**一見きれいに見える海岸だが、海水浴場を仕切る安全ブイがゴミ避けとなって、海岸に漂着していないだけ。
他の浜は、漂着ゴミがそらじゅう目につく**
e4プロジェクトのメインイベントの一つであるビーチコーミング。これは、 ただ海岸に打ち寄せられた珍しいモノを探すというわけではなく、漂着ゴミを集め、分類することによって、 ゴミの海洋投棄の実態を探ろうというものだ。
長年、海岸の漂着ゴミを研究している鹿児島大学准教授、藤枝繁氏の指導のもと、全国各地で開催されるビーチコーミングのうち、 瀬戸内で開催されるプログラムにe4はジョイントしている。
漁網や漁業用のウキといった大きなものから、外国船が投棄した各種の容器類、そして、 砂の中に隠れている牡蠣養殖に使われるプラスチックの小さなパイプや畑に蒔かれる仁丹程度の大きさの徐放性肥料カプセルの残骸、 人工芝の破片……シーカヤックで無人島に渡って、周囲に人工物がまったく見えない海岸に上陸しても、これらの「人工物」は常について回る。
藤枝氏のビーチコーミングでは、海洋ゴミの投棄元を割り出し、その出所をなくすことで海洋ゴミをなくすことに取り組んでいる。
瀬戸内は閉じられた海であるため、投棄ゴミが滞留し、蓄積されていく。海岸はもちろん、澄んだ海の底にも沈殿したゴミが見られるし、 シーカヤックを漕いでいると多くの浮遊ゴミとすれ違う。
瀬戸内が「閉じられた海」と書いたが、もっと大きな視点で見れば、地球そのものが閉じられた環境であり、 大洋といえどもゴミや化学物質の汚染は、年々申告になっている。8月3日のナショナルジオグラフィックWEBニュースでは、 太平洋に投棄されたプラスチックゴミが滞留する『太平洋ゴミベルト』のレポートが掲載されているが、「南海の楽園」が 「環太平洋ゴミ埋め立て場」のようになっている現状は、車の窓からゴミをポイ捨てしたり、たばこの吸い殻を足下に捨てる振る舞い、 自分勝手で荒んだ人の心性が大規模な環境破壊の元凶だということがよくわかる。
閉じられた海でも、大洋に比べれば小規模な瀬戸内は、投棄ゴミの発生源もかなり特定できており、それを抑制し、 さらに清掃活動も浸透させていくことで、ゴミのない海を復元できる可能性がある。
それを実現するために、最初の一歩として、海底ゴミの「目に見える化」計画が始まった。
漁網などに引っかかった海底ゴミは、そのまま引き上げて陸へ運ぶと産業廃棄物として処理しなければならず、 自己負担となってしまうので、漁師はそのまま海底に戻すしかなかった。それをとりあえず期間限定で、 NPOが処理費用を負担する形で引き上げてもらい、巡回展示するという試みだ。
浜に打ち上げられた漂流ゴミももちろん問題だが、海底ゴミは、ふだん我々は目にできないため実感が少ない。それを「目に見える化」 することで意識してもらおうというわけだ。
これを皮切りに、瀬戸内全域で、ゴミの処理と海への投棄をなくす活動が展開されていく。
藤枝氏の調査によると、瀬戸内海に集まるゴミの量は年間約4400t。周辺居住民の数で割ると、 一人あたり年間90gを海へ投棄している計算になる。これは空きペットボトル3本分の量だという。「これぐらいいいだろう」 という軽い気持ちが、気がついてみると膨大なゴミの山を築いていることになる。
しかし、逆に考えたら、瀬戸内海へのゴミの投棄をなくし、地道に回収を続けていけば、 昔のきれいな海を取り戻すことが不可能ではない量でもあるという。
e4では、9月の26、27日に香川県と愛媛県の境に位置する仁尾で、アウトドアイベントを開催する予定だが、 ここでもシーカヤックやツリーイングなどのイベントと合わせて、ビーチコーミングも行う予定だ。
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