ語の"へベル"に由来している。これは、彼自身の命も含め、生き、動き、はかなく消えるもの全般を表す。"カイン"の語源は"カナー"という動詞とされており、この語には「獲得する」、「手に入れる」、「財産を所有する」のほか、「支配する」、「征服する」という意味もある。"カイン"はまた"金属細工師"を意味する。中国語を含むいくつかの言語において、"暴力"や"征服"を表すことばが金属の発見と関連していることからすると、科学技術という黒魔術を用いるのは、カインとその子孫の宿命なのかもしれない」
ジャレド・ダイアモンドは、『銃・病原菌・鉄』で、鉄を利用するようになった民族が他民族に対して優位になり、多民族を支配するようになっていった過程を描いている。鉄器は強靭な武器となり、さらに車輪を生み出し、武力と機動力を得た民族は、周辺の他民族、さらに遠方の民族まで征服していった。そして、民族が混交していくことで病原菌耐性が生まれ、様々な病原菌を保菌する民族が新大陸に進出したときには、銃砲という圧倒的な戦闘力とともに病原菌で圧倒し、先住民を壊滅させた。
日本史を振り返ってみても、5,6世紀に朝鮮半島からの渡来民が鉄の文化を持ち込むことで、渡来民を取り込んだ大和朝廷が優位になり、ついに日本を支配するという構図が見える。
鉄の文化=武器=黒魔術の歴史は、その後も続き、現代では他民族支配ではなく、社会的な勝者と敗者という構図を生んでいる。
カインとアベルは、旧約聖書『創世記』の第4章に登場する話だが、紀元前5世紀から1世紀の間に成立したといわれる旧約聖書に、すでに鉄の文明が孕む問題が提起され、それから二千数百年が経過した今、深刻な人間性疎外の問題となっているわけだ。
ウクライナで旅客機が撃墜され、ガザで一般市民がイスラエルの砲撃によって殺され、そしてフクシマでは鉄の文明の象徴ともいえる原発が爆発し、いまだに汚染を広げている。
チャトウィンは、カインの子孫である現代人が黒魔術を用いるのは宿命なのかもしれないと言うが、我々東洋人は、まだどこかにアベルの血も受け継いでいると信じたい。そして、鉄の文化=黒魔術から、精神性に重きを置いた共生の文化へと移行していく知恵を発揮して、新しいパラダイムを築く主役になっていきたい。
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