□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.44
2014年4月17日号
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今回の内容
1 徐福伝説再考
・徐福の出自再考
・徐福の足跡と日本神話の関連
3 お知らせ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
徐福伝説再考
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前回の配信記事で、日本への渡来伝説が伝わる徐福の出自が不明であるという書き方をしました。しかし、『史記』などの記述には、徐福が斉の出身であったという記述がみられます。
日本では、徐福は伝説上の人物とされていますが、中国では文革終了後に研究が急速に進み、徐福は実在した人物として考えられるようになっています。
今回は、中国の徐福研究の成果に基づいて、日本と徐福との関係を掘り下げてみたいと思います。
【徐福の出自再考】
前回の記事の後半でも少し触れましたが、徐福が秦の始皇帝の命を受け、不老不死の妙薬を求めて海の彼方の仙境を目指したとされる「徐福伝説」の初まりから、100年あまり後に、司馬遷が『史記』を著しました。そして、そこには、徐福の出自などが具体的に記されています。
『史記』「秦始皇本紀」には、秦始皇28年(BC219)年の項に、「すでに、斉人徐市(福)ら上書し、海中に三神山ありという。名を蓬莱、方丈、瀛洲(えいしゅう)といい、仙人ここに居す。身を清めて童男女とともにこれを求めんことを請う。そこで、徐市と童男女数千人を海に出し、仙人に求めさせた」とあります。
さらに、秦始皇35年(BC212)の項に、徐福は巨額の費用を費やしたが、ついに薬を得ることができなかったとあり、秦始皇37年(BC210)の項では、大鮫(鯨)に遮られて蓬莱に到達することができないため、連弩(連射できる強弓)が必要だと訴え、これを得て船出し、大魚を射止めたと記されています。
そして、「淮南衡山列伝」に、最終的に童男女3000人に五穀の種と百工を加えて海を渡り、徐福は上陸した場所で平原広沢を得て、王として止まり、そのまま帰らなかったと記されています。
日本の徐福研究は、徐福伝説が実際の出来事を伝えているとはみなさず、徐福という人物も実在の人物としては扱わず、あくまでもフィクション、神話という範疇で研究されています。その立場から、前回の記事で、私は徐福の出自は不明であると記したわけですが、あらためて徐福伝説について調べてみると、中国側の研究では『史記』の記述を事実として受け止めて、徐福研究が進められ、具体的な成果を着実に上げていることがわかりました。それを読み解いていくと、日本における徐福神話の様相も具体性を帯びてくることに気づき、今回、あらためて徐福を取り上げることにしました。
『史記』が「斉人徐市(福)」として明記する斉とは、秦によって滅ぼされた山東半島を中心にした領土を持つ大国でした。
斉は、始皇帝に滅ぼされる紀元前221年まで630年あまり続き、その文化は、石器時代の山東龍山文化から連綿と積み上げられた長い伝統を持つものでした。中国文化の急速な発展期であった春秋戦国時代には、当時の学問と文化の忠臣として指導的な地位を占めていました。
春秋戦国時代は、韓、魏、趙の三国が晋を滅ぼし、七国対立の形勢となった紀元前475年から秦の始皇帝が六国を統一した紀元前221年までの間を指します。この間は、力の拮抗した七国が睨み合う形で対立していたものの、大きな戦乱はなく、社会は安定して中国文化が飛躍的に発展した時代でした。
中国の医学は、伝説の黄帝時代の巫医(呪術治療師)に始まり、有史時代になると、調息、導引、房中、辟穀などの養生法が考えだされました。さらに、今の漢方に繋がる本草学などが整備されていきますが、斉では、その伝統を継承し、さらに陰陽五行説を元にして理論づけられた「斉派医学」が完成されます。斉派医学は、現在でもなお中医学の主流を占めるもので、当然、戦国時代の医学をリードしていました。
戦国時代末期、始皇帝に率いられた秦が強大となり、最後まで抵抗していた斉を滅ぼして、ついに統一帝国となります。これは、紀元前220年のことでした。秦は、もともと現在の甘粛省付近にあった農業国でしたが、鉄器の技術を発展させたことと、貿易の中継による利益の増大が国力増強の背景にありました。
統一帝国となった秦は、当時、最高水準にあった斉の文化や医学を吸収します。さらに、斉の宗教も取り入れます。斉の宗教は、山東半島の土着神を崇拝する独特のもので、「斉の八神」と呼ばれ、秦の始皇帝以降も、漢の宣帝、唐の太祖などがこれを崇拝して祭祀を行いました。八神とは、天主、地主、兵主、陰主、陽主、月主、日主、四時主のことで、この世を織りなす自然の様々な様相を神として、その変化に合わせて生産や生活するための指針とされました。後に例を挙げますが、「斉の八神」は、日本の神道の原型になった可能性もあり、非常に興味を惹かれます。
【お知らせ】
●『祈りの風景』Kindle版発売
2011年の東日本大震災直後からWEBで連載を始め、1年間にわたって、全国各地の祈りにまつわる風景から、「祈る」という行為の本質について語ったエッセイです。Paboo版は一昨年にリリースしましたが、新たにアマゾンKindle版をリリースしました。こちらはKindle端末のほか、スマートフォンやPCなど、Kindleアプリを使うことで、それぞれに最適化して表示され、読みやすくなっています。ぜひ、ご一読を。
ow.ly/vPzPW
●『チキサニ』Kindle版発売
こちらは、だいぶ前の作品になりますが、ニューラルネットワークとシャーマニズムとの融合をテーマにした小説です。
「1990年代末、都心にあったゲーム制作ラボで、不思議な人間消失事件が起こる。その原因を探っていくと、アイヌの神話をモチーフにしたゲームプログラムにたどり着く。そのプログラムを作動させたその先にあったものは…」
ゴールデンウィークの読書にぜひどうぞ。
ow.ly/vPFrY
●伊豆急沿線レイラインハンティング
伊豆急主催で、私がアテンドする「伊豆急沿線聖地巡りツアー」が、5月から隔月で開催されます。第一回の5月25日は東伊豆から河津のコース。
--------------------------------------
稲取駅10時半集合→ 清光院(御朱印&蛇石見学)→ 昼食(しぐれ)→ 八百比丘尼像→ 稲取八幡神社(御朱印)→ どんつく神社→ 河津バガテル公園(スイーツ)→ 木宮神社(御朱印&大楠)→ 河津駅17時解散
--------------------------------------
といった予定です。
その他、ガイドブック、アプリなども続々リリースされますので、ご期待ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
■ WEB:http://www.ley-line.net
■ お問い合わせ [email protected]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
コメント