朝7時のセッティングから16時の撤収まで、今日はほとんど木の上にいた。
予報では小春日和の陽気になるはずが、午前中は時々雪が舞う天気で、地上にいると底冷えを感じた。
普通ならこんな日は、樹上で風に吹かれると凍えてしまうのだが、今日は不思議なことに樹上のほうが暖かかった。 地面からの放射冷却から離れているためだろうか……だけど、たかが10mくらい地面から離れただけで、 放射冷却の影響から離れられるわけもないし、本来、吹き晒しの木の上のほうが寒いはずだ。
そんなことを不思議に思いながら、木の上で作業していると、ふと、樹皮が暖かいことに気づいた。
人肌というほどまでは温かくはないが、木肌に素手で触っても、 つい先日までは金属のように冷んやりとして熱を奪われてしまったものが、今はずっと触れていても冷たさは感じない。 樹が冬と対峙するための鎧を脱いで、内側にある熱を開放し始めたような、そんな感覚が伝わってくる。
冬の間は乾燥して簡単に折れてしまった細い若枝は、柔軟にしなって折れることもなく、枝先に小さな芽をもたげている。樹全体も、 その組織に水分を行き渡らせているようで、冬の間は一本の棒のように硬直して揺れていたものが、 風やぼくたちが与える振動を柔軟に受け流している。
今は二十四節気では「立春」。まだ冬枯れで寒々しく見える林も、樹に触れ、身を託してみると、 はっきりと春の訪れを感じさせてくれる。
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