前回の配信で、夏風邪をひいてしまいましたとご報告しましたが、
完治しないままオートバイツーリングの取材に出掛けて、悪化させ
てしまいました。9月後半は体調が優れないまま…。酷暑をなんと
か耐えたものの、やはり体力を消耗していたのでしょうね。「海水
浴で肌を焼けば抵抗力が増す」なんて前回は書きましたが、そもそ
ももう五十路となって、自分の体力を過信してはいけませんね。
体力が落ちていくのは寂しいですが、その分、気持ちを落ち着け
て、思考を深めていこうと、ようやく秋めいてきた静かな夜に思い
を新たにしています。
さて、本題です。
前回までの三回は、聖地と人との関係を「シャーマン」を素材と
して掘り下げてみました。感受性の強いシャーマンと呼ばれるよう
な人たちが、他とは違う土地の雰囲気を嗅ぎ分けて、そこを聖別す
る。白山を開いた泰澄は、荒ぶる神が引き起こす地震を鎮めるため
に、土地に呪い(まじない)を施し、それが今に続く特殊な祭りとし
ても続いている例を挙げ、それが活断層と符合していることを紹介
しました。
今回は、私がこの夏に出会ったことや発見したケースを交え、も
う少しこうした事例を追ってみたいと思います。
【活断層に沿って並ぶ温泉】
3.11以降、地震災害を未然に防ぐ、あるいは軽減するために、地
震を起こす可能性の高い断層を見つける作業が官民あげて行われて
います。そして、地域防災に活かすために、それらのデータはネッ
ト上で誰でも閲覧できるように公開されるケースが増えてきました。
なかでも、産業技術総合研究所(産総研)が発表している起震断層
のデータは、位置と規模が詳細で素人でも把握しやすいものになっ
ています。前回ご紹介した、泰澄が魔物退治の呪い(まじない)を施
した能登の邑知潟断層や石動山断層もはっきりと記載され、呪いの
場所がぴったりと符合していることが確認できます。
その後、このデータを活用して、関東を調べているうちに、興味
深いケースを見つけました。
まずは、下記のリンクにある地図を御覧ください。
http://www.obtweb.com/seichi/003.png
これは神奈川県の中南部にあたる湘南から大山付近にかけての地
図です。この中で破線で示してあるのが、大きな地震を引き起こす
可能性の高い断層です。赤い実線は外房の玉前神社と出雲大社を結
ぶ「ご来光の道」で、寒川神社を起点に同じ名前の分社を結んで北
東へ伸びる青い実線は、江戸城まで届くラインですが、今回は、こ
の二つは無視してください。
注目すべきは、丹沢方面から大山の麓を回りこむように南下して
くる「伊勢原セグメント」と記された緑の破線です。この断層上に
は、北から別所温泉、七沢温泉、伊勢原温泉、鶴巻温泉と温泉が並
んでいます。
断層は、地殻の運動が活発なところですから、断層の上に温泉が
湧き出すのは不思議な事ではありませんが、このように弧を描く断
層が正確に特定されていて、さらに複数の温泉がその線上に並ぶの
は、ほかにあまり見たことがありません。
断層の研究は、じつは最近本格的になったばかりで、まだまだ特
定されていない断層は日本列島に無数にあります。ですが、それは
関東ローム層のような噴火による堆積層の下に埋もれていたり、都
市化によって建造物が立ち並んでしまったりして、見つけ出すのが
非常に難しいものでもあります。
前回は、奈良時代に地に潜む魔物を鎮めるために泰澄が土地に施
した呪い(まじない)の場所を結ぶと、能登半島を斜めに横切る巨大
断層「邑知潟断層帯」にぴったり符合することを紹介しました。こ
のことから、大地の力を敏感に感知する泰澄のようなシャーマンが
残したランドマークを手がかりに、隠れた断層を発見する可能性が
あるといえます。同じように、温泉を結んでいくことで、隠れた断
層を浮き彫りにすることができるかもしれません。
リンク先にある温泉を一つ一つみていくと、それぞれに大地から
湧き出す力を連想させるエピソードが見つかります。
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