今年の秋から冬にかけて、アウトドアギアメーカー各社から機能的なソックスが次々に発売された。
ちょうど一年前の展示会でファイントラックのブースを訪ねると、「今取り組んでいるのはソックスなんです」と、 まだプロトタイプのアウトドア用ソックスを見せてくれた。
それは、足の各部分に合わせて素材やカッティングを変えた今までに見たことのないソックスで、素材とカッティング、 衣類のパターンなどにかけては他のメーカーの先を行くファイントラックならではのこだわりを感じさせた。
しかし、ソックスに革新を持ち込もうとは…… ベースレイヤーという考え方でレイヤードの世界を革新させたファイントラックらしいと納得もしたものだった。
そして、今年の秋冬のマーケットの蓋が開いてみると、 ファイントラックが提案した機能性ソックスの波は業界全体に波及してまさにトレンドとなった。
去年見せてもらったプロトタイプは、「スパイルフィルソックス」としてラインナップに加わった。
スパイルフィルは、毛足の揃ったスーパーファインメリノウールと吸汗加工したポリエステルをコアにして、 それに異形断面構造を持つ吸汗加工ポリエステルをスパイラル状にまきつけたもので、ウールの持つ自然な風合いと保湿性をそのままにして、 余計な汗は吸って吐き出して蒸れを防ぎ、さらに耐久性を飛躍的に向上させた素材だ。
ファイントラックは、このスパイルフィルをまずアンダーウェアとして実用化した。
スパイルフィルアンダーウェアは、自然な着心地をあらゆる条件化で維持し、ウールのようにチクチクせず、擦れや引っ張りに強く、 さらに匂いもつかないという理想的なアンダーウェアとして、まず、エクストリーマーの間で評判を呼び、 登山や一般スポーツの世界に浸透している。
そのスパイルフィル素材をベースにして、「登山」、「スキー」、「ランニング」という三つの用途に応じたソックスをリリースした。
今回試したのは登山用のレギュラーサイズで、応用範囲はもっとも広いといえる。
つま先、甲、足裏、土踏まず、踵周り、足首とそれぞれ細かく素材を分け、最適の機能を実現するように作られている。その細部は、 写真で説明したほうがわかりやすいと思うので、後にまわし、さっそく試した印象を紹介してみたい。
まず最初に感じるのは、足入れのしやすさ。ファイントラックの製品は、 肌に密着することで繊維が持つ性質を最大限に生かすためかなりタイトな作りになっている。このスパイルフィルソックスも同じで、 普通のアウトドアソックスよりもいかにもタイトだが、ストレッチ性が非常に高く、繊維の滑りがいいので、スルッと履くことができる。それは、 靴への足入れもしやすいということでもある。
つま先と踵まわりは吸汗性と保温性を高めるために裏がパイル状に加工された生地が使われているが、 他の部分で余計なロフトを持たないように薄手の生地が使われているため、厚手のソックスで無理やり靴を履いたような窮屈感はない。
今回はまずソールの薄いごく普通のビジネスシューズで試してみたが、このソックスでアスファルトの上を歩くと、 すぐにそのクッション性の高さを実感できた。
さらに踝を覆うハイカットのブーツで試したが、これは、普通のソックスでは感じる踝の圧迫感がなく、 長時間履いてもまったく擦れがなかった。
靴擦れの多くは、ソックスに起因するものが多く、長期の山行などでは、足に馴染んで適度にヤレたソックスを着用、持参するものだが、 このスパイルフィルソックスなら新品の下ろしたてでも、躊躇なく装備に加えられる。
これから、スキーソックスなどのバリエーションも含めて、スノーフィールドを中心に、耐久性なども検証してみたい。
**足の部位に合わせた素材とカッティングのパーツを組み合わせた、いかにも機能的なスタイル*。 裏返してみると、パーツごとの違いがよくわかる*
**踝の部分はソックスが動くのを防止すると同時に擦れを防ぐ「踝ホールド」構造になっている**
**ホールド機能と同時に疲れを防ぐアーチブレーズ。甲部分は靴への当たりを和らげるため薄い生地になっている**
**自然な形に丸く包み込むように立体裁断されたつま先。 裏をみるとあたかもパイル地のインナーソックスが縫い付けられたような構造になっている。 これが高いクッション性と保温性を生み出している**
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