昨年の夏は中国の新疆ウイグル自治区を旅したが、そのとき、「東トルキスタン独立運動」が活発になっていることを耳にした。
現地の旅行社の招待旅行だったが、ウイグル人だけの集まりでは、ガイドの誰それが独立運動に身を投じたとか、オリンピックを控えて、 中国政府の弾圧が厳しくなっているという話が聞こえてきた。そこに、漢族の旅行関係者が入ると、 ウイグル族の人たちは急に話題を変えてしまう。
そんな姿に、表面は恭順の姿勢を取っているが、やはり中国を「侵略国家」として見ていることがはっきりと感じ取れた。
20年前に初めて新疆を訪れたときは、現地のウイグル族の人たちは、もっとはっきりと漢族に対する悪感情を表出していたが、 あれから漢族はどんどんと入植を進め、タリム油田開発などで現地の経済発展が進んで、圧倒的な人口比率と政治勢力となってしまったために、 抵抗運動はより深く潜行することになった。
去年の春には、東トルキスタン独立運動の新疆でのナンバー2がパキスタンとの国境で逮捕され、ウルムチで公開処刑された。
その後、散発的に新疆各地でテロが続いていたが、ついに大規模な爆弾テロがカシュガルで起こった。
中国の侵略問題では、チベットが大きく取り上げられているが、じつは新疆ではもっと厳しい弾圧が続いている。 独立運動の関係者も多数処刑され、アムネスティは中国政府を再三非難しているが、何故か日本のマスコミは伝えていない。
ちょうどチベット動乱のときに、新疆ではカシュガルで大規模な民衆蜂起が起こったが、そんな歴史も日本ではあまり紹介されていない。 日本人にとっては、新疆=シルクロードのエキゾチックなイメージが固定されているためだろうか。
東トルキスタンとは、中国から中央アジア、トルコにかけて住むテュルク系民族のうち、 中国新疆に住むウイグル族を中心とした独立勢力が唱える呼称で、ほぼ新疆と同じ範囲の地域を指し、 さらに目指す独立国家の名称ともされている。
この周辺から中央アジアにかけてのテュルク系民族はイスラム教を信仰し、アラブとの結びつきが強い。東トルキスタン独立運動には、 アルカイダも絡んでいたり、サウジアラビアからの支援もあると言われ、実行力のある武力を持たないチベットと比べると、 中国政府にとってはかなりやっかいな問題となっている。だからこそ、徹底した弾圧と対外的な情報統制を行っているともいえる。
オリンピックの開催が間近に迫り、俄にアラブ勢力の支援を受けた東トルキスタン独立運動の動きが活発になっているのは不気味だ。 二度と、あのミュンヘンのような悲劇が起こらなければいいが……。
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