この二日間、ツリーイングの講習会に通い、木に登っていた。
明るい広葉樹の林では、コナラやクヌギの枯葉が、陽の光を柔らかにまとって舞い落ち、時に、それが一斉に降り注ぎ、 宙ぶらりんになったぼくは、光とともに踊っているような気分を味わった。
今日の午後は、セコイアの金色の針のような落ち葉を全身に浴びながら、真っ直ぐに登っていった。それは、 星々が光の矢となって飛びすぎていくワープする宇宙のトンネルを行くようでもあり、 そのトンネルを抜けた先に何が待ち受けているのだろうなどと、しばし、自分の心のほうがワープしてしまった。
遠い昔、秋の山で嵐に閉じこめられたことがあった。
テントが吹き飛ばされそうな、秋にはありえない激しい嵐が去った翌朝、テントから這い出したぼくは、息を飲んだ。 限りなく澄んだ空気に、そのまま宇宙へと繋がっていくような深い青空を背景に、無数の光り輝く落ち葉と、どこからやってきたのか、 落ち葉の数に負けない赤トンボが群舞していた。
嵐の前は、はっきりとした季節感がなく、ただ「秋色」めいた雰囲気が濃くなりつつあることを感じたに過ぎなかったが、嵐の後、 山は一気に秋を駆け抜け、冬に飛び込む直前の風景をぼくに見せてくれた。
たった一人、落ち葉と赤トンボの群舞に包まれたそのとき、ぼくは、『自然がぼくを迎え入れてくれた』と思った。 この瞬間を見せてくれるために、ぼくを足止めして、激しい嵐を耐えさせたのだと……。
昨日と今日、穏やかな林の中で宙にあって、光をまとった落ち葉に包まれたとき、はっきりと、「あの時」のデジャヴュを味わった。
一昨日は、上州の山に「ふたご座流星群」を観に行き、自然は、見事な青い流れ星を観せてくれた……。
きっと、自然は、奇蹟のような瞬間をたくさん用意してくれているのだろう。
そんな奇蹟のような瞬間に、もっともっと立ち会っていきたいと思う……。
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