週末から昨日にかけて、飛騨、北陸を巡った。
金沢で21世紀美術館の訪問を楽しみにしていたのだが、行き当たりばったりの旅で休館日に当たってしまった。それでも、 いちばんの目当てだったタレルの部屋はフリースペースで、見学することができた。
翌日、白山の登山口までピストンして、麓の白峰で「白山本地仏」の看板を見つけて拝観してみた。
何気なく立ち寄っただけなのだが、ここに安置された仏には圧倒された。元々白山の主要な峰に安置されていた仏像は、 明治の廃仏毀釈のあおりを受けて、廃棄されるために麓に降ろされた。
その仏と向き合い、これを破壊することは忍びないと感じた当時の住職が専用の堂を建立して、そこに祀ったのだという。
国の重文に指定された十一面観音をはじめ、白山開山の泰澄の手になる釈迦如来像など七体の仏像と泰澄の座像ある。
泰澄という人は、以前から気に掛かる人だった。
昔、能登半島にやってくる寄りイルカとシャーマンとの関係を調べるために能登を調査したとき、 寄りイルカにまつわる話が伝わる場所には、同時に地に潜む魔物の話もあり、さらにその魔物を泰澄が鎮めたという伝説がセットになっていた。
7世紀、まだ密教が本格的に日本に広まる100年あまり前に、泰澄は修験と仏教をミックスした独自の思想を持ち、 自然信仰と仏教の融合を図っていた。
魔物退治にしろ、困難を極めた白山の開山にしろ、泰澄にまつわる逸話からは、厳かな人間像が浮かび上がってくる。実際、 この寺に安置された泰澄の座像は、独古を右手に握りしめ、半眼で鋭く前を見据え、厳格な雰囲気を漂わせている。
だが、その泰澄が刻んだとされる釈迦如来像は、ひどく風化が進んではいるものの、丸くふくよかで、 他の仏像たちとはまったく違う暖かさを放っていた。泰澄は渡来系ではないかという話もあるが、 この仏像の輪郭や微かに残る柔和な表情を見ると、ごく自然に、西の世界がイメージされる。
>kupmoさん
コメント、ありがとうございます!!
21世紀美術館のタレルは、じつは、一つ前のエントリーそのものなんです。
http://obtweb.typepad.jp/obt/2009/09/post-0a7b.html
友人の元キュレーターが友人だったり、大好きな作家で、偶然、知己も得た宮内勝典さんもタレルと親しかったりと、なんだかとても身近に感じる人なんです……まだ直接お会いはしてませんが。
直島の「家プロジェクト」でも、いちばんインパクトありました。
http://e4.gofield.com/column/archives/000245.php
『ローデン・クレーター』も訪ねてみたいと思っています。
泰澄のほうは、白山信仰から十一面観音へと進んで、今、この観音様の自然界におけるメタファを考察しています。
投稿情報: uchida | 2009/09/13 01:33
イルカ、泰澄、そしてタレル!
内田さんらしい、興味深い組み合わせですね。
金沢にタレルの作品があるのは知りませんでした。
情報を得られて嬉しいです。ありがとうございます。
これから、CDの能登のイルカ伝説を拝見させて頂きます。
投稿情報: kupmo | 2009/09/12 23:04