前回の配信から二週間経ちましたが、この間に関東では桜が開花し、それがピークを迎え、そして半ば散りました。季節が急ぎ足で通り過ぎていくように感じさせられます。
先週末は朝日カルチャーセンター湘南教室の野外講座で、鎌倉の鶴岡八幡宮から鎌倉宮の周辺を巡りましたが、ちょうど桜がピークを迎え、若宮大路は人でごった返していました。わざわざ開催日時を例年の開花の一週間前に置いて、人混みを避けたつもりが大誤算。でも、満開の桜と鎌倉に秘められた不思議の探索とダブルに楽しめて、参加してくださった人たちも私も大満足でした。
最近は、そのような野外講座が多くなりました。午前中の座学で、デジタルマップや測量計算ソフトを使ったシミュレーションと、フィールドで使うGPSやデジタルコンパス、磁力計などの説明をして、午後から現地に出かけてフィールドワークというカリキュラムです。
鎌倉の場合は、私よりも参加してくれた地元の方々のほうが歴史や文化についての造詣がはるかに深いので、私はGPSなどのデバイスを使って見えてくる通常とは違った事象を参加者の方々に示し、それに対して、いろいろな意見を伺いながら、みんなで推論していくといった形をとりました。
鎌倉駅を出て、若宮大路に当たったら、そのまま鶴岡八幡宮のほうへ向かいますが、このとき、普通の神社の参道なら南から北へ向かうところが、ここでは南南西から北北東へ向かっていく形となります。社伝によれば、京都の岩清水八幡宮を鎌倉へ勧請した際に、まずは由比が浜の近くに安置し、それを後に現在の場所に移したとあります。「若宮大路」というくらいですから、遷宮する前の旧地を向いているのかと思いますが、若宮大路の先には何もありません。
「今でも、『本八幡』という地名があって、そこに若宮神社がありますけど、それも若宮大路よりはだいぶ東にズレてますね」と、鎌倉在住のAさんが答えてくれます。では、若宮大路が指しているのは、何なのか?
「鎌倉は、関東大震災のときに大きな津波があって、鎌倉大仏のところまで押し寄せたんですよ。だから、小さな社なんかは流されてしまったんじゃないでしょうか」
と、Bさん。
これは、次回までの宿題となりました。
鶴岡八幡宮に到着すると、その社殿はやはり若宮大路の先を向いて、南からやや西にずれています。こういう構造の場合は、南と東西を正確に示すランドマークが置かれているものですが、これは、手分けして探しました。それでわかったのは、本殿の真西には稲荷社が置かれ、東は摂社である白幡神社の背後のご神体山、さらに南は境内にある若宮がランドマークとなっていることが確認できました。
ただ私が解説をして歩くだけではなく、私自身も確認できていない問題を提起して、参加者みんなで探索し、推論していくこうしたやり方は、みんなにとって充実感があります。
ひとつだけ言い訳しておくと、こうした現場で考えながら探索していくフィールドワークは、けして、私が事前準備の手抜きをしたいからではありませんので、お叱りなきよう(笑)
次回は、鎌倉のフィールドワークで見えてきた武家政治と公家政治の隠れた確執をご紹介しようと思います。
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