*生島足島神社の鳥居に掛かる冬至の太陽。鳥居をくぐり抜けてやってくるのは、神格化された太陽の光だ*
2006年冬至・戸隠奥社
2006年の冬至の未明、長野県にある戸隠神社奥社に向かう参道をNBS長野放送のクルーとともに黙々と歩いていた。
例年ならスノーシューかスキーを履いて辿る雪道のはずだが、この冬は異常な暖冬で、参道にはまばらに雪がついているだけで、登山靴のままで歩いて行くことができた。もっとも気温の下がる明け方なのに、しばらく歩くと汗ばんでくるほどだった。
この参道は、総延長2kmある。そのほとんどが直線で、両側には杉の大木が居並んでいる。その参道がほぼ終わりかけるところに楼門があり、ここに差し掛かったとき、ちょうど木立の間を縫って登ったばかりの太陽の光が差し込んできた。立ち上る汗の蒸気と吐く息が、舞い上がる金粉のように輝く。振り返ると、木立の影と太陽の光が描く縞模様が、参道を真っ直ぐに伸びてきていた。
この戸隠奥社への参道は戸隠奥社の真向かいに位置する怪無山の頂上を割って登る冬至の朝日に焦点を合わせ、その光が奥社へ向かって真っ直ぐに射しこむように設計されているが、300年あまり前に植えられた杉並木が巨木となって、枝葉を広げているため、現在では参道の先に冬至の太陽を見ることはできない。
しかし、奥社までたどり着くと、風景が開け、怪無山を離れたばかりの太陽が真正面から奥社の本殿にその光を差し掛ける光景に出会うことができる。ここまで来ると周囲は真っ白な雪景色で、それにオレンジの太陽の光が満遍なく注ぎ、峻険な鋸歯状の峰を連ねた戸隠山を後背にした本殿が自ら発光して、降臨した仏そのもののように見える。本殿の中心に掲げられた丸い鏡には、冬至の太陽そのものが写り込み、社に太陽が飛び込んでしまったかのようだ。
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